8月30日、出張先の小倉のホテルで読んだ西日本新聞の朝刊は2面で「九大移転にPFI導入文科省概算要求に準備費」と報じた。
PFIとはプライベート・ファイナンス・イニシアチブの略である。道路や港湾、空港などの公共施設の建設に、できるだけ民間の資金やノウハウを活かす手法で、いくつかの類型に分かれるが、民間企業が施設の設計から資金調達、建設、料金徴収などの運営まですべて担う仕組みが最も厳格なPFIとされる。イギリスでは1990年代前半から導入が進み、財政難が深刻な日本でも昨年7月、PFI推進法が成立したと朝日DNA(記事データベース)で読んだ。
そういえば昭和21年に発足した産官学共同の地方調査機関、九州経済調査協会は「九州経済白書」2000年版で国と地方自治体の財政難が深刻さを増すなかで、九州経済を特徴づけてきた「公共事業依存」は限界に達しつつあると分析し、今後の成長のカギとして地域経済の新しい担い手を重視すべきだと指摘した具体策のなかで「社会資本の整備に民間企業を参加させるプライベート・ファイナンス・イニシアチブの導入を提言していた。翌週金曜日(9月7日)午前7時15分のNHKローカルは「熊大薬学部がISOを取得」と報じた。出勤して県内シェア70%の熊本日日新聞で確かめる。3面4段ぬきの「環境立県へ方針策定」の県関連記事とセットになっている。ちらと頭をかすめた。先を越された・・・。
いずれのトピックも風雲急をつげている国立大学独立行政法人化がらみである。やっとといえばいいのかどうかわからないが、ミクロの視野にはいってこないとなかなか腰があがらない。この単語が聞こえ始めたのは1997年行革会議中間報告が出たあたりからだったと記憶しているが、地元大学関係者の間で行政法人の話題が出はじめたのはそれから随分たっていた。
研修に参加すれば危機意識のなさが叫ばれ、出せば売れると聞いたことがある大学関係書は膨大な分析、批判、提言を行い、右に倣いでどれほどの自己点検評価報告書が出されたことか。翻って、自分の足元では改革の勢いと保守のエネルギーが相殺され、無力感にさいなまれているかにみえる。
かかる状況の一角を崩すには難しい理屈は要らない。まずは一歩を踏み出す少しの勇気がありさえすればいい。最初の一歩をそっと後押しするやさしさがありさえすれば。大学が人間と人間の出会いを基本に置くものであり、それを支える私たちは自律的な個の集団かつ組織であることを自覚し、情報アンテナをより高く深く広くはりめぐらせることである。勿論、大学を良くしようという志があり、自分の中に取り入れたものを組み立て直すことができれば言うことはない。そして、一人の百歩より百人の一歩を肝に銘じておきたい。自戒を込めて。
(熊本学園大学 宮原 由美子)
8月17日付けの日経新聞によると、マツダは10月をめどに、課長職以上の社員を対象に、開発や経理など担当職務ごとに賃金が変わる職務別賃金制度を導入するいう。さらに社内公募と、部下や同僚などによる評価で配置職場を決定することで、職場に応じ年収に格差を付けるという。
アメリカではあらゆる職務の市場価格が明確になっているといわれる。マツダにすれば、筆頭株主の米フォード・モーターに倣うわけだ。マツダでは、細かく分けた職務別に基準賃金を設定し、それに社内での重要性などを加味して格差を設けるという。このような制度を設ける動きは自動車産業だけで見られるものではないともいわれる。
私大連は1990年2月『職員活性化のための新給与制度』とする報告で職員に対する職能資格制度の導入を提案した。しかし、98年6月の私大連加盟大学に対する「職員の職能資格制度に関する調査」によると実施大学は13校であり、前記報告書に実例紹介されている大学と実施の準備あるいは検討中と回答した大学2校を加えても19校にすぎないという。提案されてから8年経っても2割程度の大学にしか取り入れられていないことになる。私大連が声高に導入を勧めた職能資格制度では、能力向上の道筋と具体的な研修メニューを示すことで、職員が自己研鑽の方向を持ちやすくなり、職員の自己研鑽は活発化すると言われる。しかし、労働意欲が向上し、自己研鑽によって能力を開発したとしても、その能力を発揮できる場を用意しないと、その能力を発揮することはできないという問題は残る。
大学改革のモデルとされるアメリカの大学では、学長や副学長をはじめとするアドミニストレーターには、直属のスタッフが置かれアドミニストレーターと秘書(Secretary)の組合せで効率的に仕事が行なえる仕組みが作られている。
アドミニストレーターは、それぞれの専門職務によって権限が与えられ、それによって給与が決まっている。成果主義賃金というのであれば職務別賃金を考えざるを得ない。なぜなら担当する職務によって、目標や達成までの難易度が異なるのは当然のことである。それを単一の基準で評価するのであれば、やる気を起こさせるための仕組みが、やる気を失わせてしまうおそれもある。また職務ごとに必要な経験や資格、能力といったことが明確にされていることや本人がやりたい職務に立候補できるFAのような制度等を設けることも必要になる。
アメリカ型で大学改革を目指すならば、職員についても、仕事についての大幅な見直しと賃金制度の見直しとを併せて実施しなければ改革は機能しないと言えよう。
(立教大学 塩野 博雄)
●私立大学は沈没する。もはや、このコピーが荒唐無稽なモノであると思う私学人はいないだろう。とはいえ、そんなことは“内”に限ってはありえないと、あたかもどこの火事のことのように思っている私学人も少なくない。
●いま、わが国の高等教育界は、私たちの想像を遥かに超える変化の渦中にある。この変化は、“内”という視座からは決して見えるモノでない。あらためて、THINK BIG に、競争的環境と機会均等という言葉の意味を考えてみたい。
●講師は、前日本私立大学連盟事務局長の日塔喜一さんにお願いしました。日塔さんは、私大連盟職員としての36年間を、教育の機会均等に拘り続け、私学のために尽くされてこられました。この3月に定年退職され、長年の膨大な仕事を『機会均等へ向けて』(開成出版・2001.7)にまとめられました。
●激動の時代だからこそ、私たちは初発の原像に立ち返りたいものです。歴史は明日を語ってくれます。日塔さんには、私立大学がその存在を問われたターニングポイントとその前夜を語っていただきます。お話は次の4つのテーマです。
●懇親会は、FMICS御用達割烹「京都」です。FMICS運営委員の飯島有美子さんが、10月から関西国際大学専任講師として転籍されます。その壮行会も兼ねます。皆さまには、お仲間をお誘い合わせの上、奮ってご参加下さい。
【日時】 平成13年9月22日(土) 午後2時30分〜6時
【会場】 工学院大学新宿キャンパス 高層棟28F第2会議室
【発表者】 前日本私立大学連盟事務局長 日塔 喜一
【参加費】 会員 1000円 学生 500円 非会員 1500円
【申込&問合せ先】 idemitsu@obirin.ac.jp
『機会均等へ向けて』から、日塔さんの私学へのエールを少し長くなりますが引用させていただきます。
私学は歯を食いしばって懸命に工夫を凝らしている。努力している。国の投資が不充分な中で精一杯頑張ってもいる。しかし、このまま推移すると愈愈存続が厳しい。一部に元気な学校もある。鼻息も荒い。しかし、すべての人々を高めていくには、それだけではまにあわないのである。国立が私学化して建学の精神を高揚するのでない限り、これまでもそうであったように、私学がこの部分をしっかり受け継いでいかないと、精神の荒廃を招き、わが国はジワジワと崩壊の一途を辿っていくしかなくなる。 福澤が大隈が新島が、そしてすべての私学の建学の精神がなくなったとしたら、それでもわが国は存続できるのだろうか。
今日の大学の大衆化にさまざまな問題を感じている人は多い。しかし,多くの人々が高等教育を受ける事で,人類全体の知的能力や判断力のレベルが上がり,人間としての社会性や倫理観の向上が期待されるのである。ましてや,自主独立の意気高き私学は,国にとっても個人にとってもかけがえのない存在だ。歴代のアメリカの大統領も異口同音に「国民が,すべてその生涯の何処かで高等教育にアクセスできる」社会を実現する,と述べている。そして本項で垣間見たように彼らは,その卓越した奨学金制度をバックに,着実にその高邁な理想に近づきつつある。日本も立ち遅れてはいられない。
OECD教育調査団の『日本の教育政策』その中に,「日本における国の投資配分の最大の誤りは私立大学より国立大学に重きを置いている点で,これを是正するための方法は,私立・国の区別を解消することである」という一節がある。
わが国は,これまでの文教政策を大転換し,必要な法改正を可及的速やか行うなどして,世界の国々がそうしているように,機会均等を速やかに実現ていくことを求められているように思われる。
●関西FMICS9月例会をご案内します。●小泉政権となって、何かが変わるかもと思いつつも何も変わらないという事実を目の当たりにしている間に、ぼくらを取り巻く現実は刻々と変化しています。●米国経済の失速、欧州経済の失速は、もはや高等教育と懸け離れた事柄ではない。●高等教育が左うちわであおいでいる間に、経済と大学が無関係ではいられないという時代がやってきた。●米国が経済立て直しのために戦争をすると、日本の高等教育はどうなるか。なんてことを考えるのは、現実の問題なのだ。●9月の関西FMICSは、丹内さんを迎えて、日本の明日、世界の明日、そして私たちの明日を考えます。
【日時】 平成13年9月28日(金) 午後7時30分〜
【会場】 大谷大学 博綜館5階第5会議室
【発表者】 海外新聞普及株式会社取締役 丹内 明良
【参加費】 会員 1000円 学生 500円 非会員 1500円
【申込&問合せ先】 大谷大学企画調整室 滝川義弘 tacky@sec.otani.ac.jp
●FMICS Staff Development 略して 「SD」は、月例会とは別に、原則として第3週の木曜の夜に開催されている勉強会です。超競争時代をしたたかに活き抜くためにも、大学人一人ひとりの努力を束ねる場です。●今月からは、知る人ぞ知る『英国高等教育制度検討委員会(デアリング委員会)報告』(通称デアリングレポート)を読み込みます。大学審議会「21世紀答申」(平成10年10月26日)の下敷きになったともいわれるレポートからは、学ぶことが多いことと存じます。これを機会に、あなたの座標軸をブラッシュアップはいかがですか。奮ってご参加下さい。
(1)メディアチェック
あなたのアンテナが何かを感じた新聞・雑誌等の教育&経済トピックスを、切り抜いて持ちよりディスカッションします。トピックスは厳選して1件、A4縦判にコピー(15枚程度)して、氏名と簡単なMEMOを付してご持参ください。
各自5分間程度のコメントをしていただきます。
(2)テーマを定めた継続的な勉強会
1997年度は国立教育研究所編『日本近代教育百年史』を、1998年度は工学院大学と拓殖大学の沿革史を、1999年度前半は『戦後の大学論』を読み進めてきました。そして、1999年度後半からはぐっと現代に近づき、中教審、臨教審、大学審等の「答申」を読み込んできました。今月からは、『英国高等教育制度検討委員会(デアリング委員会)報告』(通称デアリングレポート)を読み込みます。
【日時】 平成13年9月20日(木) 午後6時30分〜8時30分
*今後の日程 平成13年10月25日(木)、11月29日(木)、12月13日(木)
【会場】 工学院大学・新宿キャンパス 高層棟27階2710ゼミ室
【コーディネーター】 桜美林大学大学教育研究所 研究員 出光 直樹
【テキスト】 『英国高等教育制度検討委員会(デアリング委員会)報告』
*コピー(実費)をお渡しします。
【申込先】 出光 直樹 idemitsu@obirin.ac.jp
FMICSが生んだ学園おこし・町おこしの茶会「YFN秋の文化祭・で愛ふれ愛夢みあいの茶会」が、もっとパワフルになります。
若者離れや空き店舗の目立つ岐阜市中心商店街の活性化策として、市内各大学が結集して学生パワーの交流発信する場とするとともに、子どもから大人までの一般市民も楽しめる大学の知と文化の解放の場とすることを企画しました。
参加大学は、岐阜聖徳学園大学、岐阜女子大学、岐阜大学、朝日大学、岐阜経済大学、中部学院大学、東海女子大学、岐阜薬科大学、岐阜市立女子短期大学、正眼短期大学、以上10大学です。
FMICS名古屋も全面的応援にいたします。皆さまには、フルってご参加下さい。
【日時】 平成13年10月6日(土)&7日(日)
●学生茶会
開催場所:岐阜信用金庫本部前広場
開催日時:10月6&7日 午前10時〜午後5時
参加大学:岐阜聖徳学園大学・短期大学、立命館大学、正眼短期大学ほか
●信長香(新しく創作した組香)の会と大服茶会
開催場所:水琴亭
開催日時:10月7日 午前10時〜午後4時
参加大学:名古屋大学、東京都立大学、中央大学、岐阜聖徳学園大学
講演:「信長・政宗・家康 武将と香」
神保博行 中央大学名誉教授(香道御家流桂雪会長)
原三渓 顕彰展
*柳津町出身で明治大正を代表する財界人、近代茶を興した三大茶人
●今年も世田谷学園との学園祭ジョイントシンポジウムを開催します。中学生が企画の主役です。大学の授業を体験してもらい、ありのままの感想や率直な疑問を語ってもらいます。彼らが大学生になっている6年後とその未来を見据え、FMICSからのエールを送ります。FMICSならではの企画です。
【日時】 平成13年10月27日(土) 午後1時〜3時
【会場】 世田谷学園中学校高等学校
11月のFMICSは、会場を武蔵野女子大学に移します。地域社会に眠っている企業経験者(定年退職者や主婦等)を、新設の現代社会学部の学生に対する就職支援セミナーの講師として起用した「キャリア・カウンセラー」の試みを、発案の潮木守一先生とキャリアカウセラーの方々に語っていただきます。
【日時】 平成13年11月17日(土) 午後3時〜
【会場】 武蔵野女子大学(東京都西東京市新町1-1-20)
詳細は10月のFMICS BIG EGGでご案内いたしますが、キャリアカウンセラー制度については、
潮木先生のページもご参照下さい。「1998年4月以降の発表物」のフレームに進み、その中の、