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2002年7月のFMICS



優秀大学は優秀企業から

 「愚直に、まじめに、自分が分かる事業だけをやたら広げずに、きちんと考え抜いて、情熱をもって、取り組んでいる企業」が日本の優秀企業という(新原浩朗経済産業研究所研究員「動け!日本 日本の優秀企業研究 中間報告要旨」2002年6月)。去る6月21日に開催された第18回経済財政諮問会議での配付資料の結びである。この調査は、中長期にわたる利益率推移をもとに抽出された10企業の専ら経営能力面での成功要因を分析したものである。10企業とはキヤノン、花王、マブチモーター、任天堂、セブンイレブンなどである。

 成功企業の共通点は、次の6点である。

  1. 取り組む事業の範囲:分からないことは分けること(コンセプトを明快に説明でき、やらない・やめねばならない・やるべきことが明確で、社長が現場・現物・現実を体感)

  2. 論理的(ロジカル)であること:常識や他企業の成功例を無批判に受け入れるのではなく、自己についてきちんと考えて、考えて、考え抜くこと(常識を疑い、していることの理由を突き詰めて考察)

  3. 傍流の意味:自社を客観的に眺め、不合理な点を見つけられること(周辺から本社の中枢に戻り、抜本的に改革)

  4. 危機を企業のチャンスに転化すること(危機を千載一遇のチャンスにでき、その前提に社内に危機感を植え付ける文化を保持)

  5. 身の丈に合った成長を図り、事業リスクを直視すること(資本市場に邪魔されない自立性を保持)

  6. 経営者が持続性のある規律の文化を企業に埋め込んでいること(世のため、社会のために仕事をすることを大義に掲揚)

 以上から、冒頭の優秀企業のイメージを導き出し、新原研究員は「まっとうなもの」と結論づけている(要旨は内閣府ホームページに掲載)。しかも、これらの共通項は、@必ずしも成長中の先端業界ではなくても何らかの優秀なビジネスモデルを持てばよく、その意味では競争力は産業ではなく個別の企業の競争力である、A内需中心モデルによる企業もある、と言う。つまり、斜陽産業であっても、国際競争にチャレンジしなくても、マネジメントの力で競争力は高まるのである。

 「国が納税者に説明できるような質の高い仕事をしていないこと、そのために国民が納税して国を支えるというという意識をあまり持てないことの方が、個別の税制の問題よりも実は根が深い」

と、鈴木敏文イトーヨーカ堂社長は言う(日本経済新聞2002年5月11日朝刊「税をただす」)。定石どおり、国を大学に、納税者を学生・父母、税金を授業料に置き換えれば、現在の大学の閉塞感、経営能力の低さが浮かび上がる。「真っ当」とは「当たり前のことを当たり前にやる」というFMICSのベクトルと合致する。マネジメントが大学の優秀化を担う時代が来ってきた。

(山本 明正)



息苦しい大学改革は終わりにしよう(2)

Q1.シナリオ・プランニングの意図がわかりません

A1.先月号でシナリオ・プランニングとは3つの視点(楽観的・悲観的・現状維持)で将来像を紡ぎ出すと述べました。その意図を集約すれば「幅広い視野と柔軟な発想を持つこと」でしょう。

 現代の高等教育改革は「悲観的な見方」が支配的に映ります。「外圧を使って改革をする」というのが最たる例です。これまでの印象では、学外の情報に精通している上層部や教職員にかぎって自校へ厳しい評価を下しがちです。大学を取巻く変化を悲観的に捉え、それを感知していない教職員を批判していませんか?自分達の情報発信能力の未熟さや、学内の信頼関係の欠如を自省することも無しに(『7つの習慣』)。特に、上層部は組織風土に大きな影響力を与えています(『なぜ会社は変われないのか』)。勿論、その悲観論に基づいて課題を整理し、改善案が提示されれば良いのですが。

 さて、シナリオ・プランニングに戻り、2つの話題を例示しましょう。

@国立大学の独法化−悲観的な見方だと「私学滅亡の危機」(『国立大学民営化で300の私大が潰れる』)。楽観的に捉えると「私大のチャンス」。組織統廃合の難しさは民間の企業合併を参照すればわかります(例えば、みずほ銀行の失墜)。現状維持で考えれば「国大も私大も同じ環境に置かれ、両者に統廃合が起こり得る。」

AEラーニング−悲観的には「国内外の有名・大規模校がシステムやネットワークを拡大しつつある脅威」。楽観的だと「小規模校であっても、そのシステムを借用し、充実したコンテンツ作りに集中する」。現状維持では「EラーニングはMBAやITなど、あくまでもニッチ市場に留まる」。

 以上、中規模私大の立場から大雑把に捉えました。私の理想はシナリオ・プランニングを全学で実施することです。シナリオの題材をいくつか選び、それに関して全学の構成員が持っている情報を提供し合うのです。そうすれば、全学的な情報共有と危機意識の醸成、ひいては上層部の意志伝達も加速化するでしょう。それを実施するためには上層部で大学の理念を明確に打ち出し、組織内の信頼関係を高める努力も必要です。

Q2.学長室ではどのような仕事をされていますか。

A2.今は学長の公約に沿った企画を練っている段階です。どんな改革を実施するにせよ、上層部がどのように外部環境を捉え、自分達がどこへ向かっているのかという意思表示が欠落したままでは組織が混乱するだけです(『ミッション・マネジメント』など)。しかし、その議論と情報発信を進めるのが難しい。これから実際にワーク・ブックなどを使って少しずつでも始めていければと考えています。

(本田 寛輔: 大東文化大学 学務課学長室担当)
※本稿は組織の意見を代表するものではありません



FMICS7月例会(第439回例会)

●大学の土地と建物は価値がない。相当昔から言われ続けていたに違いない。ただ、大学が売り手市場を謳歌していたがためにこのことは表面化しなかったのだ。今や大学は不況業種で、倒産があいつぐのではないかと危惧されている。美しいキャンパスだからといって、もう銀行はそれを担保にはしない。中国地方のある大学のキャンパスはは、郊外ではあっても駅前であった。しかし、運転資金を銀行から融資してもらえず、事実上倒産した。●価値はないのか。否、価値はある。土地があれば建物を建てたくなる建物症候群的マネジメントではカネは生まれない。発想を変えれば、大学資産の活き活き活用は可能である。●今月は「大学土地活用」最新戦略の緊急レポートです。皆さまにはお仲間をお誘いの上ご参加下さい。

【日時】 平成14年7月13日(土)午後2時30分〜6時

【会場】  工学院大学新宿キャンパス  4階 0477教室

【テーマ】 緊急レポート  大学土地活用/活き活き13の戦略

【発表者】 清水建設不動産開発プランナー 阪部 俊行
  武蔵工業大学管財部 柳生 修二

【参加費】 会員:1000円  学生:500円  非会員:1500円

【申込先】 出光 直樹 idemitsu@obirin.ac.jp




FMICS SD 131

●FMICS Staff Development 略して 「SD」は、月例会とは別に、原則として第3週の水曜の夜に開催されている勉強会です。超競争時代をしたたかに活き抜くためにも、大学人一人ひとりの努力を束ねる場です。

(1)メディアチェック 
 あなたのアンテナが何かを感じた新聞・雑誌等の教育&経済トピックスを、切り抜いて持ちよりディスカッションします。トピックスは厳選して1件、A4縦判にコピー(15枚程度)して、氏名と簡単なMEMOを付してご持参ください。各自5分間程度のコメントをしていただきます。

(2)テーマを定めた継続的な勉強会
 1997年度:国立教育研究所編『日本近代教育百年史』/1998年度:工学院大学と拓殖大学沿革史/1999年度前半:『戦後の大学論』/1999年度後半:中教審、臨教審、大学審等の「答申」/2001年8月から:『英国高等教育制度検討委員会(デアリング委員会)報告』(通称デアリングレポート)/2001年12月からは新企画がスタートしました。前日本私立大学連盟事務局長日塔喜一さんをアドバイザーとしてお迎えし、ご自身の著書『機会均等へ向けて』を読み込んでいきます。経常費補助金制度の誕生(昭和45年)以降の私学経営の軌跡をチェックします。

【日時】 平成14年7月24日(水) 午後6時30分〜8時30分

  *今後の日程 8月21日(水)

【会場】  工学院大学新宿キャンパス 高層棟27階2710ゼミ室

*教室変更もありますのでご注意ください。

【テーマ】 21世紀の大学の原理原則を探る
       経常費補助金制度の誕生−8−

【コーディネーター】 桜美林大学 出光 直樹

【テキスト】 日塔 喜一『機会均等へ向けて』 開成出版
       *日塔さんの紹介ということで定価3000円のところ2割引きで購入できます。
       《申込先》 開成出版 03-5689-7654

【申込先】 出光 直樹 idemitsu@obirin.ac.jp



速報 8月のFMICS YFNシンポジウム

●やっとかめやなもFMICS名古屋( YFN )の《学びのカタチ》を束ねる恒例の第16回YFNシンポジウムをご案内します。●詳細は Big Egg 8月号でご案内します。

【日時】 14年8月31日(土)&9月1日(日)

【テーマ】  全員先生全員生徒の学舎を創ろう YFN 2002
       集まれ 活き活き一所懸命“まなびっと”たち

【プログラム】

●シンポジウム 岐阜聖徳学園大学 羽島キャンパス本館 午後1時開始

  開会の挨拶 FMICS名古屋副会長・岐阜聖徳学園大学教授 坂井田 節

  歓迎の言葉 岐阜聖徳学園大学学長 北畠 典生

 講師陣

  産官学の経験をとおした・夢工学と悪夢工学
        岐阜県理事/法政大学IT研究所大学院教授 川勝 良昭

  逆転の発想による我が経営学
        昭和コンクリート社長/シティーFM社長 村瀬 恒治

●夕方の部 懇親会 鵜飼1300年記念長良川鵜飼観賞 

●夜の部 名刹浄土院にて 琵琶とインド古典楽器サントゥールの鑑賞

●オールナイトYFN

 柳ヶ瀬 今昔物語 前岐阜新聞論説委員長 三輪 宏道

 活き活き まなびっと1 前早稲田大学副総長 村上 義紀

 研究会参加者全員発表   24時〜朝まで

●翌日・9/1

 朝の茶(浄土院井中庵)

 観光 岐阜散策 岐阜公園・岐阜城・金華山登山

 昼食 漬け物懐石・ギャラリーなうふ コーヒー&抹茶あり

 「異聞.岐阜の歴史考」 一生まなびっと91才の郷土史家神田先生

*解 散 JR岐阜駅 16時


【申込&問い合わせ先】

 高等教育問題研究会名古屋支部事務局 nhayashi@ha.shotoku.ac.jp