平成13年12月11日 内閣府・総合規制改革会議は、『規制改革の推進に関する第1次答申』をまとめました。
各紙12日朝刊では、教育分野は極めて軽い扱いですが、答申の具体的内容はかなりセンセーショナルなものです。高等教育およびその周辺の規制改革は、大方の予想を遙かに超える猛スピードで進んでいることに驚かされます。この凄まじいまでの時代の変化に飲み込まれないためにも、高等教育に対する私たち一人ひとりのミッション・パッション・アクションをキリキリと束ねなければなりません。いよいよ、FMICS人の出番です。 答申の原文は内閣府のWebページからダウンロードできますので、皆さまには熟読されますことをお薦めいたします。
なお、経済財政諮問会議、WTO関連の報道のチェックもくれぐれもお忘れなく。
折り紙を2枚用意します。1枚は、鶴を折る。もう1枚は四角のまま。目の前の誰かに四角のままの折り紙を示して「これは何?」と尋ねると、十中八九「紙」と答える。「では」と思わせぶりに前置きして、鶴を示せば「鶴」と答える。同じ 紙のはずなのに片や紙、片や鶴、「どうして?」と尋ねれば「う〜ん」と考え込むばかり。そしてさらに質問。「四角のままの折り紙を出されたときに鶴と答えたらおかしいかなぁ」「おかしいような気がするけれど・・・」
これは、10年ほど前の、受験生のための進学相談会での一コマである。受験生への質問はまだまだ続く。受験生と私の間にある机を指さして「これは何?」と尋ねると、今度は自信満々「机です」と答えます。「じゃあ、この机の上に座って目をつぶって机を触ってごらん」「イスになりました」。だんだん楽しくなってきますね。「ではでは、この机の下に入って触ってみよう」。このあたりになると、僕のブースのまわりに人だかりができてきます。「天井です!」
18歳人口が減少して、大学の間で受験生の奪い合いがはじまった。奪い合いに負けた大学は淘汰されるから、大学ではマーケティングが大切になり、財務が注目され、学生募集が重視される。大学の勝負どころはどんどん専門化していき?大学教員の片手間では行き届かなくなる。そうやって「風が吹けば桶屋がもうかる」ように、「大学経営の時代」がやってきた。そして、大学職員が脚光を浴びることになってしまった。
一方、18歳人口の減少とともにやって来た「入学生の学力域の拡大」に、大学の教育システムは追いつけない。大学の想像をはるかに超えたスピードで、入学生は変化してゆく。そして、大学教育と学生の学習ニーズのミスマッチを生んだ。
20年ほど前に、一部の大学人は、18歳人口の減少に警鐘を鳴らす一方で、大学進学率の上昇を予測し、成人教育の可能性を信じ、マスの次にくるのはユニバーサル化であると、ほのかにばら色の未来を期待したのだ。そして、突然やって来た大学のユニバーサル化とは、マーケットが縮小したことによって生まれた相対的な状況、誰もが大学に入学できてしまう環境にすぎなかった。その向こうにみえるのは、高等(?)教育サービスのコモディティ化にちがいない。
競争は、ある種の熱狂を生む。冒頭の相談風景は、「大学って何を学ぶところですか?」という問いに答えたもの。熱狂は、たくさんある答えの中から、さも当たり前のような顔をして「みんなと同じ答え」を指し示すところからはじまるような気がするのだが。
(滝川 義弘)
「京都造形芸術大が事務職に年俸制導入」
課長職以上には年俸制を、それ以外の一般職員には部分的に成果給制度を導入。新人職員と年配職員で給料の逆転現象もあり(毎日教育メール2001年11月28日)。
この夏、桜美林大学大学院で修士を修了し(現・大学アドミニストレーション専攻)、大学職員になるため就職活動を行った。応募した大学は関東や地方の大規模伝統校から小規模新設校まで、単科大学もあたった。
就職面接が進むにつれ、形式的で堅い話が多くなる大学。それとは反対に、個人的な価値観や経験について語り合う大学。中間層が元気な大学。面接官の話し方や素振りで違いがみえる。学食に足を伸ばす。学生と教員の対話が尽きない様子の大学。学生と職員が気軽に挨拶している大学。スーツが群れをなしている大学。
職員採用の説明会で、職員の意気込みや期待が伝わってくる。理事長が『日本のために輝ける大学でありたい』と理念を堂々と発表している大学を訪ねた。事務局長の第一声。「本学は私学です。民間の会社と同じなのだから、公務員と勘違いしている方は応募を控えていただきたい。そうしないとお互い不幸なことになる。」その後いくつかの小集団に分かれ、総務部の職員と質疑応答へと続いた。また、『東西文化の融合』を理念とする大学では、人事課長が質疑応答を務めた。「本日はあくまでも説明会ですので、採用を気にせず、何でも遠慮せずに聞いて下さい」多くの参加者から質問が飛び交い、予定時間を延長させる程だった。そして、課長は会をこう締め括る。「本日の説明会の準備に当たってくれた他の職員からも、簡単な自己紹介とコメントをいただきましょう」その大学は参加者に対し説明会についてのアンケート調査も実施していた。
今後日本の大学職員は、アドミニストレーション側に移行してくる教員と競うことになる。通常業務の外注が進み、職員は余程の専門能力を高めて役職に就くか、でなければ大学教育に深く関ることが求められるだろう。アメリカに目を向ければ、財務、学生部、インターンシップ、調査企画、導入教育、あらゆる分野の専門家団体がひしめいている(諸団体の運営手法も見習うべきところが多い)。大学アドミニストレーション専攻の大学院では、修士を持つ職員が統計の授業を、現職アドミニストレータが高等教育の組織論や行政管理を教える。
日本の将来は明るい。初等・中等教育では民間出身の校長が登用され、品川区をはじめとする教育委員会が学校改革を進めている。教育の質に対し厳しい評価の目を持つ学生と保護者が、少子化と足並み揃えて高等教育へやって来る。
(本田 寛輔)
●今月のゲストは、知る人ぞ知る我らが退職金財団理事(前早稲田大学副総長)村上義紀さんです。昭和58年12月19日FMICS12月例会会場は早稲田大学大隈会館でした。とにかく、度肝を抜かれました。この日から、村上さんとFMICSはかなり血の濃い関係になりました。●早稲田人、いや日本の専門的家型アドミニストレーターの先駆者として歩まれた40年間のミッション・パッション・アクションをじっくりと語っていただきます。混沌とした時代をいかに乗り切るかの“智慧”の数々。何が出てくるはお楽しみ。●恒例の懇親忘年会は村上さんを囲みます。FMICS御用達割烹「京都」でのワイワイガヤガヤは乞うご期待。お仲間をお誘いの上ご参加ください。
【日時】 平成13年12月15日(土)
月例会:午後3時〜6時 忘年会:午後6時〜8時
【会場】 | 月例会 |
工学院大学新宿キャンパス 4F・0477教室 *エレベーターは、4階には止まりません。3階または5階で降りて、階段で上下してください。 |
忘年懇親会 | 割烹「京都」西新宿店 TEL 03-3348-4619 |
【参加費】 会員 1000円 学生 500円 非会員 1500円
【申込&問合せ先】 12月14日(金)までに、出光 直樹 idemitsu@obirin.ac.jp までお申し込み下さい。
一言案内は、村上さんがこの9月に上梓された『みんな私の先生だった』/ミネルヴァの杜の学生たち(霞出版社)の書評とエッセイ集『杜に生きる』からの抜粋で代えさせていただきます。
書評
熱烈なファンが多い我らが村上さんの書が出た。大学教員の論文集はあまたあるが、大学職員の論文集(講演録、寄稿等含む)はそうはない。ましてや職員出身のアドミニストレータ(喜多村和之先生は村上さんを「日本におけるアカデミック・アドミニストレータの先駆者」と呼ばれる)が記す書としては“日本初”ではないだろうか。
村上さんは遠慮がちに「大隈さんへの業務報告書のつもり」と言われるが、とんでもない。本書は「アドミ村上のMPAマネジメントブック」である。村上さんは「大学職員は必要か」という本質的な問いと真正面から格闘してきた。仕事が変わるごとにその意義を見出すため、徹底的に調査し研究をする。本書はこれらをまとめたものだ。「着眼がいい」と奥島総長が言われるように、本書を一読すれば先見力と洞察力に驚くであろう。国際交流、事務システム、大学と地域、コンソーシアム、外部資金、職員の起源などなど。その領域は実に幅広い。また、実務からの視点を軸に、見聞と経験に基づく国際的視野と内外の文献を渉猟した上での歴史認識が備わり、内容は奥深い。人生哲学もギュとつまっている活きた大学マネジメントブックといえよう。村上さんの信念を部下に語りかける「とらいあんぐる」は読みどころだ。理工学部の技術・司書・事務職員222人を束ね、意識改革を狙って広報誌「とらいあんぐる」を発刊したのは村上さんである。リーダーとはどうあるべきなのか、を教えてくれる。
本書には関係者が実名で登場する。教育の原点を想起させる教員の逸話。数々の抵抗に遭いながらも事務システムを構築していく道程などは迫力満点だ。本書はどこからでも読める。そして、そのひとつひとつから村上さんのMission、Passion、Actionを実感することができる。大学人の必読書である。
《補足》 村上さんの退職記念に、関わりのあった方々によるエッセイ集『杜に生きる』(霞出版社)も出版されている。編集世話人はほとんどが女性。モテル男のなせる技?なのか。こちらも人間「村上義紀」の魅力をたっぷりと満喫できる一書である。(菊池裕明)
『杜に生きる』から
●「あのな、勉強は黙ってやるもんだよ」は、今でも耳の奥に残る村上語録。(高橋真義)
●とある会議室の片隅で、憤然と腕を組み、天井を見上げているちょっと恐そうなご仁がいる。高等教育問題研究会、通称FMICSの会合において、自由発言の時間がくると、おもむろに、そのご仁が口を開いた。「みなさん、自分の大学の学生数や教職員数、校地内校舎の面積等、知ってますか。問われてすぐ答えることがでくますか」。一瞬、会場はシーンとなる。緊張感が走る。 「結構これが、自分の大学のことをそんなには知らないんだよね」と、胸のポケットから、黒い手帳をとりだした 彼は、とたんに、人懐っこい笑顔をみせて、「早稲田では、誰でもすぐ答えられるように、システム手帳を作りました」と、嬉しそうに、手帳から数字を並べる。けっして、嫌味にならない。あたかも少年が、仲間に自分で作った自慢のベーゴマをみせているようで、なんだか楽しい。(矢島美知子)
●村上さんは、恐ろしい人だと思ったことがある。一昨年だったか、明治大学で開かれた大学行政管理学会のシンポジウムで、「大学の事務はすべて外注できる」という発言を聞いたときだ。だから大学の事務職員は、退職してアウトソーシングを受注する会社をはやくつくった方がいいというのである。この学会の会員は、大学の事務部門で管理職を務める人たちに限定されている。そういう人たちを前にこういうのは、いまのような仕事をしている大学の事務職員は要らない、といったことと変わりない。(山岸駿介)
●恒例となった関西FMICS Winter-meetingをおしらせします。21世紀最初の1年の 参加者全員報告。2002年の目標も発表します。ミーティングの後は、これも恒例の飲みっくす。わいわいがやがや夜のふけるまで。●今回の例会は、3月FORUMの打合せもかねて行います。
●平成13年12月21日(金)午後7時からのスタートです。会場などの詳細については、SFK事務局・滝川義弘 tacky@sec.otani.ac.jp までお問い合わせください。
12月のYFNは、FMICSをYFNの成長を厳しくも暖かく見守って下さいました故大野一石師を偲び、追善シンポジウム(語り部は、退職金財団理事・前早稲田大学副総長村上義紀さん、中大総合企画課長三浦康秀さん、愛知大学関係者 の皆さまです)と追善の会をもって月例会といたします。常に夫唱婦随で大学改革を支えられた奥様にも臨席いただきます。
【日時】 平成13年12月22日(土)
追善シンポ 午前10時〜午後12時半
追善の会 午後1時〜4時
【会場】
岐阜市米屋町 水琴亭 TEL058−262−0023
*東海道本線JR岐阜駅(新幹線岐阜羽島ではありません)からタクシー10分
【参加費】 10,000円
*岐阜一の芸者さんの追善の舞と岐阜県邦楽協会長の献笛もあります
【申込先】 YFN事務局 林 憲和 nhayashi@ha.shotoku.ac.jp
●FMICS Staff Development 略して 「SD」は、月例会とは別に、原則として第3週の木曜の夜に開催されている勉強会です。超競争時代をしたたかに活き抜くためにも、大学人一人ひとりの努力を束ねる場です。
(1)メディアチェック
あなたのアンテナが何かを感じた新聞・雑誌等の教育&経済トピックスを、切り抜いて持ちよりディスカッションします。トピックスは厳選して1件、A4縦判にコピー(15枚程度)して、氏名と簡単なMEMOを付してご持参ください。各自5分間程度のコメントをしていただきます。
(2)テーマを定めた継続的な勉強会
1997年度は国立教育研究所編『日本近代教育百年史』を、1998年度は工学院大学と拓殖大学の沿革史を、1999年度前半は『戦後の大学論』を読み進めてきました。そして、1999年度後半からはぐっと現代に近づき、中教審、臨教審、大学審等の「答申」を読み込んできました。2001年8月からは、『英国高等教育制度検討委員会(デアリング委員会)報告』(通称デアリングレポート)を読み込んでいます。
なお、12月からは新企画がスタートします。9月例会の特別ゲスト・前日本私立大学連盟事務局長日塔喜一さんをアドバイザーとしてお迎えし、ご自身の著書『機会均等へ向けて』を読みこなしていきます。経常費補助金制度の誕生(昭和45年)以降の私学経営の軌跡をチェックします。
【日時】 平成13年12月13日(木) 午後6時30分〜8時30分
【会場】 工学院大学新宿キャンパス 高層棟27階2710ゼミ室
【コーディネーター】 桜美林大学大学教育研究所 研究員 出光 直樹
【テキスト】 日塔 喜一『機会均等へ向けて』 開成出版
*日塔さんの紹介ということで定価3000円のところ2割引きで購入できます。
《申込先》 開成出版 03-5689-7654
【申込先】 出光 直樹 idemitsu@obirin.ac.jp
●新春1月のFMICSは恒例の葉山合宿例会です。FMICSのいう“あったかさ”を本物にしなければ、あなたの大学は21世紀に活きのぼることは許されまい。内閣府が主導の規制改革のスピードはすさまじい。今こそ、大学人一人ひとりのミッション・パッション・アクションを練り上げる必要がある。大学のホンモノさの真贋が問われることになる。●今年も、新宿・工学院大学でのオリエンテーションは丹内明良さんの「先見2002」で始まります。続いて、磯の匂いが懐かしい湘南葉山に会場を移します。●平成14年度のFMICSのアクションプランを練り上げます。そして、参加者全員の10分間スピーチで、激変する高等教育に対する想いと決意を語り伝えていただきます。なお、翌朝は初春の湘南散歩です。●FMICSらしさを十二分に体感できる「こたつ合宿例会」。お仲間には、ぜひとも年内中に一言お声をお掛けください。昼、夜プロのみの部分ご参加も大歓迎いたします。
【日時】 平成14年1月26日(土)〜27日(日)
オリエンテーション 午後1時〜3時
合宿FMICS 午後6時〜翌午前9時
【会場】 工学院大学新宿キャンパス & 中央大学葉山寮(神奈川県葉山町)
【申込先】 坂田 範夫 kintoki(アットマーク)tamajs.chuo-u.ac.jp
●歴史は明日を語る。中央教育審議会38答申から46答申までのわが国の高等教育に対する想いを検証いたします。21世紀答申(H10.10.26)と比較検討しながら、大学改革のヒントを探したいものです。●2月例会ですが、3月2日(土)になりますことお詫びいたします。
【日時】 平成14年3月2日(土)
【会場】 工学院大学新宿キャンパス
【スピーカー】 常葉学園大学 学長 斉藤 諦淳
●SKF・関西FMICSが総力を挙げて企画担当する平成14年3月のFORUM IN KYOTOの日程とテーマが決定しました。詳細は後日ご案内いたします。
【日時】 平成14年3月23日(土)〜24日(日)
【連絡先】 大谷大学企画調整室・滝川 義弘 tacky@sec.otani.ac.jp