3月30日(土)付けの日本経済新聞の朝刊に国立大学教員が4月1日より事業報酬を株式でも受け取れるようになったという記事があった。これは、4月1日からの商法の改正により、従来企業内でのモチベーションを挙げるために活用(従来は発行対象者を企業内の者に限っていた)されていたものを、新株予約権を活用したストックオプション(自社株購入権)として改め、企業の役員や技術顧問をしている大学教員、あるいは弁護士や公認会計士等の社外関係者にも利用できるようにし、企業に一時的に資金がなくても、人材を集め易くするというねらいがある。
これは、今後の独立法人化の端緒のようにも感じられたが、まだまだ国立大学は国の強い規制と保護の中にあることはいがめない。また、一方で高等教育の75%を占める私立大学は、財政の10%程度を補助金として受け取っているに過ぎず、ある資料によれば、学生1人あたりの国からの補助の格差は、国立大学と私立大学で28倍と言われている。このような状況では、本当の意味での自由化や競争など、日本の高等教育ではありえないのではないかと思う。
前回の2月FMICS例会で斎藤諦淳先生が、現在の構造改革の位置付けをとても明瞭に話していただいた。
38答申(「大学教育の改善について(答申)」、中央審議会第19回答申(昭和38年1月28日))では「多様化」が初めて打ち出され、46答申(「今後における学校教育の総合的な拡充整備のための基本的施策について(答申)」、第22回(昭和46年6月11日))はその延長上にあり、その後、「生涯教育」と「自由化」が昭和59年の臨時教育審議会で取上げられた。昭和59年時点では、まだまだ社会の中に欧米に追いつかなければという意識があり、また政治的なイデオロギーの対立があったため実現をみなかったが、現代の成熟した社会においては、アメリカのように法規制を緩和し大学の設立やその取扱いについて自由化・平等化を構造改革の中で検討すべきである。最近出された「遠山プラン」などを見ていると38答申の延長線上にあり、本来の方向性から言えば、「自由化」への検討が必要であると思う。
このように、高等教育が置かれている現状を見ると旧態以前とした取り組みが未だ続いていることに歯がゆさを感じずにはいられない。一方では、WTOによる外国大学の進出も予想され、ますます競争の激しい状況になるというのに。しかし、嘆いていてみても始まらない。自分の置かれている環境を見直しじっくり学びを続けて行きたい。
(浅沼 雅行)
闘将、星野・新監督のもとで46年ぶりの開幕4連勝の今年の阪神タイガース。熱闘、甲子園の春のセンバツは、4月3日、4強校が決定した。兵庫の報徳学園をはじめとする強豪校の進出に、関西FMICSのオールナイト参加直後の興奮が倍加した3月24日に聴いた、あるセミナーでの講演が現実のものとなっていることを確信した。 講師は、関西創価小学校の教諭で同校アンジェリック(フランス語で天使)・ブラスバンド顧問の田口秀男氏。テーマは「素晴らしき教育と人生と・・・」であった。氏は在日朝鮮人の方が多い夜間中学にて素晴らしい人の出会いの中で教員人生をスタート。後に荒れる中学校での苦悩を経て現職に就かれた。氏が指揮者を務めるアンジェリックは全国大会に何度も出場し常に上位に入賞、平成13年度は全国約2500校の小・中学校の中から5年ぶり2度目の日本一に輝き、「こども音楽コンクール」の文部科学大臣奨励賞を受賞した。
田口教諭は、クラブ顧問を通じての20年の心の中からの訴えを力強くなされた。常にトップクラスの学校集団は、2番目の集団と入れ代わることがない。トップクラスの共通点は3つ。一つ目に「基本があるか、基本を大事にしているか」。同校では通学時間が長い生徒が多く制約がある部活動の中、ブラスバンドの基本で根本であるロング・トーンの基礎練習(一つの音をできるだけ長く伸ばす)を20年前から徹底している。この練習は遠回りのようで近道であり、基本は力であるとの創立者からの言葉を実践している。二つ目には「持続は力、いかに持続しているか」。楽器の練習は日曜に一日休むと月曜には調子が狂う。生徒は楽器を持ち帰り日曜も練習をする。持続の最大のライバルは自分自身。一方、プロでなく勉学とのバランスが必要。生徒の練習成果は一気にレベルが上がる時と、いくらやっても上がらず遣り甲斐がなく励ましが必要な時がある。バケツに水を一滴一滴入れるような努力の結果、ある時に一気に溢れる。途中で止めたら永遠に溢れないことを子供達が持続という練習を通じて教えてくれた。三つ目に「よき指導者を持っているか」。向かい合う関係では教えられない。子は親の背を見て育つのとおり、指導者自身が学んでる姿を見て子供は学ぶ。学ぶは真似るからはじまる。真似るには手本がいる。手本(指導者)は間違ったらあかん。手本がいかなるものかが大事。そして、これら三つの共通点は一回限りの人生でも同じ。人生も壮大なコンクールであると締めくくられた後、氏は LET IT BE 、川の流れのように、母(山本伸一氏作詞)、MY WAY の4曲をピアノ演奏された。演奏曲は、講演の内容とぴったりと一致していた。
大学においても酒田短大の現状に象徴されるが如く、田口教諭が訴えられた3点を、いかに実践しているか否か、実践している大学のみが21世紀を担うことになる。そのはっきりとした姿は、3年後に現実のものとなるのである。
(小出 修嗣)
●競争的環境の中で個性が輝く大学であれという大号令(大学審議会21世紀答申)が出されて4年目。そして、総合規制改革会議が大学に鞭を打つがごとくに規制緩和を推し進める。18歳人口の減少の中、いよいよ大学が「勝ち組」と「負け組」という二極に分化しはじめた。●教育という単一商品を売らざるを得ない大学が、個性を簡単に打ち出せるのか否か。多くの大学人は明治この方到底勝ち目のないハイランクの大学をベンチマークしてきた。その一方で、受験者数の増減は、偏差値の+−5程度の大学と比較の中で一喜一憂している。●脱偏差値に一石を投じるカタチとしての多面的な大学ランキング。国際競争に打ち勝ちためにも、個性値ナンバーワン大学は沢山あるべきである。これからの日本を担う若者達のためにも、物見遊山、のぞき見的ではない「大学ランキング」について考えたい。●ゲストスピーカーには、この4月に刊行予定の朝日新聞社『大学ランキング』の編集総括の小林哲夫さんに登場いただきます。皆さまからはFMICS的ランキングのアイデアを期待しています。
【日時】 平成14年4月20日(土) 午後2時30分〜6時
【会場】 工学院大学新宿キャンパス 高層棟28階第4会議室
【スピーカー】 朝日新聞社『大学ランキング』 編集統括 小林 哲夫
【参加費】 会員:1000円 学生:500円 非会員:1500円
【申込先】 出光 直樹 idemitsu@obirin.ac.jp
●4月のYFN・名古屋FMICSは、先月に引き続き柳ヶ瀬学生村とFMICSの合同企画です。今年2月16日(土)に開催された30大学合同『柳ヶ瀬学生村フォーラム』に参加された東海地区「知的生産の技術研究会」(知研)代表加藤仁一さんのご紹介により、知研代表の八木哲郎さんをゲストにお迎えします。●学生村の元気が柳ヶ瀬商店の“賑わい”を呼び戻す。「柳ヶ瀬の活性化」のために柳ヶ瀬商店街の住人と学生がスクラムを組む。そんな楽しいACTIONのためのヒントをたくさんいただけるものと確信しています。皆さまにはお仲間をお誘いの上ご参加下さい。
《参考》「(特定非営利活動法人)知的生産の技術研究会」(知研)
梅棹忠夫先生(文化勲章受賞者)が書かれた「知的生産の技術」(岩波新書)に触発されて1970年に設立。以来25年間あまり、知的生産の技術の習得を目的に創造性開発、企画力の育成などの分野でセミナー開催、編集、出版などの活動を続けてきた。企画のユニークさと、驚くばかりの各界現役実力講師を集めることで有名。創立30周年を来年に控え、学会への衣更えを目指して活動中!
【日時】 平成14年4月21日(日) 午後2時〜3時30分
【会場】 岐阜市柳ヶ瀬本通り1丁目 柳ヶ瀬学生村
【ゲストスピーカー】 NPO知的生産の技術研究会理事長 八木 哲郎
【参加費】 社会人 1000円 学生 500円
【申込先】 YFN事務局 林 憲和 nhayashi@ha.shotoku.ac.jp
●FMICS Staff Development 略して 「SD」は、月例会とは別に、原則として第3週の水曜の夜に開催されている勉強会です。超競争時代をしたたかに活き抜くためにも、大学人一人ひとりの努力を束ねる場です。
(1)メディアチェック
あなたのアンテナが何かを感じた新聞・雑誌等の教育&経済トピックスを、切り抜いて持ちよりディスカッションします。トピックスは厳選して1件、A4縦判にコピー(15枚程度)して、氏名と簡単なMEMOを付してご持参ください。各自5分間程度のコメントをしていただきます。
(2)テーマを定めた継続的な勉強会
1997年度:国立教育研究所編『日本近代教育百年史』/1998年度:工学院大学と拓殖大学沿革史/1999年度前半:『戦後の大学論』/1999年度後半:中教審、臨教審、大学審等の「答申」/2001年8月から:『英国高等教育制度検討委員会(デアリング委員会)報告』(通称デアリングレポート)/2001年12月からは新企画がスタートしました。前日本私立大学連盟事務局長日塔喜一さんをアドバイザーとしてお迎えし、ご自身の著書『機会均等へ向けて』を読み込んでいきます。経常費補助金制度の誕生(昭和45年)以降の私学経営の軌跡をチェックします。
今月の講読範囲は『機会均等へ向けて』第1部第5章・p98〜p164です。
【日時】 平成14年平成14年4月17日(水) 午後6時30分〜8時30分
*今後の日程 平成14年5月22日(水)、6月19日(水)
【会場】 工学院大学新宿キャンパス 高層棟27階2710ゼミ室
*教室変更もありますのでご注意ください。
【コーディネーター】 桜美林大学 出光 直樹
【テキスト】 日塔 喜一『機会均等へ向けて』 開成出版
*日塔さんの紹介ということで定価3000円のところ2割引きで購入できます。
《申込先》 開成出版 03-5689-7654
【申込先】 出光 直樹 idemitsu@obirin.ac.jp
●「教育はサービスである」。この視点に立って大学輸出をアメリカはもくろんでいる。●昨年末、中国の加盟で話題をさらったWTO(世界貿易機関)。そのかげで、知られざる「貿易摩擦」が起きている。アメリカが、各国の高等教育を外国大学に会報するよう提案したのだ。れっきとした学位も認めろ。「護送船団方式」で保護されてきた日本の大学に、国際競争の大波が差し迫っている。−Yomiuri Weekly2002.3.17−●大競争時代と言われているわが国に対して黒船がやってくることになる。アメリカの大学がわが国の優秀な学生のたとえ5%でも囲い込めば、国内で優位に立っはずのトップ30大学の地位や影響力は決定的に下がってしまう。そして、この囲い込みが何年にも及べば、確実にわが国の教育力は落ち、日本沈没が現実のものになるはずである。●5月例会は、WTOと高等教育について詳細に取材をされた読売新聞の石塚公康さんをゲストにお迎えします。「大学関係者よ目覚めろ」というエールを送っていただきます。ご期待下さい。
【日時】 平成14年5月18日(土) 午後2時30分〜6時
【会場】 工学院大学新宿キャンパス
【発表者】 読売新聞記者 石塚 公康
●大競争時代。18歳人口が急減する今日、留学生の持つ意味が大きく異なってきています。定員確保のために、大量の中国人学生を受け受け入れざるを得ない大学が少なくありません。本来の目的である、国と国を知り、知的国際理解を深めるというカタチが根本的に歪められ、日本嫌いを作るために寄与(?)しているといっても過言ではありません。●5月例会でも取り上げるWTO問題も含めて、新しい時代の国際交流のカタチを多面的に考えます。●膝を交えて大いに語り、ゆったりと温泉に入り、翌朝はサクランボ狩りを楽しむ。人間力増進「湯ったり FMICS in YAMANASHI」にご期待下さい。
【日時】 平成14年6月15日(土)&16日(日)
月例会 14:00〜18:00 懇親会 19:30〜20:30 オールナイト 21:30〜 起床・朝食 8:00〜9:00 出発 9:30 サクランボ狩り 10:00〜11:30 昼食 12:00〜13:00 解散・甲府駅 14:00
【会場】 山梨学院大学 & 春日居温泉・日の出温泉ホテル
【発表者】 | 飯島 有美子 (関西国際大学) |
高橋 真義 (桜美林大学) | |
足立 寛 (進研アド) | |
大江 淳良 (メディアファクトリー常勤監査役) | |
司会 | 上條 醇 (山梨学院大学) |
【参加費】 月例会:1000円 宿泊費&バスツアー費:12000円
【申込先】 山梨学院大学 上條 醇 a-kamijo@ytos.ygu.ac.jp
*お早めにお申し込み下さい。
●FMICS SYMPOSIUM 2002 の日程が決まりました。今年は一人でも多くの皆さまにご参加いただきたく、8月のはじめに日程を変更いたしました。●生涯学習時代にあって、大学が活き活きとするためにも“まなびっと”のミッション・パッション・アクションをキリキリと束ねたいものです。
がスローガンとなります。●現在、SYMPOSIUM 企画委員会では、新しいプログラムを企画中です。詳細は5月号 FMICS BIG EGG にてアッピールさせていただきます。●8月3&4日は、フルオープンでご参加ください。スケジュールボードには、早速赤丸をお付け下さい。