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2002年3月のFMICS



BROTHER, THERE IS STILL TIME ..?

 酒田短期大学に入学した中国人留学生が東京などの大都市に移動していた事件では、中国大使館も同短大に説明を求めたという。このように大量の留学生が酒田市から逃亡するであろうことは、同大学が中国人留学生を大量募集するということがニュースになった時から予想されていたことだった。昨年秋の同短大に入学予定だった中国人留学生に仙台入国管理事務所が在留資格認定証明書を交付しなかったことも重なって、日本にいる中国人社会でも話題になっている。(莫 邦富、エコノミスト 2002.2.12号)

 同短大は、図書費を支払いが遅れて書店から提訴されたり、給与未払いで教職員の職務放棄という事態が起きそうになった。(東京新聞 2002.2.26)同短大が廃校・倒産となれば他大学にいる留学生を含めて第2の日本語学校問題になる虞も大きい。それだけでなく保有流動資産の少ない大学が、金融機関から短期運転資金の融資を受けられなくなるといことも充分考えられる。

 もちろん留学生を含めて、学生対応をしっかりしている大学もある。現在日本にいる中国人留学生は約44,000人という。

 中国は、1979年から一人っ子政策を採っている。それでも2000年には大学入学者は220万人、在学生は556万人(内訳は本科生が340万人、専科生が216万人)にのぼる。普通中等学校の卒業生は2,100万人であり経済的条件を無視すれば学生募集地として悪い選択とは言えない。改革・開放をうけて中国の経済成長は60年代日本の高度経済成長期のように著しい。一人っ子政策もあって、経済的には、子どもを私費留学させられる、生活費を仕送りできる家庭が都市部では確実に増えている。(「中国」日経新聞 2002.2.24)

 留学生を受け入れている大学には留学生の学費を減免しているところもある。贅沢を言わなければ、授業料や生活費のかなりの部分を仕送りで賄える留学生もいる。日本の大学が、専科生にとって選択肢にの一つとしてもらえる期間はそれほど長くない。留学先から中国に帰る留学生も増えている。中国の高等教育の水準が高まれば、卒業したときにどのような付加価値を身につけられるのかを示すことの出来ない日本の大学が彼らの選択肢に入らなくなることは目に見えている。

 「10年もしないうちに中国の高等教育の水準が高まるだろうから、わざわざ高い授業料を払ってまで日本の大学に来なくなる」と話す私大教授もいる。(エコノミスト 2002.2.12号)

 アメリカで通用する資格や実力が身につけられ るのであれば、今とは逆に中国の大学を留学先に 選ぶ高校生が出てくる。学費を含めた生活費などのコストが現在の中国とさほど変わらなければ多くの高校生がそのように考えることは充分に予想できる。そのときに、それでも実力のある高校生を引きつけられる魅力のある大学がどれだけ存在するのだろうか。

 兄弟たちよ 変わるための時間が、まだあると考えているのですか。

(塩野 博雄)



「分けない教育」と大学

 1年前のことになる。ミニシアターとして知られるBOX東中野で、あるドキュメンタリー映画をみた。タイトルは「ひなたぼっこ」。「知的障害」と呼ばれる若者たちが、公立の普通高校をめざして、また、やっとの思いで進学を果たした高校で、そして地域で、みんなと一緒に生き生きと生活している姿が2年間にわたって記録され、綴られたフィルムである。ビルの地下の小さな映画館で約2週間、午前中1回だけの上映であったが、連日ほぼ満員だったと聞く。中学まで「普通」学級で過ごした彼らとその家族、友人たちにとって、一緒に高校に進学することはあたりまえのことであった。

 しかし、高校入試の「点数」という厚い壁を前に、それは容易なことではない。この映画を企画したNPO法人、ちばMDエコネットの代表山田晴子氏は、映画のパンフレットで、「私たちは、知的障害、またその他のどんな障害をもっていても、地域の中で普通に生活していきたいと願っています。障害をもつ人ともたない人を分けるのではなく、共に生きる『分けない』社会をめざしています。」と書いている。

 今年2月、朝日新聞は、「ふつうに同級生−障害者の高校進学はいま」と題する2回の連載を組んだ(2月24日、25日朝日新聞東京本社版家庭面)。「ふつうの」高校への進学希望の増加と受入れの少なさを指摘しながらも、記事は、「国内では79年の養護学校制度化以来、障害児の振り分けが続いてきた。それでも普通学級を目指す運動に押されて小中学校の門戸は広がってきたが、高校進学は堅く閉ざされてきた。その状況がいま、少しずつ変わろうとしている。」と書く。

 いま、社会ではバリアフリーが叫ばれ、大学も例外ではない。バリアフリー化の経費に対する補助金もある。だが、その「バリアフリー」とは、迎え入れる側が設けた関門を通り抜けることができた人にだけ与えられる「ごほうび」になっているのではないか。関門自体がバリアフリーになっているわけではない。

 記事はまた、「今の日本には義務教育後、生涯のある子の行き場がない。」との声を紹介し、前掲の山田氏は、「障害をもつ人たちは、一生分けられた場所で生きていくなら、その場所は一応保障されています。(略)私たちは、今の社会で知的障害への壁が最も厚いことを実感しています。知的障害の人たちを中心にすることで、地域の多様な人たちすべてを含みこむことができると考えています。」と書く。

 高校進学率が96%を超える現在、中学を卒業したら高校に進むというのは、すべての15歳にとってあたりまえのことになっているのだろう。では、大学進学率が50%を超えようとしているいま、すべての18歳以上の若者にとって、大学はどういう位置づけなのだろう。そして、大学はどう考えるのだろう。地域のバリアフリーとともに、大学のバリアフリーはどうあるべきか、考えていきたい。

(青木 加奈子)



ご案内1 関西FMICS 3月例会(第423回例会)
FMICS FORUM IN KYOTO


●陽射しも暖かくなって、そろそろ梅の満開もやってくる。FMICSの春は京都のFORUMでスタートします。●<変革期>と言われながらも、ちっとも変革してこなかった大学も今度ばかりは変わらなくては生き抜けない。●10万人の受験生を集めた大学がある一方で、入学者数の動向に一喜一憂する大学がある。そして定員割れを覚悟した大学も・・・。国立大学は独立行政法人化の流れに抗いながらも、合従連衡に動き出した。●でも、少し立ち止まって考えて欲しい。闇雲に経営を追いかけて、あなたは何を実現するのですか?もう一度あなたの大学のミッションを思い起こしてみて欲しい。高等教育、いや、教育機関のミッションを考えてみて欲しい。同じ「変革」ならば、我を捨てる道ではなく、我をいかす、我を獲得する道を歩んで欲しい。●京都のFORUMのテーマは「21世紀の大学のカタチ 今 現場で何が起きているのか」。●教室の中というブラックボックスにも迫ってみたい。きっと僕らの知らない大学があるはずだ。●夜プロは経営と教育のコラボレーション、短大経営のケーススタディも。ワイワイガヤガヤ、FMICSの春のスタートはにぎやかに。胸いっぱいのあったかさとともに、お仲間をお誘い合わせの上ご参加ください。
【日時】  平成14年3月23日(土)〜24日(日)
受付:13:30〜
FORUM:14:00〜18:00
PARTY:19:00〜21:00
オールナイト:22:00〜翌朝10:00

【会場】 FORUM  池坊短期大学 美心館62番教室
 PARTY    百萬遍北
 ALL NIGHT  大谷大学 湖西キャンパス・セミナーハウス

【テーマ】 21世紀の大学のカタチ  いま 現場で何が起きているのか

【プログラム】
13:00受付開始
13:30開会
司会 寺田 剛文(京都精華大学会計課)
14:00Presentation 1
「学生を意識した教育への転換」
笹田 教彰
(仏教大学助教授)
14:45Presentation 2
「女子短期大学の三つのの方向性」
太田 清史
(京都光華女子短期大学部教授・真宗文化研究所長)
15:45Presentation 2
「中学生、高校生は変わったのか」
浅田 晋太郎
(大阪女学院中学・高校・事務長)
16:30Discussion
17:15メッセージ
17:30総括
志垣 陽(立命館大学校友課長)
18:15閉会
19:00懇親会(門)
22:00All Night FMICS
「教育は短大経営を変えるか」
足立 寛(進研アド)

ケーススタディ<大学経営>
23:00Discussion
25:00All Night FMICS 終了
7:00起床&朝食
8:30総括
10:00FMICS FORUM in KYOTO 終了解散

【参加費】 FORUM 2000円
 PARTY 5000円
 オールナイト 4000円

【お願い】

【申込&問い合わせ先】 大谷大学企画調整室・滝川 義弘

電話 075−411−8115  tacky@sec.otani.ac.jp



ご案内2 YFN3月例会 (第431回例会)

●3月のYFN・名古屋FMICSは、柳ヶ瀬学生村とFMICSの合同企画です。●高知県のよさこい祭りと北海道のソーラン節がミックスされて生まれた新しい祭りが「YOSAKOIソーラン祭り」。自由で独創的な踊りが繰り広げられる北海道・札幌の初夏を彩る風物詩は、1992年6月、10チーム1千人、20万人の観光客でスタート。10回目の2001年には、408チーム、4万1千人が参加し、観客動員数は201万3千人を数えました。このビックイベントの創業者である長谷川岳さんをお招きしてお話を伺います。●たった一人の学生の「夢」が、いかにして観客動員数200万人の「祭り」に結実していったのか。「祭り」誕生の秘話、エピソードといった長谷川さんの体験に基づく「夢」の実現の実践論や、リオのカーニバルを超えたいという夢などをビデオ等も交えお話しいただきます。

【日時】 平成14年3月21日(木)春分の日 午後1時半〜4時

【会場】  岐阜市柳ヶ瀬通1丁目 柳ヶ瀬学生村

【テーマ】 YOSAKOIソーラン祭りの誕生秘話 街は夢の実現の舞台だった

【ゲストスピーカー】 YOSAKOIソーラン組織委員会 長谷川 岳

【参加費】 1000円(パーティー代)

【申込先】 YFN事務局 林 憲和 nhayashi@ha.shotoku.ac.jp



FMICS SD 127

●FMICS Staff Development 略して 「SD」は、月例会とは別に、原則として第3週の木曜の夜に開催されている勉強会です。超競争時代をしたたかに活き抜くためにも、大学人一人ひとりの努力を束ねる場です。

(1)メディアチェック 
 あなたのアンテナが何かを感じた新聞・雑誌等の教育&経済トピックスを、切り抜いて持ちよりディスカッションします。トピックスは厳選して1件、A4縦判にコピー(15枚程度)して、氏名と簡単なMEMOを付してご持参ください。各自5分間程度のコメントをしていただきます。

(2)テーマを定めた継続的な勉強会
 1997年度:国立教育研究所編『日本近代教育百年史』/1998年度:工学院大学と拓殖大学沿革史/1999年度前半:『戦後の大学論』/1999年度後半:中教審、臨教審、大学審等の「答申」/2001年8月から:『英国高等教育制度検討委員会(デアリング委員会)報告』(通称デアリングレポート)/2001年12月からは新企画がスタートしました。前日本私立大学連盟事務局長日塔喜一さんをアドバイザーとしてお迎えし、ご自身の著書『機会均等へ向けて』を読み込んでいきます。経常費補助金制度の誕生(昭和45年)以降の私学経営の軌跡をチェックします。
 今月の講読範囲は『機会均等へ向けて』第1部第4章&第5章・p53〜p164です。

【日時】 平成14年3月27日(水) 午後6時30分〜8時30分

【会場】  工学院大学新宿キャンパス 高層棟27階2710ゼミ室

*都合により、27階教員会議室に変更もあります。ゼミ室前のMEMOをご確認ください。

【テーマ】 21世紀の大学の原理原則を探る
       経常費補助金制度の誕生−4−

【コーディネーター】 桜美林大学大学教育研究所 研究員 出光 直樹

【テキスト】 日塔 喜一『機会均等へ向けて』 開成出版
       *日塔さんの紹介ということで定価3000円のところ2割引きで購入できます。
       《申込先》 開成出版 03-5689-7654

【申込先】 出光 直樹 idemitsu@obirin.ac.jp



速報 4月のFMICS

●競争的環境の中で個性が輝く大学であれという大号令(大学審議会21世紀答申)が出されて4年目。いよいよ「勝ち組」と「負け組」の色が付きはじめてきた。教育という単一商品を売らざるを得ない大学が、個性を簡単に打ち出せるのか否か。得てして、多くの大学人は到底勝ち目のない高いランクの大学をベンチマークしがちである。●大学をランキングすることの意味はどこにあるのか。ポジショニングの確認と次の一手のヒントを得るために、物見遊山的ではなく、外部評価としての「大学ランキング」をワイワイガヤガヤ考えます。FMICS的ランキングのアイデアを期待しています●ゲストは、この4月に刊行予定の朝日新聞社『大学ランキング』の編集総括の小林哲夫さんに登場いただきます。

【日時】 平成14年4月20日(土) 午後2時30分〜6時

【会場】  工学院大学新宿キャンパス

【テーマ】 個性の輝く大学を評価する  検証・大学のランキング

【発表者】 朝日新聞社『大学ランキング』編集統括 小林 哲夫



筑波大学大学研究センター 第38回公開研究会

3月18日(月)午後1時〜午後5時30分、筑波大学・大学研究センター(茗荷谷)の第38回公開研究会が開催されます。詳細は、センターのページをご参照ください。