「日本が国際競争力を高めるために改革すべきこと(複数回答)は『行政による規制緩和』が最も多く、八五・八%に達した。『企業の技術開発力』が七八・三%で続き、以下『教育制度』(六六・○%)、『金融システム』(六一・三%)、『企業の賃金、雇用体系』(五八・五%)の順。規制が研究開発や新分野進出の足かせになっているとの意識は強く、政府に対して規制改革を強く求める一方、自らは技術開発を地道に続けて新製品・新サービスや高付加価値商品などを開発。知の力でデフレの重圧を跳ね返そうとする姿がうかがえる」(日本経済新聞2002年11月29日朝刊)。
この調査は、日本経済新聞社が11月上旬に主要企業117社の経営者にアンケートを実施し、106社から回答を得たものである。第3位に「教育制度」が挙げられている。回答者が制度のどのような部分を想定していたのかなど詳細は不明であるが、変化する時代における国づくりの基盤として、 教育制度への変革ニーズは相当に高い。上位4項目のうち、企業以外の要素が「行政」「教育」「金融」と並んでいる。いずれも親方日の丸・護送船団と称されてきた分野で、民間の競争力向上への企業努力を尻目に、高度成長の恩恵をフリーライダー的に浴してきたセクターでもある。国際競争力の観点からみれば、変革を拒み続ける学校制度そのものが日本最大の不良債権である言っても過言ではない。
引用記事の後段を大学経営に置き換えてみると、見事に経営者たちのアンケート結果と符合する。小泉政権下で教育分野の規制緩和が進んでいる一方、大学自身は教育の充実化、研究の高度化を地道に続けて、新しい教育プログラム・新しい学生サービスを開発しているだろうか、知の力で18歳デフレの重圧を跳ね返そうとしているだろうか。こうした企業努力の集積によってはじめて、教育制度は「国際競争力を高めるために改革が必要な分野」の下位になっていくはずである。
では、そのための処方は何か。言うまでもなく、理事長・総長・学長といったトップの大学変革へのMPA(Mission・Passion・Action)である。「(学長のイメージは)研究・教育の担い手のみではなく大学経営にも能力が問われ、そして何よりも学内外の案件について的確な判断とリーダーシップを発揮できるという条件が必要となる」と、石弘光一橋大学長は言う(同紙2002年11月30日朝刊)。さらに「法人化後の学内外で生じると思われる多様な案件を、のんびりとした学内審議にかけ、時間を費消して集約を図るという従来の方式は、早晩限界に達することは疑いない」と警鐘を鳴らす。2009年までに国内18歳デフレはさらに2割減で進行していくことは「事実たる予測」である。活きのぼりに向けて、競争力を上げるための教職員の意識変革、人材の確保・登用、意思決定方式の改革の実現はすべてトップマネジメントの不退転の決意にかかっている。
(山本 明正)
毎週木曜日の6限目。桜美林大学院新宿キャンパスの真義自主ゼミでは、現在大学倒産について取り組んでいます。大学倒産には、民事再生と破産の2つのモデルを想定していますが、多くの場合、破産に至るのではないかと議論しています。なぜでしょうか。
通勤途中に前を通る豆腐屋。いつも繁盛している地元の名店です。豆腐という単一商品の豆腐屋と教育という単一商品の大学。豆腐屋を例にして、大学倒産モデルを考えてみました。
豆腐屋A:腕の良い職人と気の利く店員により、いつも繁盛の地元名店。しかし、店主が連帯保証人を引き受けたばかりに、店は莫大な借金を抱えて経営が立ち行かなくなりました。この場合、店自体は繁盛しているので、銀行などから融資を受けられれば、再生は可能です(民事再生モデル)。
豆腐屋B:これまでは、豆腐を作りさえすれば売れました。バブルの時には、銀行のすすめる融資で店の改装もしました。ところが、最近売り上げの落ち込みが目立ってきました。某ハンバーガーチェーンを真似て、半額デーを設けましたが売り上げは回復しません。せっぱ詰って、店員1人に辞めてもらいました。しかし、店の雰囲気は悪化し、それこそつるべ落としのように売り上げも落ちて、ついに店を閉めるはめにおちいりました(破産モデル)。
豆腐屋にとっての豆腐は、大学にとっての教育です。大学倒産が現実味を持って語られている現在、志願者減、定員割れのように教育を受け入れてもらえなくなった大学は、豆腐屋Bのケースに陥るのではないでしょうか。
ところで、大学1000年の歴史を概観してみると、中世ヨーロッパにおいて大学は聖職者や法律家などの専門職業人養成機関として広まりました。(牟田博光「変わる社会と大学」)その後、19世紀初頭に近代大学のモデルであるベルリン大学が創設されると、ドイツ大学全盛となりました。そして、20世紀前半から職業教育、研究大学、土地交付大学など様々なモデルを生み出したアメリカの大学が、圧倒的な地位を得ます。1000年史を貫くシンプルな真理。それは、「大学は競争的な時代になると新しいモデルを生み出してきた。だから1000年以上も生き残ってきた」ということではないでしょうか。
現在、日本の大学は18歳人口の減少、独立行政法人化、COEや第三者評価など、競争的な環境にさらされています。各大学は生き残りをかけて、様々な取り組みをしています。ルイス・ガーナーIBM会長は、「敏速に動け。急ぎ過ぎて間違えるのは、遅すぎて間違えるよりいい」(日本経済新聞2002年11月18日「私の履歴書」)と述べています。まさに「改革なくして生き残りなし」という様相です。このような時こそ基本を考えねばなりません。教育の充実という基本を欠いた取り組みは、豆腐屋Bとダブリます。
(河原 卓巳)
●超競争時代と言われて久しい。大学の外堀は着実に、かつ確実に埋められつつある。とはいえ、多くの大学人は、「うちの大学に限ってはまだまだ大丈夫」という淡い幻想を捨てはいない。転落はその“兆し”を感じたときにはすでに手遅れである。坂を転げ落ちるスピードはすさまじい。●今元気な大学では、パレートの法則が効いている。トップマネジメントが頑張り、それを支える職員もさらに頑張っている。戦略的意思決定が効率的になされるためには、なによりも職員力のパワーアップが図らなければならない。●12月例会は、はじめに3人のベテランFMICS人にこれまで“まなびっと”として何をしてきたかを語っていただきます。そして、参加者のみなさまと激動の時代の戦略的SDのカタチについてディスカッションをしたいと思います。みなさまには積極的にご発言ください。●月例会の後は、恒例の忘年懇親会です。「京都」からのご参加も大歓迎です。
【日時】 平成14年12月14日(土)
月例会 午後3時〜6時
懇親会 午後6時〜8時
発表者 | 学習院総務部総務課 | 坂野 雅俊 |
目白大学学生課長 | 鈴木 匠 | |
中央大学経理研究所 | 横田 利久 | |
司会 | 桜美林大学学長補佐 | 高橋 真義 |
【参加費】 会員:1,000円 学生:500円 非会員:1,500円 / 懇親会:5000円程度
【申込先】 桜美林大学 高橋 真義 shingi@obirin.ac.jp
●12月の名古屋FMICSは、SDの先進的取り組みと戦略的事務局組織改革の先駆けとして有名な日本福祉大学の組織改革の立て役者であり、愛知県私立大学事務局長会会長として地元愛知での活躍ばかりか、今年4月からは私大協会附置私学高等教育研究所研究員として全国を股にかけご活躍の篠田さんにお話しいただきます。危機回避のためにも、今こそ大学職員は戦略的な柔軟な発想が必要であることを参加者のみなさまと確認したいと思います。●ご案内が急になりましたが、お仲間をお誘いの上ご参加下さい。
【日時】 平成14年12月6日(金) 午後6時半〜8時半
【会場】
愛知大学車道校舎 3号館 第4会議室(入口正面2階会議室)
*名古屋駅から地下鉄桜通線車道駅下車
【スピーカー】 日本福祉大学常任理事・
私大協会附置私学高等教育研究所研究員 篠田 道夫
【申込&問い合わせ先】 聖徳学園大学 林 憲和 nhayashi@ha.shotoku.ac.jp
●恒例の関西FMICS Winter-meetingをご案内します。来る年2003年のご自身のアクションプランについて参加者全員が発表。そして、3月FORUMの打合せも行います。ミーティングの後は、わいわいがやがや夜がふけるまでの飲みっくすです。
●平成14年12月27日(金)午後4時からのスタートです。会場などのお問い合わせは、SFK事務局・滝川 義弘 tacky@sec.otani.ac.jp まで。
●FMICS Staff Development 略して 「SD」は、月例会とは別に、原則として第3週の水曜の夜に開催されているゼミナール型の勉強会です。超競争時代をしたたかに活き抜くためにも、大学人一人ひとりの努力を束ねる場です。
(1)メディアチェック
あなたのアンテナが何かを感じた新聞・雑誌等の教育&経済トピックスを、切り抜いて持ちよりディスカッションします。トピックスは厳選して1件、A4縦判にコピー(15枚程度)して、氏名と簡単なMEMOを付してご持参ください。各自5分間程度のコメントをしていただきます。
(2)テーマを定めた継続的な勉強会
1997年度:国立教育研究所編『日本近代教育百年史』/1998年度:工学院大学と拓殖大学沿革史/1999年度前半:『戦後の大学論』/1999年度後半:中教審、臨教審、大学審等の「答申」/2001年8月から:『英国高等教育制度検討委員会(デアリング委員会)報告』(通称デアリングレポート)/2001年12月からは新企画がスタートしました。前日本私立大学連盟事務局長日塔喜一さんをアドバイザーとしてお迎えしてご自身の著書『機会均等へ向けて』を読み込み、経常費補助金制度の誕生(昭和45年)以降の私学経営の軌跡をチェックしました。
なお、今月からはメディアチェックに専念し、2003年度開始予定の政策提言プロジェクト(仮称)への準備にあてます。
【日時】 平成14年12月11日(水) 午後6時30分〜8時30分
今後の予定 平成15年1月22日(水)、2月26日(水)
【会場】 工学院大学新宿キャンパス 高層棟27階 2710ゼミ室
*教室変更もありますのでご注意ください。
【申込先】 桜美林大学 出光 直樹 idemitsu@obirin.ac.jp
●新春1月のFMICSは恒例の葉山合宿例会です。FMICSのいう“あったかさ”を本物にすることが、21世紀に活きのぼる大学であるための絶対条件。時代の変化は予想を遙かに越える。今こそ、私たちは何をなすべきか。原点に立ち返る必要がある。●FMICSの2003年は新宿・工学院大学でのオリエンテーションから始まります。続いて、湘南葉山に会場を移します。●参加者全員の10分間スピーチで、激変する高等教育に対する想いと決意を語っていただきます。●FMICSらしさを十二分に体感できる合宿例会。お仲間には年内中に一言お声をお掛けください。昼、夜プロのみの部分参加も大歓迎です。
【日時】 平成15年2月1日(土)〜2日(日)
オリエンテーション 午後1時〜3時
合宿FMICS 午後6時〜翌午前9時
【会場】 工学院大学新宿キャンパス & 中央大学葉山寮(神奈川県葉山町)
【申込先】 坂田 範夫 kintoki(アットマーク)tamajs.chuo-u.ac.jp までお早めにお申し込み下さい。