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2002年10月のFMICS



大学の社会的責任を果たすために

 「信頼できる企業」認定、衝撃的なタイトルがさる9月20日、日経新聞夕刊1面に躍っていた。アメリカのエンロン、日本の日ハム、東電などで情報隠蔽や不正経理等、企業不祥事が広がる中、企業の信頼回復を目指す国際的な枠組み作りが始動するとの内容だった。品質管理などの国際規格で知られる国際標準化機構(ISO)が、法令順守や情報公開など内部管理体制の規格を作成、2年後にも発効させる。記事は以下のとおり続く。「ISOは28日の理事会で、企業の社会的責任に関する新規格作りに乗り出すことを決める。企業が法令順守、消費者保護、消費者保護、人権尊重などのため、どのような組織・人事体制を築き、どんな社内手続き・情報公開手法を取ればいいのか詳細な指針を示す。ISOは審査・認定のための第三者機関を指定、こうした指針に沿って社内管理体制を築いている企業を認定する。例えば情報公開手法では、経営トップが決めた方針は報告書やインターネットなど誰でも入手できる形で公開することを義務付ける。緊急事態や不正行為が起きた場合に、どのように顧客や株主、行政機関に情報を伝えるかの指針も示す。社員の異動などで左右されないよう管理体制の詳細や手順を分かりやすい文書としてマニュアル化することも求める見通し」

 ISO規格では品質管理規格の「ISO9000」や環境保全規格「ISO14000」シリーズが既に知られている。ISO14001の日本企業の取得件数は本年6月末で9467件になる。大学にも14001取得は普及し、武蔵工業大が先駆けて取得して以来、法政大、早稲田大をはじめ、数大学が取得済である。ISOの基本は「Plan, Do, Check, Action」の実行、いわゆるPDCAサイクルを回していくことである。

 現在、大学評価は設置認可の事前規制から第三者評価の事後評価に移行しようとしている。さる8月に答申された中教審答申は国の認証を受けた民間の評価認証機関が大学の評価を行うことができる旨、提言している。大学評価・学位授与機構、大学基準協会で行われている現行評価制度との関連はどうなるのか、気になるところである。ISO自体は経営についての審査・認定であるので、教育・研究を使命とする大学全ての部門に適用できないが、経営の透明性を担保する手段として有効であり、他の評価制度と組合わせれば十分に活用できるのではないかと思う。

 昨今、入学辞退者の学費返還請求に見られるように、社会の大学に対する目は厳しさを増している。某大学では合格前に受験生父母から多額の寄付金を受取り、その不明朗性が指弾され、補助金の返還を含む措置を受けている。今後徹底した情報公開などのアカウンタビリティを果たすことは大学にとって避けられない。ISOがそのための一助になればと願う。

(金田 淳一)



依りすがりの大学

 「個人が、企業が、地域が、自ら智恵を出し、心身を労して独り立ちし『皆依りすがる人のみ』の日本にしないことが、構造改革の核心だと思う。『依りすがり』のシステムを守ろうとする人々が、抵抗勢力なのだ」。(日本経済新聞2002年9月15日朝刊「中外時評」)

 その「依りすがり」の例として、以下が挙げられている。

 冷戦の下での茶番劇ともいえる55年体制、バブル経済までの右肩上がりの経済成長に支えられて、高度成長後の戦後日本はいつの間にか「依りすがり」体制になってしまっていたようだ。

 それは、大学も例外ではない。

 大衆化時代にあってエリート型システムを色濃く残した大学モデル、高度成長下でプッシュ(進学率)とプル(新卒採用)の圧力に支えられた進学率の上昇に支えられて、大学構成員の「依りすがり」体質が遺伝子として組み込まれてしまった。

 例えば、次のような「依りすがり」はないだろうか。

 「『構造改革』には、様々な意味付けがなされるが、肝心なのは『グローバリゼーション』という世界史的な変革に適応できる体制づくりと、内にあっては世界最速で進む高齢化への対応の二点ではないだろうか」。(同紙)

 大学にとっての構造改革はさながら、グローバリゼーションに適応できる人材育成と、急減する18歳人口への対応が肝心なのであろう。大学構成員としての学生はもちろんのこと、出資者としての学費負担者、終身株主としての卒業生、入学者の送り手しての受験関係者、卒業生の受け手としての採用関係者との対話を通じて、彼らのニーズを的確に把握し、その実現を図ることが大学のマネジメントの役割である。その過程で「依りすがる」学内者があぶり出されてくる。

 「独立の気力なき者は、国を思うこと深切(しんせつ)ならず」(同紙)と、私学経営の大先達である福沢諭吉は述べているという。

(山本 明正)



ご案内1 FMICS10月例会 (第444回例会)

●それにしても、大学が「競争」「競争」という二文字に踊らされている。大学だけは別格と高を括っていたけれど、文部科学省は「大学構造改革」の旗を振り「もっと競争しろ」「個性輝く大学づくりをしろ」と大学の尻をたたき始めた。いささかビックリして教員は勿論、職員も右往左往している。そうは言っても、文科省は小泉純一郎首相から、経済官僚からバンバンと尻をたたかれている。そんな中での「21世紀COE(卓越した拠点)プログラム」である。世界最高水準の研究教育拠点作りを目指し、論文応募で採択された国公私立大学の研究機関には国の予算を、重点的に配分するという。とはいえ、当初から、「採択は旧帝国大や特定の私立大に偏るのではないか」と指摘されていた。案の定、結果はその通りになった。競争を促すというよりも、競争に絶対勝つところに更に塩を贈ったようである。茹で蛙状態の大学を改革することは必要だ。けれど、どこかおかしい。審査基準を公表もせずに「密室状態」での評価では、大学に新しい風を巻き起こすは絶対に不可能である。●COEプログラムに申請すらしていない(出来ない)中堅私学でも、学生たちの関心は高い。「あの大学が通ってなぜうちは通らないのか・・・」と悔しさを露わにしているという。学生たちも「競争」「競争」という言葉に何の抵抗もなく是認しはじめている。確実に時代は変わる、変わらざるを得ない。●そして、個性輝く大学づくりの推進第二弾は「特色ある大学教育支援プログラム」である。もしこれにも採択されなければ、学長さんの一人や二人首が飛ぶことになるだろう。ただ、恐いのはこの「競争」がお上によって仕掛けられていることである。大学の評価は誰がするのか、ここを忘れた大学は茨の道を歩むことにならざるを得ない。●今こそ、学生の視点に立つ座標軸を大切にしたい。「競争」「競争」といって学生支援を忘れてはいないでろうか。欧米の大学の学生支援は、痒いところまできめ細やかにサポートしているといわれている。この夏、アメリカの学生支援の実態を視察された村上さんが10月のFMICS月例会のゲストです。超変化の今、大学人に何をなすべきか、日米の大学の現状を比較しながら皆さんと一緒に学生支援のカタチについて考えたいと思います。

【日時】 平成14年10月19日(土) 午後2時〜6時

【会場】 工学院大学新宿キャンパス 28階 第4会議室

【テーマ】 全員先生全員生徒の学舎にあつまれ
      アメリカの大学と日本の大学 学生支援事情

【講師】  前早稲田大学副総長・私立大学退職金財団理事 村上 義紀

【参加費】 会員:1,000円 学生:500円 非会員:1,500円

【申込先】 高橋 真義 shingi@obirin.ac.jp



FMICS SD 134

●FMICS Staff Development 略して 「SD」は、月例会とは別に、原則として第3週の水曜の夜に開催されているゼミナール型の勉強会です。超競争時代をしたたかに活き抜くためにも、大学人一人ひとりの努力を束ねる場です。

(1)メディアチェック 
 あなたのアンテナが何かを感じた新聞・雑誌等の教育&経済トピックスを、切り抜いて持ちよりディスカッションします。トピックスは厳選して1件、A4縦判にコピー(15枚程度)して、氏名と簡単なMEMOを付してご持参ください。各自5分間程度のコメントをしていただきます。

(2)テーマを定めた継続的な勉強会
 1997年度:国立教育研究所編『日本近代教育百年史』/1998年度:工学院大学と拓殖大学沿革史/1999年度前半:『戦後の大学論』/1999年度後半:中教審、臨教審、大学審等の「答申」/2001年8月から:『英国高等教育制度検討委員会(デアリング委員会)報告』(通称デアリングレポート)/2001年12月からは新企画がスタートしました。前日本私立大学連盟事務局長日塔喜一さんをアドバイザーとしてお迎えしてご自身の著書『機会均等へ向けて』を読み込み、経常費補助金制度の誕生(昭和45年)以降の私学経営の軌跡をチェックしました。
 なお、今月からはメディアチェックに専念し、2003年度開始予定の政策提言プロジェクト(仮称)への準備にあてます。

【日時】 平成14年10月23日(水) 午後6時30分〜8時30分

今後の予定 11月13日、12月18日

【会場】  工学院大学新宿キャンパス 高層棟27階 2710ゼミ室

*教室変更もありますのでご注意ください。

【テーマ】  ポリシーマインドを磨こう
       高等教育・経営政策ゼミナール −2−

【申込先】 桜美林大学 出光 直樹 idemitsu@obirin.ac.jp



速報 11月のYFN

 YFN恒例のFMICSが生んだ秋の文化祭。今年、岐阜出身で大正・昭和と「仏教と茶道」を女子教育の根幹とし成蹊高等女学校の名物校長として活躍した奥田正造先生の名著「茶味」が復刻された。私自身も座右の書として学生時代から現在まで常に茶室では、座禅後、輪読してから茶を稽古することにしている。偶然にも人生の師の一人として敬慕する博報堂最高顧問近藤道生氏の父君と奥田先生が同級でしかも無二の親友で実は共著であったことも判明した。今回近藤氏のご協力を願い世に出すことができた。我が人生の慶事の一つと喜んでいる。今回の秋の文化祭はその奥田先生とその書「茶味」についての講演も行う。

【日時】 平成14年11月10日(日) 午前10時〜午後4時

【会場】  水琴亭:岐阜市米屋町27−2 (原三渓翁縁の料亭)

【テーマ】 YFN秋の文化祭  で愛・ふれ愛・夢み愛の茶会

◎雪月花の間
 香筵(席)
  神保博行 中央大学名誉教授・香道御家流桂雪会長
   10:00〜11:30  信長 城郭香
   14:00〜15:30  信長 截香香
 講演
  谷 晃 野村美術館学芸部長
   12:30〜14:00  「奥田正造と(茶味)」

◎雪月花の間控(寄付)
   10:00〜16:00  原 三 渓 顕彰展

◎村雨の間(淀君化粧の間)
   10:00〜16:00  大服茶席

◎残月の間
   点心席(点心については予約の方のみ)

【申込&問い合わせ先】 聖徳学園大学 林 憲和 nhayashi@ha.shotoku.ac.jp



速報 11月のFMICS

 成蹊学園では、お蔭様でSDを始めて1年半近くが過ぎようとしています。ここまでSDを支えてきてくれた仲間とともに、1年半を振り返るよい機会だと思い、SDができた経緯からいろんな勉強会をしたいきさつ、現在および将来の展開を踏まえて、包み隠さず「まなびっと」の実際を発表したいと思います。

 月1回定期的に行われる業務体系理解講座、若手職員を中心としてSSD1(Seikei Staff Development 1)、中堅職員を中心としたSSD2(Seikei Staff Development 2)を起こしましたが、現在は業務体系理解講座とSSD2を主体とした活動に集約されつつあります。

 パワーポイントにより40分程度で成蹊学園SDの現状を説明し、引き続き活動に対しての質疑応答を受け、その後、「今後の職員が自主的に行う勉強会に欠かせないこと」、「アドミニストレータを育てていくための勉強会のあり方」など将来的にどのような形でこのような自主的なSDが展開していったらよいかを参加者でフリートークし、時にはそれ以上の内容になるような脱線もしつつ、互いに意識を深めたいと考えています。

 定例会終了後には、楽しい懇親の場も用意していますので、奮って参加していただき、いつものような熱いFMICS議論を交わしたいと思っていますので、どうぞよろしくお願いします。

【日時】 平成14年11月16日(土)
        月例会 午後3時〜6時
        懇親会 午後6時〜8時

【会場】 月例会 成蹊大学 3号館101教室   懇親会 まごころ食堂(イタリア料理)

【テーマ】 検証“まなびっと”の実際  成蹊学園 SSD1 & SSD2 の場合

【プログラム】
15:00参加者自己紹介
15:15

成蹊学園SDの概要説明
   成蹊大学学務部履修課 浅沼 雅行

SSD1、SSD2について
    〃 企画運営部企画課 高橋 章建

業務体系理解講座について
    〃 財務部管財課 袴田 達夫

16:00成蹊学園SDについての質疑応答
16:30休憩・名刺交換
16:40質疑応答
  • 今後の事務職員に必要不可欠なスキル
  • 参加大学の自主勉強会事情
  • 高等教育会を取り巻く動き
      規制緩和/TOP30の内容
      大学アドミニストレータ養成の動き
【司会】 成蹊大学 浅沼 雅行
 桜美林大学学長補佐 高橋 真義
18:00懇親会

【参加費】 会員:1,000円 学生:500円 非会員:1,500円 / 懇親会:3000円程度

【申込先】 成蹊大学 浅沼 雅行 asanuma@jim.seikei.ac.jp