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2002年9月のFMICS



改革の体制づくり

 「これまで旧郵政省関連の人事は、事務方が決め、自民党郵政族の主要幹部に事前説明するのが慣例だった。しかし今回、首相は親しい山崎拓幹事長ら自民党首脳にも根回しをせず、候補者への打診も含めて自ら直接、人選に当たった。首相周辺は『郵政族がいくら抵抗しても官邸主導で民営化を断行するという姿勢を示したものだ』と解説する」。(日本経済新聞2002年9月2日朝刊)

 小泉首相は、組閣における数人の意外人事にはじまり、ときどき国民にわが道を貫く決断を見せてきた。今回は、自らの持論、政策のシンボルとも言える財政投融資の抜本見直しの前提となる郵政民営化に向け、日本郵政公社初代総裁に商船三井の生田正治会長を指名した。

 しかし、「首相は民営化の実現のため近い将来に関連法案を国会に提出する意向を示しているが、与野党内では民営化に慎重な議員が多数を占めており『民営化法案が成立する見通しはほとんどない』(与党幹部)のが実情だ」。(同紙)

 行政府と議会の対立は、政治的なグローバル・スタンダードとなっている三権分立主義では避けては通れない問題である。議院内閣制を採るわが国では内閣と与党の関係は、分立がよりはっきりしている大統領制よりも複雑な関係にある。現在の、ほとんどの大学における意思決定もこの議院内閣制と同じ統治構造を持っている。行政府としては、学長・学部長を教授団のなかから選挙によって選出するというプロセスを持ち、特に教学上の問題は、議会としての教授会あるいは教員がメンバーとなった会議体によって合議していく(しかし、往々にして多数決制は採られていない)。

 行政府は統治の執行責任を持つ一方で、議会は個々の議員とその支持母体の既得権益維持を優先した価値判断を行いがちになる。ことに構造変革が求められる時代における官邸と族議員の対立は小泉内閣の出現によって、かつてより鮮明化された。では、郵政民営化問題に官邸はどう対処しようとしているのか。

 「首相が後ろ盾とはいえ、外部出身の生田氏にとって二十九万人の現業職員を抱える公社の改革は容易ではない。首相のブレーンである田中秀征元経済企画庁長官は八月『トップだけ民間人では組織内で孤立する』と首相に進言した」。(同紙)首相は、副総裁2人、理事16人、監事3人に多数の民間人を起用する方針を打ち出した。

 さらに、「来春までに改革の実働部隊となる総裁直属の『参謀本部』的組織を作る考え」。(同紙)

 トップマネジメントをチームで行うこと、改革のためのイノベーション・チームを新設することを予定しているようだ。大学においては、学長・学部長の補佐体制、執行組織とは別の改革チームの編成、そして、田中氏のような組織外のブレーンの存在(これは足立さんも指摘)ということになろうか。アクションのタネはベンチマークからはじまりそうだ。

(山本 明正)



国立大学の法人化で

 9月1日,全国的にも注目を集めた長野県知事選挙が行われ,県議会の不信任決議により失職した田中康夫氏が圧勝した。この結果から,時代が求めている知事像として,行政のリストラを新たな政策の展開に結びつけるため,その方向性を大胆に示すことができる地方政治家(「政策起業家」と呼ぶ)が浮かび上がり,全国に先駆けて斬新な政策を「つくる」ことと並んで,その財源確保のため古い政策を「こわす」選択も重要になると言われている(片岡正昭慶応大助教授 朝日新聞2002年9月6日朝刊)。地方行政と大学運営は,知事を学長に置き換えて考えてみると,よく似ているのではないだろうか。

 平成16年度の独立行政法人化に向け,各国立大学は,「中期目標・計画」の作成にはいっている。法人化後は大学の裁量が拡大するため,学長のリーダーシップのもと,人事制度や組織運営,予算配分等で大学の独自性を発揮することが期待されているが,先行独法では,名前を変えただけで中身は従来の国家公務員と同じ俸給表による給与体系との話も聞く。各国立大学が,それぞれに「中期目標・計画」に工夫を凝らし,諸制度を整えたとしても,拠り所となる基本的な部分が同じである以上,結果的には大差がつかない可能性も否定できない。

 では,どこで独自性を発揮しろと言うのか。再び長野県知事選の記事に戻ってみると,「政策起業家」型知事の,政策実現のための手法が大きく2つのグループに分けて紹介されている。1つは,まず行政改革や職員の意識改革などのソフトな手法で始めるグループ。県警の情報公開や福祉政策などで知られる宮城県の浅野史郎知事などがこのグループに入る。もう1つは,目に見える形で重要な政策転換の決断を下すハードランディングの手法を取るグループで,田中康夫長野県知事が典型的な例として挙げられている。大学の場合なら,学長の政策手法,これは案外大学の独自性となる要素かもしれない。そしてその手法実現のためには,教職員のバックアップが欠かせないのは言うまでもないが,住民不在では地方行政が成り立たないように,学生の存在も重要だろう。学生は「顧客」「商品」などではなく,一緒に大学をつくっていく自分達の「仲間」と考えるべきではないだろうか。

 既に言われているように,高等教育も世界規模での競争の時代を間近に控え,国公私立を問わず,大学の「政策」が今まで以上に問われるようになる。それは新たに「つくる」場合もあれば,思いきって「こわす」場合もあり,大学構成員の意識改革なくしては実現できない。つまるところ,改めて言うまでもなく,今後は教職員の誰もが,常に考え,その時々の状況に主体的に対応できるよう,自分の能力を高めていかなければならないということではないだろうか。

(東京農工大学 清水 聖子)



ご案内1 FMICS9月例会 (第442回例会)

●9月のFMICSはユニークな新企画です。いよいよ「全員先生全員生徒の学び舎」創りの第一歩を踏み出します。新宿・工学院大学での小さなACTIONの口火は、鼎談「あったかさの自己表現のカタチを語る」ではじまります。そして、参加の皆さまには「あったかさの3分間自己紹介」を体験していただきます(BIGEGG2002年8月号の巻頭言をお目通しください)。勿論、キッチリと仲間からジャッチメントされます。あなたがアドミニストレーターを目指すならば、自分は勿論部下が素敵な自己表現ができるように指導すべきであること、知識を知恵に変えていくための人間力の必要性を確認したいのです。ワイワイガヤガヤかなりFMICS的になることでしょう。ちなみに、来年のシンポジウムのキーワードの案は「元気元気元気FMICS人2003」です。●そして、葉山で夜を徹して語り合う秋のオールナイトFMICSは、桜美林大学大学アドミニストレーション専攻真義自主ゼミの皆さんとの合同プログラムといたします。懇親会のあとは、教学がわかるアドミニストレーターを目指すあなたには必ず実践していただきたい「一日先生カリキュラム」のスキームを参加者全員でワイワイガヤガヤと考えます。皆さまにはたくさんの知恵をお貸しください。●午後11時からは、若い大学人のあなたに「30分間“まなびっと”宣言」をお願いいたします。

 参考
《真義ゼミの学びの目標》

 学びの最終到達目標は、教学がわかるアドミニストレーターとしての識見を「学会」で報告出来ること、科研費研究協力員となりうる実力を身に付けることである。教えることを体感する「一日先生カリキュラム」はゼミ生必須とする。

《「一日先生カリキュラム」実施計画書(案)》


【日時】 平成14年9月28日(土)&29日(日)
        ・あったかさの自己紹介: 午後2時〜4時
        ・合宿FMICS: 午後6時〜翌午前9時

【会場】
あったかさの自己紹介 工学院大学新宿キャンパス 低層棟4F 0477番教室
*地下1階から高層用エレベーターで2階まで上がり、さらに階段で4階まで昇ってください。中扉がありますがそこを通り抜けて、突き当たりの右のゼミ室が会場です。
合宿FMICS 中央大学葉山寮
神奈川県三浦郡葉山町堀内86 TEL 0468-75-0009

《交通》 東京駅→JR横須賀線(約1時間)→逗子駅
→海岸廻り葉山行きバス(15分)→鐙摺(あぶずり)
→徒歩(5分)→中大葉山寮
*JR逗子駅からタクシー(約10分)

【テーマ】 全員先生全員生徒の学び舎に集まれ
  あったかさの自己紹介とあなたも1日先生プログラム



鼎談 あったかさの自己表現のカタチを語る
桜美林大学学長補佐高橋 真義
桐朋学園大学管財課長布施 芳一
医療法人順心会冨岡 幸恵
実習 あったかさの3分間自己紹介 参加者全員


「一日先生カリキュラム」のスキーム考
イントロデュース高橋 真義
「30分間“まなびっと”宣言」パネラー
桜美林大学大学院生安田 馨
清泉女子大学図書館河野 香織
中央大学附属高等学校小池 英雄
白梅女子短期大学図書館高木 史
司会 中央大学市ヶ谷キャンパス総合事務室 河原 卓巳
東京農工大学学生課清水 聖子

【参加費】 自己紹介 会員:1,000円 学生:500円 非会員:1,500円
       懇親会&宿泊 10,000円

【参加条件】 9月例会の参加者には、@「あったかさの3分間自己紹介」のご用意をお願 いします。A合宿の参加者には、800字程度でMYFMICSをお書きいただきます。「1日先生カリキュラム」についてはアイデアをご提供くださいますようお願いいたします。

【申込先】 宿泊参加者は、定員になり次第締め切らせていただきます。9月17日(火)までに、高橋真義 shingi@obirin.ac.jp まで直接お申し込み下さい。



ご案内2 YFN9月例会 (第443回例会)

 YFN9月例会(開催日は10月5日ですが)は、いよいよ柳ヶ瀬学生村の1年の仕込みの末、実現するヨサコイソーラン岐阜版とも言うべき「第1回ハートピア祭り」です。YFNメンバーもスタッフとなり活躍します。また、高知県知事賞や岐阜県知事賞や岐阜市長賞の審査には、既報とおり、今年、YFNで発表いただいた知研の八木理事長が審査員として、東京から駆けつけていただきます。40〜50チーム、1000人〜1500人を集め、岐阜の大学を、岐阜の街を元気にすべく、岐阜県下の学生が手をつなぎ、岐阜市を岐阜県を商店街を巻き込み、盛大な祭りをとがんばっています。乞う、ご期待。

第1回ハートピア祭り実施概要

テーマ
「若者の力!、地域を越えて北海道・東京・高知・名古屋・岐阜、世代を越えて、地方文化の交流を」

実施日時  2002年10月5日(土) 11時〜17時

行事概要
 北海道・東京・高知・名古屋を中心に活躍している「よさこい踊り」チームが岐阜で集結して、地域間・世代間交流をし、岐阜市民県民に躍動するパワー「よさこい踊り」の醍醐味を味わってもらい、岐阜の元気を創出する。運営は柳ヶ瀬学生村の学生とボランティアスタッフが行う。

踊りスケジュール
 11:00〜17:00 金公園
 14:45〜15:45 金華橋通り
 12:00〜14:30 柳ヶ瀬本通り
 11:30〜16:00 高島屋前ワクワク広場
 12:00〜13:00 玉宮通り



FMICS SD 133

●FMICS Staff Development 略して 「SD」は、月例会とは別に、原則として第3週の木曜の夜に開催されているゼミナール型の勉強会です。超競争時代をしたたかに活き抜くためにも、大学人一人ひとりの努力を束ねる場です。

(1)メディアチェック 
 あなたのアンテナが何かを感じた新聞・雑誌等の教育&経済トピックスを、切り抜いて持ちよりディスカッションします。トピックスは厳選して1件、A4縦判にコピー(15枚程度)して、氏名と簡単なMEMOを付してご持参ください。各自5分間程度のコメントをしていただきます。

(2)テーマを定めた継続的な勉強会
 1997年度:国立教育研究所編『日本近代教育百年史』/1998年度:工学院大学と拓殖大学沿革史/1999年度前半:『戦後の大学論』/1999年度後半:中教審、臨教審、大学審等の「答申」/2001年8月から:『英国高等教育制度検討委員会(デアリング委員会)報告』(通称デアリングレポート)/2001年12月からは新企画がスタートしました。前日本私立大学連盟事務局長日塔喜一さんをアドバイザーとしてお迎えしてご自身の著書『機会均等へ向けて』を読み込み、経常費補助金制度の誕生(昭和45年)以降の私学経営の軌跡をチェックしました。
 なお、今月からはメディアチェックに専念し、2003年度開始予定の政策提言プロジェクト(仮称)への準備にあてます。

【日時】 平成14年9月18日(水) 午後6時30分〜8時30分

今後の予定 10月23日、11月13日

【会場】  工学院大学新宿キャンパス 高層棟27階 2710ゼミ室

*教室変更もありますのでご注意ください。

【テーマ】  ポリシーマインドを磨こう
       高等教育・経営政策ゼミナール −1−

【申込先】 桜美林大学 出光 直樹 idemitsu@obirin.ac.jp



速報 10月のFMICS

 10月のFMICSは、前早稲田大学副総長・本物の大学アドミニストレーター村上義紀さんがゲストスピーカーです。「アメリカの大学と日本の大学/学生支援事情」(仮題)をテーマに先般の岐阜シンポオールナイトでは聴けなかったホットなアメリカの今を語っていただきます。 皆さまには今すぐスケジュール登録ください。

【日時】 平成14年10月19日(土) 午後1時30分〜6時

【会場】 工学院大学新宿キャンパス

【テーマ】 アメリカの大学と日本の大学 / 学生支援事情

【講師】  前早稲田大学副総長・退職金財団理事 村上 義紀