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2002年8月のFMICS



規制緩和には大学観緩和を

 「行政の関与が強い分野を『官製市場』と呼び、民間への市場開放を提言した。刑務官や学校給食、税徴収など64の事業・事務を例示し『民間でできるものは官は行わない、との基本理念を確立すべきだ』とした。関係省庁などの抵抗が根強い病院や学校、農業への株式会社参入についても『2002年度中に検討・措置』と明記。年末の答申に向け調整が難航することも予想される」(日本経済新聞2002年7月24日朝刊)。総合規制改革会議が首相に提出した規制改革推進の第2次答申の中間とりまとめでは、病院、学校などの各分野への株式会社の参入を新たに認めた。年末に本答申が提出される予定である。

 大学設置基準の大綱化以降、10余年にわたる護送船団の解体作業が大詰めを迎えつつある。この解体作業では、設置基準の大綱化から、近年の21世紀答申に端を発する諸答申・報告までは、主として教育・研究のソフト部門を対象としていた。その後は、国立大学の疑似私学化としての国立大学法人化、校舎面積にもとづく設置認可への方針変更、今回の株式会社の教育参入などが提起され、設置形態に関わるハード部門に切り込んでいる。この両部門の規制緩和によって、新制大学は事実上の歴史的な役割を終えたことになろう。それは、日本経済のグローバル化への対応であり、自立化に向かう日本社会の変化と密接に関係している。

 「『規制緩和』は、deregulation の訳であるが、『規制』(regulation)の前についている de は分離、除去を表す接頭辞なので、本当の意味は『規制撤廃』である」と、同僚は言う。また、中間とりまとめでは「『事前規制』中心の社会から今後は『事後監視・監督』中心の社会に移行すべき」(同紙)ことを提言している。とすれば、規制改革は進みこそすれ、現状に止まる保証はどこにもない。現在の「学校法人大学」には3つの特権が与えられている。@学位授与権、A免税権、B国庫助成交付権である。このうちの、@とBは「株式会社大学」にも与えられることになろう。残るAについては、学校法人大学から剥奪されるか、株式会社大学に付加されるかが考えられる。これらの3特権を独占できなくなった時に、学校法人大学の競争力はどうなるのだろうか。

 今回の答申は、大学令による旧制大学、学校教育法による新制大学と同様に、わが国の大学史において画期をなすものであろう。競争環境の根本的な変化と見なしても誇張ではない。私立大学にとっては、18歳というマーケット自体の変化に加え、競争優位に立つ国立大学法人との競争、経営ノウハウ豊富な株式会社大学との競争の時代を迎える。競争政策の陣頭指揮を執るマネジメントの判断ひとつが経営そのものに大きな影響を与え、ひいては存立への致命傷にもなりかねない。そして、そのマネジメントを支えるのは、新しい時代の到来を予感した、一人ひとりの教職員、学生、卒業生の意思と行動にほかならない。

(山本 明正)



西洋化しきれない日本の、アメリカ・モデルを
目指す大学改革(今度こそ本物になれるか?)

 8月5日に出された『大学の質保証にかかる新たなシステムの構築について』(答申)の中で、特に私立大学の収容定員の自由化に恐怖を感じた。中でも次の2点で不安が過った。1)パートタイム学生と絡めてどのような運用が考えられるのか、2)教員任期制と連動させたら・・・。特に後者は深刻で「あなたは今年でクビです」や「来年から別の学科で教えることができませんか?」と誰かが言わなければならない。これらの課題を、民間手法の導入と学長リーダーシップの強化で解決しろというのだろうか。

 シラバス、セメスター制度、FD、これまで様々なアメリカの手法を導入しようと試みてきたが、現実に効果を上げただろうか(天野郁夫「片仮名まじりの大学改革」『大学改革のゆくえ−模倣から創造へ』)。先にあげた1)では、アメリカのFTEの概念を導入する必要がある。2)は日本の伝統的な学長選挙の見直しが急務である。  アメリカのように全国規模で候補者(学内者に限らない)を募り、教員、事務職員、学生、同窓生の各団体に公約を発表する場を設け、選挙を実施するのである。

 日本とは次元の違う厳しさだ。

 日本の大学は「グローバル」など恥ずかしくてとても言えない。7月25日に大学基準協会が「国際的に通用しうる高等教育の質的保証」の国際シンポジウムを開催した。最後に、アメリカ代表のLenn女史(WTOサービス貿易の自由化にも絡んでいる『読売Weekly02.3.17』)が「このシンポジウムで通訳機を使わずに話が聞けて、発表スライドの英文が読めた方は何人いますか?」と聞かれた。日本をコケにされ、私は悔しくて仕方が無かった。7月に開かれた日本の国立大とイギリスの大学の学長が会したワークショップでも同じような光景があった。イギリス側の学長が「さて、それではこれから起こり得る変化にどのように対応するのか戦略的に考えてみましょう」と提案した。それも虚しく、日本の国立大の学長は「文科省が明確な条件を提示していない」の一点張り。ちなみに、日本側の出席者はイギリスの学長選考の方法を把握していたのだろうか?ワークショップ終了後にイギリスの学長に直接聞いてみたら「え、教員による学長選挙?そんなものあるわけないよ」とのこと・・・。

 我々がアメリカ・モデルを目指すのであれば、こんな議論もしてみたい。「日本の大学における教職員や役職者の男女比をどのように改善するのか?」

(本田 寛輔: 大東文化大学 学務課学長室担当)
※本稿は組織の意見を代表するものではありません

 追伸:玉川大学出版や東信堂などから出版されている西洋人著者の文献を精読することをお勧めする。



ご案内 第16回 YFN やっとかめやなもFMICS名古屋 シンポジウム
(第441回例会)

 やっとかめやなもFMICS名古屋(YFN)の“まなびっと”を束ねる恒例の第16回YFNシンポジウムをご案内します。

 まずは、聖徳学園岐阜教育大学でのシンポジウムです。懇親会は長良川での鵜飼い観賞とともに乾杯。はじめてのオプション企画は夜の柳ヶ瀬探訪。名刹浄土院にて琵琶とインド古典楽器サントゥールの鑑賞に続いて、オールナイトYFNがはじまります。翌日の岐阜観光は特別ゲストによる講話もつきます。今年も岐阜は盛りだくさん。お仲間をお誘い下さい。心からお待ちしています。


【日時】 平成14年8月31日(土)午後1時〜9月1日(日)午後4時

【会場】
     シンポジウム: 岐阜聖徳学園大学 羽島キャンパス 本館8階会議室
         羽島郡柳津町高桑2078  TEL 0582-79-0804

     オールナイトYFN: 浄土院
         岐阜市東駒爪町16  TEL 0582-64-0389

【テーマ】  全員先生全員生徒の学舎を創ろう YFN 2002
       集まれ 活き活き一所懸命“まなびっと”たち

【プログラム】

●シンポジウム: 午後1時〜3時30分

 【開会の挨拶】 FMICS名古屋副会長・岐阜聖徳学園大学教授 坂井田 節

 【歓迎の言葉】 岐阜聖徳学園大学学長 北畠 典生

 【講演】「産官学の経験をとおした・夢工学と悪夢工学」
         岐阜県理事/法政大学IT研究所大学院教授 川勝 良昭

 【講演】「逆転の発想による我が経営学」
         昭和コンクリート社長/シティーFM社長 村瀬 恒治

  <コーディネ−ター> FMICS代表/桜美林大学学長補佐 高橋 真義

●夕方の部: 夕方6時〜8時

 【懇親会】 鵜飼1300年記念長良川鵜飼観賞
  *長良川古典鵜飼再生の会事務局長の解説と歌舞音曲あり

●夜の部: 夜8時30分〜10時

 【柳ヶ瀬探訪】(オプション1 2 3 4 5)

●琵琶とインド古典楽器サントゥールの鑑賞の部: 夜10時〜11時

 名刹浄土院にて

●オールナイトYFN: 深夜0時〜朝

 「柳ヶ瀬 今昔物語」 前岐阜新聞論説委員長 三輪 宏道

 「活き活き まなびっとNo.1」 前早稲田大学副総長 村上 義紀

 【研究会参加者全員発表】

●翌日・9月1日

 朝の茶 浄土院井中庵

 岐阜散策 岐阜公園・岐阜城・金華山登山

 昼食 漬け物懐石 駒屋佐介

 柳ヶ瀬学生村講演と抹茶

 「異聞.岐阜の歴史考」 一生まなびっと91才の郷土史家 神田 美一

●解散 JR岐阜駅 午後4時



【参加費】 昼の部のみ:1,000円  夜の部まで:15,000円  両日:20,000円

【申込&問合先】 高等教育問題研究会名古屋支部事務局 nhayashi@ha.shotoku.ac.jp

【お願い】 オールナイトYFNの参加者には、5分間以内のスピーチをしていただきます。スピーチの内容をA4縦判(様式自由)のメモにして、当日コピーを30部程度ご用意ください。



FMICS SD 132

●FMICS Staff Development 略して 「SD」は、月例会とは別に、原則として第3週の水曜の夜に開催されている勉強会です。超競争時代をしたたかに活き抜くためにも、大学人一人ひとりの努力を束ねる場です。

(1)メディアチェック 
 あなたのアンテナが何かを感じた新聞・雑誌等の教育&経済トピックスを、切り抜いて持ちよりディスカッションします。トピックスは厳選して1件、A4縦判にコピー(15枚程度)して、氏名と簡単なMEMOを付してご持参ください。各自5分間程度のコメントをしていただきます。

(2)テーマを定めた継続的な勉強会
 1997年度:国立教育研究所編『日本近代教育百年史』/1998年度:工学院大学と拓殖大学沿革史/1999年度前半:『戦後の大学論』/1999年度後半:中教審、臨教審、大学審等の「答申」/2001年8月から:『英国高等教育制度検討委員会(デアリング委員会)報告』(通称デアリングレポート)/2001年12月からは新企画がスタートしました。前日本私立大学連盟事務局長日塔喜一さんをアドバイザーとしてお迎えし、ご自身の著書『機会均等へ向けて』を読み込んでいきます。経常費補助金制度の誕生(昭和45年)以降の私学経営の軌跡をチェックします。

【日時】 平成14年8月20日(火) 午後6時30分〜8時30分

  *日程が変更になっていますのでご注意下さい。

【会場】  工学院大学新宿キャンパス 高層棟27階2710ゼミ室

*教室変更もありますのでご注意ください。

【テーマ】 21世紀の大学の原理原則を探る
       経常費補助金制度の誕生−9−

【コーディネーター】 桜美林大学 出光 直樹

【テキスト】 日塔 喜一『機会均等へ向けて』 開成出版
       *日塔さんの紹介ということで定価3000円のところ2割引きで購入できます。
       《申込先》 開成出版 03-5689-7654

【申込先】 出光 直樹 idemitsu@obirin.ac.jp



速報 9月のFMICS

●9月のFMICSはユニークな新企画です。いよいよ「全員先生全員生徒の学び舎」創りの第一歩を踏み出します。新宿・工学院大学では小さなアクション「あったかさの3分間自己紹介」を体験していただきます(今月の巻頭言をお目通しください)。●そして、葉山で夜を徹して語り合う秋のオールナイトFMICSは、桜美林大学大学アドミニストレーション専攻高橋真義自主ゼミの皆さんとの合同プログラムといたします。懇親会のあとは、アドミニストレーターを目指すあなたにはぜひとも実践していただきたい「一日先生プログラム」のスキームを参加者全員でワイワイガヤガヤと考えます。●午後11時からは、若い大学人のあなたに「30分間“まなびっと”宣言」をお願いいたします。4人のスピーカーは公募いたします。●できれば、今後このカタチをFMICS定番プログラムにしたいと思います。皆さまにはたくさんの知恵をお貸しください。

【日時】 平成14年9月28日(土)&29日(日)
        ・あったかさの自己紹介: 午後2時〜4時
        ・合宿FMICS: 午後6時〜翌午前9時

【会場】
あったかさの自己紹介 工学院大学新宿キャンパス
合宿FMICS 中央大学葉山寮
神奈川県三浦郡葉山町堀内86 TEL 0468-75-0009

《交通》 東京駅→JR横須賀線(約1時間)→逗子駅
→海岸廻り葉山行きバス(15分)→鐙摺(あぶずり)
→徒歩(5分)→中大葉山寮
*JR逗子駅からタクシー(約10分)

【テーマ】 全員先生全員生徒の学び舎に集まれ
  あったかさの自己紹介とあなたも1日先生プログラム

コーディネーター桜美林大学学長補佐高橋 真義
桐朋学園大学管財課長布施 芳一
中央大学市ヶ谷キャンパス河原 卓巳

【参加費】 自己紹介 会員:1,000円 学生:500円 非会員:1,500円
       懇親会&宿泊 10,000円

【参加条件】 9月例会の参加者には、@「あったかさの3分間自己紹介」のご用意をお願いします。A合宿の参加者には、800字程度で MY FMICS をお書きいただきます。「1日先生プログラム」のスキーム(案)とアイデアの募集については、9月号の BIG EGG にご案内いたします。

【申込先】 宿泊参加者は、定員になり次第締め切らせていただきます。9月2日(月)までに、高橋真義 shingi@obirin.ac.jp まで直接お申し込み下さい。