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2001年10月のFMICS



「ポジショニングのこと」

 「もう一つの課題は大学の意識改革だ。・・・すでに三十四の国立大学にベンチャービジネスラボラトリーがあり、学部・大学院でベンチャー企業関連の講義をする大学も増えてきた」(日本経済新聞2001年9月3日朝刊)と、同紙の中村雅 美編集委員は指摘し、さらに柳田博明名古屋工業大学長の言を紹介する。「大学がもう少しニーズに敏感になり社会に軸足を置くことが必要だ」。

 受験産業の講演会で、あるグラフを示された。高校教諭の個別大学イメージをタテ軸に、その大学の生徒への推奨度をヨコ軸に取る。大学ごとにタテ軸とヨコ軸のレベルの交点を付けていく。すると、個別大学名が付けられた点を結んだグラフは見事に直線を描いて右肩上がりになっていく。難関大は右肩の上の方に集まり、難易度の低い大学群は左下の方に並んでいる。件のプレゼンテーターは、高校教諭の大学イメージと生徒への推奨には明らかに相関関係がある、と指摘した。その時にとっさに思ったのは、左下大学がどんなによい教育をしても右上大学に合格すれば、ほとんどの生徒はそこに入学するだろう。だから、競合大学だけを意識して差別化していけばよいのだ、と。だが、しかし。

 「われらは、平和を維持し、・・・国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ」(日本国憲法前文)。最近になって中学校の社会科で暗記した懐かしい言葉が耳に飛び込んできた。もちろん、時の首相がテロ対策への軍事支援に使った論拠である。幸か不幸か大学には入学定員があり、学生の独占はできない市場になっている。ということは、同じ位置づけの大学群のなかで、ニーズに適った教育戦略を実現して「名誉ある地位を占め」た大学は必ず生徒から選択される。その積み重ねがやがては同位集団を抜け出して、難易度の高いグループへ移行する可能性を秘めている。もちろん人口減による限界はあり、文字どおり難易度の高い課題ではあるが。先述のグラフで言えば、階段を一段一段上がるように、左下の大学群から右上に歩を進めていくことになる。右上に向かうことのみが正しい戦略ではないのであるが、ニーズに応じて「名誉ある地位を占め」ていけば、自ずと社会的に支持を受けていくことが見込まれる。

 日本一を指向した教育戦略を採ることで、結果的には競合大学間での飛躍的な差別化を引き起こし、競争優位に立てる。丹内さんの言う「一番化戦略」とはこのようなことではないか。さらに、競合間での差別化も必要であるが、ニッチ戦略や個性戦略で一挙に上位大学をも差別化できる施策もある。これを富子先生は「桂馬飛びの発想」と仰ったのだろうか。人口減を前に自らのポジショニングを強烈に意識して、それを故意に超越する、という戦略の急展開が必要な時を迎えている。ベンチャーばやりの昨今、このような教育戦略が立てられない大学で果たしてベンチャービジネスが教えられるのだろうか。

(山本 明正)



「その日その日を支配するもの」

 前月のBIGEGG2面、熊本学園大学の宮原さんの「一人の百歩より百人の一歩」を拝読し、後藤静香氏(1984−1969)の詩『第一歩』を想い出した。

 ちょっと紹介させていただく。

  『第一歩』
十里の旅の第一歩
百里の旅の第一歩
同じ一歩でも覚悟がちがう
三笠山にのぼる第一歩
富士山にのぼる第一歩
同じ一歩でも覚悟がちがう
どこまで行くつもりか
どこまで登るつもりか
目標が
その日その日を支配する

 この詩を知ったのは、平成10年に高校野球三冠の偉業を成し遂げた横浜高校野球部監督の著書を読んでのこと。監督は選手たちを指導する際、よくこの詩を引用し叱咤激励するという(イメージしやすいように三笠山を富士山に、富士山をエベレストに喩えていたそうだ)。

 そういえば、松坂投手も高校時代のインタビューで「目標の大切さ」を繰り返し語っていた。栄冠への長い道のりを支えたのはこの言葉であったに違いない。

 今夏、全国高校野球選手権を制覇した日大三高も「甲子園優勝」を目標に努力してきたチームだ。素質、実力とも申し分ないが、新聞を読み何より驚いたのは選手たちの意識の高さであった。一日1000回の素振りを自分に課した4番打者。早朝から打撃マシンを打ち込む者。ここで打たなければチームは負けると毎回自分を追い込んで打席に立つ者などなどエピソードはつきない。監督の指示ではない。目標達成のため選手一人ひとりが何をなすべきかを自覚していたのだ。明確な目標と高いモチベーション。勝ち上がるチームはこの二つを見事に兼ね備えている。

 平成13年9月27日、国立大学法人化の枠組みを検討していた文部科学省の調査検討会議(主査・長尾真京都大学長)は、基本的枠組みを示した中間報告を同省に提出した。人事、財務面などまだ検討すべきところはあるようだが、組織面でいえば新たに制度化される「中期目標・計画」は注目すべきことではないだろうか。なぜなら目標が言葉と行動を支配し、組織のパワーを生み出す源泉となるからである。国立大がしっかりとした目標・計画を打ち出せば私大にとっては脅威だ。うかうかしてはいられない。

 目標がその日その日を支配する。意識がその日その日を支配する。そして、その日その日が未来を支配する・・・。

(菊池 裕明)



ご案内 FMICS10月例会 (第421回例会)


 今年も世田谷学園との学園祭ジョイント例会をご案内します。4回目となる今回の企画の主役は中学生。事前にFMICS人の我が大学を訪問してもらいました。ありのままの感想や率直な疑問を語ってもらいます。彼らが大学生になっている6年後とその未来を見据え、FMICSからのエールを送ります。

 皆さまには、お仲間をお誘い下さいますようお願いいたします。中高生のお子さまをお持ちのFMICS人には、是非とも親子でご参加下さい。

●大学を120%活用してかけがえのない大学生活を送ってもらいたい。未来に希望を持って進路を切り開いていってもらいたい。そんな我々の想いを、これから大学に迎える若者たちに語り伝えるべく始まった世田谷学園とのジョイント例会。今年でもう4回目となりました。

●今年もフレッシュな中学1年生が参加します。生徒さんには、事前に分担してFMICSシンポジストを職場の大学に訪問してもらました。大学のことは、まだ具体的にイメージがわかないけれど、まあるく柔軟なアタマと感性で、実際の大学を目で見て体で感じてもらいました。

●FMICSのシンポジストは中堅のお2人、桜美林大学の出光直樹さんと、成蹊大学の浅沼雅行さんです。中学生の訪問を受けて、あらためて大学を見直す良い機会になりました。

●シンポジウムでは、生徒さんたちの大学訪問の報告と感想、FMICSシンポジストのメッセージから、ワイワイガヤガヤのディスカッションに入ります。コメンテーターには、いつもの日能研代表の高木幹夫さんにお願いしました。

●中学生と大学人が一緒に作るシンポジウムは、FMICSならではの企画です。若い知性と感性からは、大学の未来にとっても大切な事が見えてくるはずです。皆さまには、お仲間をお誘いください。中高生のお子さんをお持ちのFMICS人には、是非、ぜひ、親子ご一緒にご参加ください。

●シンポジウムは午後1時の開始ですが、学園祭を早めに見学したい方は、午前11時に正門に集合してください。

【日時】 平成13年10月27日(土) 午後1時〜3時

【会場】  世田谷学園中学校高等学校

【テーマ】 FMICS&世田谷学園シンポジウム −4−
     中学生から見た6年後の自分 そしてその未来

【ジンポジスト】桜美林大学大学教育研究所 出光 直樹
 成蹊大学学務部履修課 浅沼 雅行
 世田谷学園中学校1年生有志の皆さん
 《コメンテーター》 日能研代表 高木 幹夫

【参加費】 会員 1000円  学生 500円  非会員 1500円

【申込&問合せ先】 10月26日(金)までに、出光 直樹 idemitsu@obirin.ac.jp までお申し込み下さい。



FMICS SD 122

●FMICS Staff Development 略して 「SD」は、月例会とは別に、原則として第3週の木曜の夜に開催されている勉強会です。超競争時代をしたたかに活き抜くためにも、大学人一人ひとりの努力を束ねる場です。

●今月は、定番のSDプログラムにかえ、筑波大学大学研究センター主催の「大学経営人材養成のための短期集中公開講座」に参加をいたします。

●会場は、茗荷谷・筑波大学です。お間違えないようご注意下さい。

《紹介先》 大学研究センター長 山本 眞一  syamamot@sakura.cc.tsukuba.ac.jp

 *公開研究会の日程と講師予定者
  10/18 山本 眞一 (筑波大学教授)
  11/ 8 横田 利久 (中央大学)
  11/15 青木 加奈子(東京経済大学)
  講師予定者は皆さんFMICS人です。

【日時】 平成13年10月25日(木) 午後6時30分〜8時30分

【会場】  筑波大学大学研究センター 地下鉄丸の内線茗荷谷駅下車徒歩2分

【テーマ】 大学経営人材養成のための短期集中公開研究会
     現職アドミニストレーターからの発信

【スピーカー】 玉川大学工学部長室長 近藤 誠


*なお、12月からは新企画がスタートします。9月例会のゲスト・前日本私立大学連盟事務局長 日塔 喜一さんをアドバイザーとしてお迎えし、ご自身の著書 『機会均等へ向けて』開成出版 を読みこなしていきます。経常費補助金制度の誕生(昭和45年)以降の私学経営の軌跡をチェックします。
 *日塔さんの紹介ということで定価3000円 のところ2割引きで購入できます。
 《購入申込先》 開成出版 03-5689-7654



速報 11月のFMICS

 1998年新設の武蔵野女子大学現代社会学部では、1期生が3年生になって就職活動に取り組もうとする昨年秋、地域社会に眠っている企業経験者(定年退職者や主婦等)を「キャリア・カウンセラー」として起用して、学生の就職指導セミナーの講師を担当してもらっています。

 大学周辺地域に眠っているであろう人材にねらいを定め、新聞広告で募集をかけたところ、わずか7名の募集のところに133名の応募があり、しかも応募者はいずれも一部上場企業のトップ経験者をはじめ、赫赫たる経歴の持ち主ばかりであったとのこと。泣く泣く絞り込んで採用された講師陣により、それぞれの経験に基づいての実践的な指導が展開されているようです。

 11月のFMICSでは、学生の就職支援に地域社会の埋もれていた人材を活用したこのユニークな取り組みについて、実施後1年を過ぎた時点の成果と課題などを、発案の潮木守一学部長とキャリアカウセラーの方々に語っていただきます。

【日時】 平成13年11月17日(土) 午後3時〜

【会場】 武蔵野女子大学 7号館5階大会議室

*三鷹駅北口より武蔵境駅行きバスで10分、または武蔵境駅北口より三鷹駅行きバスで7分、「女子学院前」バス停下車すぐ。
*詳細やその他のルートについては こちら を参照してください。

【テーマ】 新しい大学のカタチを考える
       キャリアカウンセラー・地域人財を活かす

【申込&問合せ先】 出光 直樹 idemitsu@obirin.ac.jp までお申し込み下さい。

 キャリアカウンセラー制度については、 潮木先生のページもご参照下さい。「1998年4月以降の発表物」のフレームに進み、その中の、

などをご覧下さい。



速報 12月のFMICS

 12月例会は、お二人のVIPに大学のウチソトを大いに語っていただきます。ゲストは退職金財団理事(前早稲田大学副総長)と海外新聞普及(株取締役丹内明良さんです。アフター月例会は割烹「京都」での恒例の懇親忘年会となります。

【日時】 平成13年12月15日(土)
          月例会 午後3時〜6時
          忘年会 午後6時〜8時

【会場】  工学院大学新宿キャンパス

【テーマ】 (仮題)新しい大学のカタチを提言する
        ウチから見た大学/ソトから見た大学



速報 2002年1月のFMICS

●新春1月のFMICSは恒例の葉山合宿例会です。FMICSらしさを十二分に体感することができる「こたつ合宿例会」です。●2002年のスケジュール表に赤丸をお願いいたします。

【日時】 平成14年1月26日(土)〜27日(日)
          オリエンテーション  午後1時〜3時
          合宿FMICS   午後6時〜翌午前9時

【会場】  工学院大学新宿キャンパス  & 湘南・中央大学葉山寮



「放送大学大学院へ行こう!プロジェクト」

 「放送大学大学院へ行こう!」プロジェクトへの参加のお誘いです。

 ご存じの方も多いと思いますが、放送大学に大学院が設置され、来年4月に第1期生を迎え入れます。修士課程のこの大学院は、「総合文化」「政策経営」「教育開発」「臨床心理」の4つのプログラムからなり、修士学位を目指す修士全科生の入学定員は四プログラムを合計して500名となっています。在学年限は2年から5年、完全に単位ベースの学費であり、修士号取得まで45万円程度しかかかりません。

 去る9月14日に締め切られた修士全科生の募集には応募が殺到したようで、「臨床心理」プログラムでは臨床心理士受験資格を得るための第二種大学院の指定を受ける予定とあって、倍率100倍になったと関係者よりもれ伝わっています。

 学費は国立大学院の半分以下ですし、フレキシブルな学習形態も相まって、確かに社会人のニーズをつかむのは間違いありません。下手な私学の大学院にとっては、黒船出現ともいえるでしょう。

 さて、今回のプロジェクトの呼びかけはこちらではありません。修士全科生(いわゆる正規生)の募集は終了しましたが、これから修士科目生の募集が始まります。いわゆる科目等履修生の募集ですが、一部の実習科目を除いて、全ての講義科目の履修が可能です。入学資格は18才以上であれば学歴は不問、募集人員はなんと1万人で、事実上のオープンアドミッションと思われます。

 修士全科生の入学資格は、原則として大卒以上となりますが、修士科目生にて修得した単位は、修士全科生に入学した際に10単位まで通算されるとのこと。他大学の大学院へ入学した場合も法的には通算可能です。

 修士科目生の募集は、12月15日〜2月15日で、募集要項は今月中旬からの配布になります。入学料は1万円、授業料は1単位あたり1万円(殆どが2単位科目)で1学期毎の在学になりますが、入学金については、20名がまとまって一括手続きすると、半額の5千円に割引になります。

 プロジェクトでは、放送大学大学院の修士科目生として学ばれる方を募ります。何とか20名が集まって入学金を安くしましょう。

 受講科目はそろえる必要はありませんので、お好きな科目を履修しましょう。まずは、募集要項を放送大学に請求して下さい。

放送大学のWebサイトで、無料で請求できます。

 このプロジェクトへのお誘いは、BIGEGG次号以降でもお知らせいたしますが、ご関心のある方は、出光 idemitsu@obirin.ac.jp までご連絡下さい。

(出光 直樹)