「京都市は京都の産業界や大学と連携し、小中高校生に起業家精神をはぐくむことを目指した『21世紀型教育コンテンツ開発委員会』(仮称)を11月に設立する。・・・2003年度にコンテンツ(情報の内容)作りと実証実験を行い、2004年度から市内小中高校で実践していく」(日本経済新聞2002年10月28日朝刊「列島フラッシュ」)と報じられています。
インターネット社会の先進国である米国の動向が示すように、ポスト産業社会では、卓越した技術や市場価値のあるビジネスモデルを構築したスモールビジネスが経済成長に大きく寄与しています。学校教育においても幼い頃から、学校によってはビジネスを体験するプログラムが組まれていると聞きます。わが国でも、大学生の起業家教育は工学系・ビジネス系学部のトレンドになっていますが、いよいよ小学校からの教育プログラムが開発されようとしています。この分野での有名な活動は、ベンチャー企業家が組織している社団法人ニュービジネス協議会が中高生への啓蒙活動を進めてきています。
しかし、「わが国でもベンチャー起業支援策が整いつつあるが、問題は起業家精神。主要国で最下位の起業家精神に火をつけるには、不良債権処理、企業再生を起業の好機と認識し、規制緩和などの環境整備で幅広い層に及ぶ『ジャパニーズドリーム』を実現させることが最も効果的だろう」と、実際のビジネスの現場・政策においてもこれからの課題であることを、日本総研理事の足立茂氏は論じています。(同紙2002年10月30日)
では、「起業家精神」とは何でしょうか。たとえば、米国スタンフォード大学長のジョン・ヘネシー氏は、「技術革新を促進するにはどうすべきか。カギは適切な人材を選ぶことだ。条件は@技術の可能性を長期展望できるビジョンのある人A新しいチャンスを感じることのできる探究者B既存の考えや業界の慣習にとらわれない実行力のある人−−の三点だろう」と言います。(同紙2002年10月29日朝刊「世界経営者会議」)
もはや、わが国のひとつの人材育成目標となっている起業家精神について、お膝元の学校で働く人々はどうでしょうか。教育革新を構想してその成果を長期展望できるでしょうか。環境変化(悪化)をチャンスととらえられるでしょうか。いままでのやり方や常識を疑って新しいビジネスモデルを実現できるでしょうか。そして、意思決定者がそのような活動を積極的に評価する意欲をもっているでしょうか。
起業家精神なき大学人にどうして起業家教育を行い、支援できるのか、疑問に感じざるを得ません。大学人が小中学生にまじって、京都市のプログラムに参加することも絵空事ではありません。「まずはじめよう」とは、起業家精神のFMICS的解釈と思い始めてきました。
(坂田 範夫)
「(1990年頃に訪れたロンドン、パリ、フランクフルトの)各都市の監督当局・中央銀行・金融機関幹部はいずれも、(欧州)統合がどんな結果になるにせよ、自らの国・都市を欧州の金融センターにするという熱い思いにあふれていた。金融資本市場に国境はなく、それ故に市場間競争に勝ち抜くことが必要だという意識は共通し、規制体系や税制の見直し、決済システム等のインフラ整備、経営戦略の展開に積極的であった。その後のEU金融統合の動向や市場整備の状況はご承知の通りである」と、翁百合日本総研首席研究員は述べる。(日本経済新聞2002年11月2日夕刊「あすへの話題」)
18歳人口の量的減少と質的変容がもたらす変化については、耳にタコができるほど長期かつ多方面から論じられてきた。私立大学にとっては、(曲がりなりにも)建学の理念をもつ学び舎の存立の危機、そして(学校教育法)一条校として国民からの負託に応える困難に直面している。にもかかわらず、各大学は、例えば学部再編をはかり、例えば留学生を拡大し、例えば資格取得を支援しているが、危機・困難を根本的に克服しえたとは言い難い。変化する市場に対して、自らの存立意義を認識させるに足る明確なメッセージを発し、その意思をもって継続的に行動している大学は少ない。21世紀初頭の社会を見据えて策定した大学のビジョン、それを実現するための各部門の戦略を束ねた統合戦略が見えてこないでいる。
成功しつつある数少ない大学のひとつが早稲田大学である。アジア太平洋での存在感(=陣取り)を大学戦略として位置づけ、対外的に目に見える教育機関としては、大学院のアジア太平洋研究科、シンガポールの渋谷学園中高の株式取得、バンコクの日本留学学校がある。バンコクでは日系企業の現地従業員向けの日本語教育も行う。そして、ロースクール設立後の法学部は定員を半減して国際文化系学部を設置し、留学生の拡大を計画している(以上は伝聞を含むため、事実と相違する可能性もあり)。その一方、酒田短期大は、補助金交付も視野に入れた、留学生の量的確保にのみ大学戦略を構築した結果、「理事長、教員とも不在になり教育機関としての機能破たんが決定的な様相」(日本経済新聞2002年11月2日夕刊)となって市場から退場することになった。
翁氏は、現在の金融関係者の多くが「苦境にただ中」にあり、「その原因の多くに日本経済の不振がある」ことを指摘し、「もう少し早くグローバルな市場間競争についての視座を持ち、横並び意識と決別していたら少しは違った展開もあったのでは、と思えてならない」と結ぶ。ひるがえって、大学の護送船団が解体したいま、競争政策として、国民に「『大学』は変わった」と実感させる目の覚めるような戦略と成果の創造を意識している大学はどれだけあるだろうか。
(山本 明正)
●成蹊学園では、お蔭様でSDを始めて1年半近くが過ぎようとしています。ここまでSDを支えてきてくれた仲間とともに、1年半を振り返るよい機会だと思い、SDができた経緯からいろんな勉強会をしたいきさつ、現在および将来の展開を踏まえて、包み隠さず「まなびっと」の実際を発表したいと思います。
月1回定期的に行われる業務体系理解講座、若手職員を中心としてSSD1(Seikei Staff Development 1)、中堅職員を中心としたSSD2(Seikei Staff Development 2)を起こしましたが、現在は業務体系理解講座とSSD2を主体とした活動に集約されつつあります。
●パワーポイントにより40分程度で成蹊学園SDの現状を説明し、引き続き活動に対しての質疑応答を受け、その後、「今後の職員が自主的に行う勉強会に欠かせないこと」、「アドミニストレータを育てていくための勉強会のあり方」など将来的にどのような形でこのような自主的なSDが展開していったらよいかを参加者でフリートークし、時にはそれ以上の内容になるような脱線もしつつ、互いに意識を深めたいと考えています。
●定例会終了後には、楽しい懇親の場も用意していますので、奮って参加していただき、いつものような熱いFMICS議論を交わしたいと思っていますので、どうぞよろしくお願いします。
【日時】 平成14年11月16日(土)
月例会 午後3時〜6時
懇親会 午後6時〜8時
【プログラム】
15:00 | 参加者自己紹介 |
15:15 | 成蹊学園SDの概要説明 SSD1、SSD2について 業 務体系理解講座について |
16:00 | 成蹊学園SDについての質疑応答 |
16:30 | 休憩・名刺交換 |
16:40 | 質疑応答
桜美林大学学長補佐 高橋 真義 |
18:00 | 懇親会 |
20:00 | 三次会 |
【参加費】 会員:1,000円 学生:500円 非会員:1,500円 / 懇親会:3000円程度
【申込先】 成蹊大学 浅沼 雅行 asanuma@jim.seikei.ac.jp
YFN恒例のFMICSが生んだ秋の文化祭。今年、岐阜出身で大正・昭和と「仏教と茶道」を女子教育の根幹とし成蹊高等女学校の名物校長として活躍した奥田正造先生の名著「茶味」が復刻された。私自身も座右の書として学生時代から現在まで常に茶室では、座禅後、輪読してから茶を稽古することにしている。偶然にも人生の師の一人として敬慕する博報堂最高顧問近藤道生氏の父君と奥田先生が同級でしかも無二の親友で実は共著であったことも判明した。今回近藤氏のご協力を願い世に出すことができた。我が人生の慶事の一つと喜んでいる。今回の秋の文化祭はその奥田先生とその書「茶味」についての講演も行う。
林 憲和 記
【日時】 平成14年11月10日(日) 午前10時〜午後4時
【会場】 水琴亭:岐阜市米屋町27−2 (原三渓翁縁の料亭)
◎雪月花の間
香筵(席)
神保博行 中央大学名誉教授・香道御家流桂雪会長
10:00〜11:30 信長 城郭香
14:00〜15:30 信長 截香香
講演
谷 晃 野村美術館学芸部長
12:30〜14:00 「奥田正造と(茶味)」
◎雪月花の間控(寄付)
10:00〜16:00 原 三 渓 顕彰展
◎村雨の間(淀君化粧の間)
10:00〜16:00 大服茶席
◎残月の間
点心席(点心については予約の方のみ)
【申込&問い合わせ先】 聖徳学園大学 林 憲和 nhayashi@ha.shotoku.ac.jp
●FMICS Staff Development 略して 「SD」は、月例会とは別に、原則として第3週の水曜の夜に開催されているゼミナール型の勉強会です。超競争時代をしたたかに活き抜くためにも、大学人一人ひとりの努力を束ねる場です。
(1)メディアチェック
あなたのアンテナが何かを感じた新聞・雑誌等の教育&経済トピックスを、切り抜いて持ちよりディスカッションします。トピックスは厳選して1件、A4縦判にコピー(15枚程度)して、氏名と簡単なMEMOを付してご持参ください。各自5分間程度のコメントをしていただきます。
(2)テーマを定めた継続的な勉強会
1997年度:国立教育研究所編『日本近代教育百年史』/1998年度:工学院大学と拓殖大学沿革史/1999年度前半:『戦後の大学論』/1999年度後半:中教審、臨教審、大学審等の「答申」/2001年8月から:『英国高等教育制度検討委員会(デアリング委員会)報告』(通称デアリングレポート)/2001年12月からは新企画がスタートしました。前日本私立大学連盟事務局長日塔喜一さんをアドバイザーとしてお迎えしてご自身の著書『機会均等へ向けて』を読み込み、経常費補助金制度の誕生(昭和45年)以降の私学経営の軌跡をチェックしました。
なお、今月からはメディアチェックに専念し、2003年度開始予定の政策提言プロジェクト(仮称)への準備にあてます。
【日時】 平成14年11月13日(水) 午後6時30分〜8時30分
今後の予定 12月18日
【会場】 工学院大学新宿キャンパス 高層棟27階 2710ゼミ室
*教室変更もありますのでご注意ください。
【申込先】 桜美林大学 出光 直樹 idemitsu@obirin.ac.jp
●超競争時代と言われて久しい。大学の外堀は着実に、かつ確実に埋められつつある。とはいえ、多くの大学人は、「うちの大学に限ってはまだまだ大丈夫」という淡い幻想を捨てはいない。転落はその“兆し”を感じたときにはすでに手遅れである。坂を転げ落ちるスピードは、淡い期待を打ち砕く。●今元気な大学では、パレートの法則が効いている。トップマネジメントが頑張り、それを支える中間管理職も頑張っている。意志決定が効率的である。●12月のFMICSは、「“まなびっと”私たちは何をしてきたか」をテーマに参加者一人ひとりの私のSDのカタチを語っていただきます。●ワイワイガヤガヤの月例会の後は、恒例の忘年懇親会です。「京都」直行ご参加も大歓迎いたします。
【日時】 平成14年12月14日(土)
月例会 午後3時〜6時
懇親会 午後6時〜8時