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2002年2月のFMICS



「IT」そして「自立」

 昨年暮れ、総務省の次期審議官に月尾嘉男東大教授が内定との記事を新聞の片隅に見つけた。教授のプロフィールについて記事は以下の通り伝えている。「月尾氏は専門の都市システム工学のほか、人工知能や仮想現実などの情報技術(IT)についても精通している。総務審議官としてIT政策や情報通信分野の国際交渉などを主に担当する見通しである」実は2〜3週間前、私は月尾教授と評論家田原総一朗氏の対談集「IT革命のカラクリ」(アスキー)を読み終ったばかりだった。田原氏が文中で語るように教授の話はとにかくおもしろく、しかも危険までに過激だった。印象に残った発言をいくつか紹介したい。

 「産業革命以降、100年間続いてきた大量生産から消費者が主体性をもつ一品注文生産へのパラダイム転換。これがIT革命の本質」と熱く語り、「小売り、卸、商社、代理店など中間でマージンをとる業者は、存在そのものが危うくなっていく」ことを指摘する。アメリカのIT戦略にも話が及び、インターネットのすべての回線がアメリカに集まる仕組みで、情報は監視され、筒抜けになっているという。本当なのかと驚いてしまう内容だが、インターネットはアメリカの「戦略」であり、アメリカが極めて「国益」を重視し、交渉にあたる国であることを明らかにしていく。

 以前日曜のNHK特集でITの特質を見事に活かした経営実践を観て、感動したことを覚えている。伊藤忠商事の丹羽宇一郎社長は多大なリスクを覚悟のうえ、巨額の不良債権を一括処理したうえで、革新的な企業経営を進めている方として著名である。丹羽社長は全社員にEメールで随時経営方針・方向性を示し、理解を求め、さらに社員からの意見・質問に対し、迅速にEメールで答えていた。4,000名程度の大企業で出来ていることがなぜその数分の一以下の我大学で出来ないのか、その時疑問に思った。トップは現場の職員が何を考えているか、把握することにもっと敏感であるべきと思う。

 法政大の清成忠男総長はその著書等でしきりに「自立型人材」を社会に送り出すことの重要性を強調している。自立型人材とは、自分で考え、判断し、主体的に自分の運命を切り拓いていく人材であるという。これからITの発展によってグローバル化が加速度的に進む中では、情報を主体的に取捨・選択し、決断する力がより求められるはずである。この力を身につけていくことが「自立」への第一歩ではないか、そんな気がしてならない。不確実な時代を生きる姿勢について、安部修仁社長(吉野屋ディー・アンド・シー)近著「吉野屋の経済学」(日経新聞社)での言葉を今かみしめている。

 「現代は受け身に回ると絶望の淵へと向かいかねない時代である。・・・・ 踏み込む勇気さえあれば、実は耕されていない豊穣な市場がそこに待っていると楽観している」

(金田 淳一)



高等教育機関の「形」と「心」

 1999年11月19日、JABEE(日本技術者教育認定機構)による「技術者教育プログラム」の国際認定を目指す努力が動き出して約2年が立ち、2001年6月22日ワシントンアコード(WA)加盟国の総会でJABEEの暫定加盟が承認され、今後数年で、各高等教育機関は国際基準による教育プログラムの評価認定が可能となる。  「社会人向け経営教育のグロービスは(本年)4月に、修了者に独自のMBA(経営学修士号)を発行するビジネススクールコースを設ける」(2002年1月9日・日本経済新聞朝刊 以下引続き引用)「定員は年間80名、20科目を通常2年で履修、学費は270万円の予定。同社は1992年米ハーバード大学などのビジネススクールの教材を使い、社会人に経営教育を始めた。受講者延べ5000人、顧客企業300社」「学校法人でないため独自のMBAは学校教育法の定める経営学修士ではないが、将来は欧米のMBA教育機関審査組織から認定取得を目指す」

 「米スタンフォード大学は日本企業に対し、工場管理理論などの講義のパッケージ商品を本格的に売り込む」「日本では終身雇用制度など旧来の経営手法が崩れつつあり、米国の経営や管理に関わるノウハウを伝授するビジネスが活発になってきた」(2002年1月15日・日経朝刊)

 既に「高等教育」は文部科学省の設置認可を得た「機関」だけではない。大綱化されたとはいえ、日本の「教育制度」に守られた大学を卒業することの意味が問われている。日本の高等教育制度という「形」が、これまで進めてきた「変化」から根本を「リセット」しなければならない環境に向かっている。

 「日本は本当にデフレで物価が安いね。でも、仕事がなくなるってことの怖さを知っているようには感じられないね」「ニューヨークではどんな“ラッパー”でも松葉杖を突いた人が電車に乗ったら席を譲るけど、東京では一見ごく普通の人も乗ってきた途端、みんな目をそらし知らん振りだったよ。今の日本はどこ行っても治安が悪くて恐いね」ニューヨークから年末を過ごしに帰郷した友人の「今の日本は変だよ」から始まった一言。内面を支える「心」、即ち高等教育に求められてきた「人間教育」という拠り所も「高等教育機関の大衆化に伴う・・・多様な役割を担っている」式では解決できない状況まで来ているように感じる。

 「ニューヨークで今の“日本”を一番見ているのは日本人だけ。世界は中国とその周辺地域を注目だよ」

 一見繋がりの無い出来事だが、高等教育における社会的役割として、明確でぶれない新たな価値基準を見出さなければ、形と心はますます離れたまま「形」も「心」も衰退するように思える。

(近 雅宜)



ご案内 FMICS2月例会 (第430回例会)


●FMICSでは、激動する高等教育界を考えるために、審議会答申を読むという企画を平成11年12月からシリーズ化してきました。FMICSSDにおいても「戦後の大学政策を読み解く」をテーマに勉強を重ね、審議会答申をじっくりと読みこなせば、その時代は見えてくると確信するまでに至りました。●昨年6月例会では、元文部事務次官・新国立劇場運営財団顧問の木田宏先生に、昭和40年代の文部省と社会の動きをTHINK BIG に語っていただきました。●今月は中教審38答申を中心に昭和40〜50年代を検証いたします。歴史を辿る道案内は、常葉学園大学学長の齋藤諦淳先生にお願いいたしました。皆さまには、お仲間をお誘いの上ご参加ください。

●中央教育審議会答申は、昭和28年の第1回目から全て文部科学省のWebにアップされています。

☆全答申  ☆38答申  ☆46答申


【日時】 平成14年3月2日(土) 午後2時30分〜6時

*都合により2月例会は3月2日に行います。皆さまにはお間違のないようご注意下さい。

【会場】  工学院大学新宿キャンパス  低層棟4F0477号教室

*地下1階から高層用エレベーターで2階まで上がり、さらに階段で4階まで昇ってください。中扉がありますがそこを通り抜けて、突き当たりの右のゼミ室が会場です。

【テーマ】 歴史は明日を語る 中央教育審議会38答申と今日の大学

【スピーカー】 常葉学園大学 学長 斉藤 諦淳

【参加費】 会員:1000円  学生:500円  非会員:1500円

【申込先】 出光 直樹 idemitsu@obirin.ac.jp


月例会一言案内

●大学全入の時代。生き残りを賭けたリングに無理矢理上げられた21世紀の大学。もはや、奇をてらった改革では戦いに勝てまい。多少の迂回となるかもしれないが、学生が主人公となる“あったかまなびっと改革”に取り組む大学こそが活きのぼるだろう。桜美林大学大学院教授寺崎昌男先生は「歴史は明日を語る」と言われます。経済の高度成長と高等教育の拡大。ターニングポイントとなった昭和40年代〜50年代をじっくりと再点検し、今に活かすことができる原理原則を検証します。当時、文部行政の最前線でバリバリとご活躍になられた齋藤先生のお話しにご期待下さい。

●ワイワイガヤガヤと活発なディスカッションをしたく、参加者には次の資料にお目通し下さい。

●参考までに、2001年6月号の FMICS BIG EGG に引用させていただきました黒羽先生の『戦後大学政策の展開』はじめと関係年表をご紹介いたします。

 最近の高等教育政策とそれに対する個別大学の対応を見ると、平成3(1991)年7月に行われた大学設置基準の大幅改正を契機に、ほぼ改正の趣旨に沿った教育課程改革、自己点検・評価項目の設定などがさかんに行われている。「大学改革」という言葉は、反論の許されない「天の声」のようになっている。これは昭和43,44年の大学紛争以前の政策・行政と個別大学との対立を経験している者の目からは、刮目すべき現象である。どうして、政策批判も充分に行われることなく、こういう時代となったのだろうか。それを明らかにするには、大学設置基準制定(昭和31年)、第一次大学生急増期(昭和41年前後)からの大学の状況と、それに対する政策展開の過程をできるだけ客観的に理解しておく必要である。そうすれば今日の大学改革の要望は、決して突然降ってきた「天の声」ではなく、日本社会の発展とそれに伴う教育爆発に、個別大学がその都度適切に対応していなかったために、集中的に出現した現象と見ることができるのではなかろうか。

 −中略−

 ともかく、大学を中心とした高等教育の拡大、つまり高学歴社会の出現は、明治以来の強固な国民の高学歴志向の結果である。そして第二次世界大戦後は数多い高学歴者が、個人としての福祉を達成し、その総体としての経済社会の発展を実現したのである。従ってその経緯と総括は、単に教育政策論という一分野の課題だけでなく、戦後社会論においても大きな位置づけをもっているものとおもう。


《 戦後高等教育関係年表 》
昭和31年10月大学設置基準(省令)制定
34年3月首都圏の既成市街地における工場等の制限に関する法律公布
35年 −安保反対運動さかん
10月経済審議会教育訓練小委員会/国民所得倍増計画に伴う長期教育拡充計画を報告
36年3月科学技術庁/科学技術者の養成について文部省に勧告
6月高等専門学校制度発足(学校教育法改正)
7月私立大学の学科増設・定員変更を認可制から届出制に
38年1月経済審議会/経済発展における人的能力開発の課題と対策答申
中央教育審議会/大学教育の改善について答申(38答申)
11月能力開発研究所(38.1発足)/初の能力開発テスト実施
41年 − 第一次大学生急増(18歳人口249万人)
43年6月学生紛争多発(115校)
東大安田講堂占拠(昭和44年1月機動隊封鎖解除)
44年4月中教審/当面する大学教育の課題に対応するための方策について答申
8月大学の運営に関する臨時措置法公布(5年間の時限立法)
45年7月日本私学振興財団発足・私学経常費助成開始
46年4月社会教育審議会/急速な社会構造の変化に対処する社会教育のあり方について答申(生涯教育提唱)
6月中教審/今後における学校教育の総合的な拡張整備のための基本的施策についての答申(46答申)
47年6月高等教育懇談会初会合/高等教育計画検討
49年6月大学院設置基準制定
50年4月短期大学設置基準制定
7月専修学校制度創設(学校教育法改正)
私学振興助成法公布
52年5月大学入試センター発足
*IDE NO.351を参考に作成



ご案内2 YFN2月例会 (第429回例会)

●昨年10月に柳ヶ瀬において、FM1CSも関わり実現した「GIFU OPEN UNIVERSITY 10大学合同フェスティバル 〜大学がまちにやってきた〜 」が、単に秋のお祭りに終わらず、商店街と学生が協力して空き店舗を改装し、県下県外の大学30大学が合同して柳ヶ瀬学生村を立ち上げました。●今月も柳ヶ瀬学生村とFMICSの合同企画です。岐阜を熱くしようと、大学の学長・理事長や岐阜財界の大物、学生たちが大いに語ります。学生代表は東京からNPOを立ち上げ4月からそのまま就職する強者です。この秋には学生村有志が岐阜の祭りを代表するようなビッグイベント・ハートピア祭り(よさこいバサラ祭り)を立ち上げる予定です。そのデモンストレーションを兼ねて、踊りありパーティーありの企画です。

【日時】 平成14年2月16日(土) 午後2時〜6時半

【会場】  岐阜市柳ヶ瀬通2丁目ペルル前(元ロッテリア) 柳ヶ瀬学生村

【テーマ】 まちづくりフォーラム 成人を祝し 学生とまちを語る

【プログラム】
14:00〜16:00 「学長・社長・学生が熱く語る」
学長岐阜聖徳学園大学学長
・学園理事長
北畠 典生
岐阜女子大学理事長杉山 博文
社長岐阜初寿司社長
・柳ヶ瀬商店街振興組合連合会理事長
森 賢二
中部コンピュータ相談役
・岐阜県中小企業団体中央会会長
辻 正
学生NPOまつり代表・法政大学4年田村 直俊
16:00〜16:30 「よさこい乱舞隊 デモンストレーション」
16:30〜18:30 「パーティー」 学生村2F 花時計

【参加費】 1000円(パーティー代)

【申込先】 YFN事務局 林 憲和 nhayashi@ha.shotoku.ac.jp



FMICS SD 126

●FMICS Staff Development 略して 「SD」は、月例会とは別に、原則として第3週の木曜の夜に開催されている勉強会です。超競争時代をしたたかに活き抜くためにも、大学人一人ひとりの努力を束ねる場です。

(1)メディアチェック 
 あなたのアンテナが何かを感じた新聞・雑誌等の教育&経済トピックスを、切り抜いて持ちよりディスカッションします。トピックスは厳選して1件、A4縦判にコピー(15枚程度)して、氏名と簡単なMEMOを付してご持参ください。各自5分間程度のコメントをしていただきます。

(2)テーマを定めた継続的な勉強会
 1997年度:国立教育研究所編『日本近代教育百年史』/1998年度:工学院大学と拓殖大学沿革史/1999年度前半:『戦後の大学論』/1999年度後半:中教審、臨教審、大学審等の「答申」/2001年8月から:『英国高等教育制度検討委員会(デアリング委員会)報告』(通称デアリングレポート)/2001年12月からは新企画がスタートしました。前日本私立大学連盟事務局長日塔喜一さんをアドバイザーとしてお迎えし、ご自身の著書『機会均等へ向けて』を読み込んでいきます。経常費補助金制度の誕生(昭和45年)以降の私学経営の軌跡をチェックします。なお、都合によりテキスト講読は今月からはじめます。
 講読範囲は『機会均等へ向けて』p2〜p52です。

【日時】 平成14年2月14(木) 午後6時30分〜8時30分

*1月号では2月20日(水)とご案内しました。お間違いにならないようご注意下さい。なお、3月のSDは3月27日(水)です。

【会場】  工学院大学新宿キャンパス 高層棟27階2710ゼミ室

【テーマ】 21世紀の大学の原理原則を探る
       経常費補助金制度の誕生−3−

【コーディネーター】 桜美林大学大学教育研究所 研究員 出光 直樹

【テキスト】 日塔 喜一『機会均等へ向けて』 開成出版
       *日塔さんの紹介ということで定価3000円のところ2割引きで購入できます。
       《申込先》 開成出版 03-5689-7654

【申込先】 出光 直樹 idemitsu@obirin.ac.jp



速報 3月のFMICS
FMICS FORUM IN KYOTO

●ここのところの大学論議は、経営戦略論議に傾きがちではありませんか。国立大学の統合にはじまって18歳人口の減少まで、教育から少し距離を置いた「頭の」議論に偏っていませんか?経営は確かに大切だけれど、何のための経営かを考えたい。●ぼくらのミッションはあったかい高等教育を実現すること。そのひとつの手段が経営に違いない。●3月の関西FMICSのFORUMでは、警鐘を鳴らす意味をふくめて、あらためて、「現場」を確認したい。その心は、「こころ」の問題提起。昼間のFORUMは、大学生・短大生・高校生の変化と大学の関係を中心に進め、夜プロは、教育と経営の連接を、短期大学経営を軸に考えてみようと思います。●京都の春は、ワイワイガヤガヤFORUMからスタートします。部分参加も大歓迎。お仲間をお誘いの上ご参加下さい。

【日時】  平成14年3月23日(土)〜24日(日)
受付:午後1時30分〜
FORUM:午後2時〜6時
PARTY:午後7時〜9時
オールナイト:午後10時〜翌朝

【会場】 FORUM  池坊短期大学 美心館62番教室
 PARTY    百萬遍北
 ALL NIGHT  大谷大学 湖西キャンパス・セミナーハウス

【テーマ】 21世紀の大学のカタチ  いま 現場で何が起きているのか

【発表者】
FORUM
<司会> 京都精華大学会計課 寺田 剛文
学生を意識した教育への転換 仏教大学助教授笹田 教彰
短期大学が直面する課題の本質 京都光華女子短期大学・短大部長 太田 清史
中学生、高校生は変わったのか 大阪女学院中学・高校・事務長 浅田 晋太郎
記念講演
総括 立命館大学校友課長 志垣 陽
All Night FMICS
教育は短大経営を変えるか 進研アド 足立 寛

【参加費】 FORUM 2000円
 PARTY 5000円
 オールナイト 4000円

【申込&問い合わせ先】 大谷大学企画調整室・滝川 義弘

電話 075−411−8115  tacky@sec.otani.ac.jp
*宿泊希望の方はお早めにお申し込み下さい。