今回は新聞記事から離れて、広告に目を転じてみたい。2月上旬の日経紙に掲載された、半ページのある賃貸マンションのカーラ広告である。物件は「(都内の)品川駅6分、タワー型賃貸マンション」で、顧客として想定している3タイプの人物のアップとともに、次のキーワードが並んでいる。
スーツ姿の管理職風の50代男性は、
「時間力 秋には新幹線も乗り入れるし、東京で一番便利な場所になるね」。バックの写真は、旅客機とのぞみ号。
やはりスーツ姿のOL風の30歳前後の女性は、
「未来力 総合再開発地域ならではのビッグプロジェクト。ここはいつも未来に向いていますね」。バックの写真は、高層ビル群。
カジュアル姿の60歳前後の男性は、
「自由力 ビジネスもプライベートも、束縛されない賃貸の自由さが気に入っています」。バックの写真は、首都高速道路公団が東京湾岸に建設したレインボーブリッジ。
この広告で使用された、時間力、未来力、自由力はそのまま学生募集のキーワードでもある。 時間力は、不況や少子化に起因する地元大志向や、首都圏の都心回帰に見られるように、住まいと大学との時間的な距離感のほか、ダブルスクールで通う専門学校や、アルバイト先への通いやすさに関わる立地的競争力を意味する。
未来力は、不況や構造改革による雇用環境の変化に対して、個々の学生の進路支援にコミットメントし、満足度の高い進路選択を実現させるためのキャリア教育上の競争力を意味する。
自由力は、進学率の上昇によって大学進学の目的意識が希薄になっていくことに対し、他学部・学科科目の選択、他大学科目との単位互換、特定テーマのパッケージ受講など、選択科目の自由度による科目構成の競争力を意味する。
また、この3つの言葉は、大学経営の競争力を示すキーワードでもある。
時間力は、ドッグイヤー時代にふさわしい、課題解決に向けた実行力や、市場対応力を表す象徴である。
未来力は、文明の転換点にあって、社会で求める新しい大学像に近づけていく大学改革力を表している。
自由力は、過去の因習や派閥争い、学内規定上の制約から脱して、学生、社会のための大学づくりを志向する発想の自由さを示している。
そういえば、このキーワードを逆から眺めると、
「意思決定が遅く、現状を墨守し、教職員・役員の期特権優先の大学」となる。会員諸氏の大学・組織はどちらだろうか。
(山本 明正)
「第三の改革」。明治期、第二次大戦後、そして現在、というかたちで、現在進行中の変革がそう位置付けられているのは何も大学に限った話ではない。大学と同じように変革期の只中にあり、日々新聞を賑わせている主体が他にもある。地方自治体である。しかし、変革という一筋の川の中での位置でいえば、昨今の自治体は大学より一歩先に「濁流」の部分に突入してしまった感がある。
「市町村合併を巡り、住民投票を実施する自治体が急増している。昨年は埼玉県上尾市だけだったが、今年は既に10町が実施。年内にさらに3町で投票がある。来年は5市町が投票を決めている。合併特例法の期限切れは2005年3月。合併までに通常2年かかるため、自治体にとっては来春が決断を下すリミットとなる。未成年者にまで対象を広げ、賛否を問う自治体も増えている。」(NikkeiNetより 2002/12/15付)
上記の記事が報じているような住民投票の急増からは、住民からの合併気運の高まりや、コンセンサスの形成をじっくり待つというのではなく、とにかく合併特例法の期限までに結果を出さねばならないという各自治体の焦りが読み取れる。
「市町村の自主的な合併が円滑に行われるよう、さまざまな支援策が用意されています。
@合併後のまちづくりを手厚い財政措置で支援します。
A合併後の財源を保障します。
B議員の定数・任期の特例があります。
C市町村合併アドバイザーの制度があります。
D各省庁連携による市町村合併支援プランがあります。」(総務省Webサイト「合併相談コーナー」より・抄)
そして、総務省Webサイトの「合併相談コーナー」には「合併に対する支援は?」という問いへのQ&Aのかたちで、自治体の「焦り」の原因がケーキのような甘い言葉で並んでいる。文頭の「自主的な」という言葉が空しく響く。
地方分権一括法で、分権化が進むかと思いきや、それを逆手にとって「分権の受け皿として一定以上の規模が必要」という趣旨での合併推進。多くの自治体では、住民が必要性を感じる間もなく、合併団体間で新たなビジョンを煮詰める間もなく、都道府県毎のモデルケースに基づいた合併協議が進行している。
「たとえおかしな法律ができても、アメリカではロビー活動を行って次の議会で法律を変えさせてしまう」先日、桜美林大学大学院の大学アドミニストレーション専攻の公開講座に参加した。その中で耳にした、ディスカッション上でのあるパネリストの発言が心に残る。
大学が自治体のように「濁流」に飲み込まれることなく、「住民(=学生)」不在でない、「あったかい」改革が実現されるために、FMICS人として、また一市民として、何ができるのかを考えていきたい。
(米川 充 yonemitsu@dream.com)
3月のFMICSは、恒例の関西FORUMです。関西FMICSがずっと追いかけてきた問題意識は《自分をどう育てるのか》。そして。今回のテーマは「21世紀の大学のカタチ人と組織を考える」。
今回の発表に向けて自身のアドミニ論をまとめあげた立命館大学の辻浩史さん。20分プレゼンに名乗りを上げた東京学芸大学の岩本悠さんは参加者を巻き込んだワークに挑戦。ご存知、高橋さんは自己表現トレーニング関西バージョン。私、滝川は昨年6月に実施した大谷大学の事務局再編の私的レポート。そして、参加者全員が発表者です。あなたの10分間をご用意ください。
今年の会場は、昨年のオールナイト会場の大谷大学セミナーハウスです。だから最初から最後まで本音トークのオールナイトFMICSのノリ。あなたは、どんな自分をどうやって育てますか?
琵琶湖を眺めながら、ゆっくりお湯に浸かるのもちょっといい感じ。京都の春は、ワイワイガヤガヤFORUMからスタートします。ぜひご参加下さい。
【日時】 平成15年3月15日(土)−16日(日)
受付 | 14:00〜 |
FORUM | 15:00〜18:15 |
PARTY | 19:00〜21:00 |
オールナイト | 21:00〜34:00 |
【会場】 大谷大学 湖西キャンパス・セミナーハウス
(滋賀県大津市雄琴3丁目33-3) 077-578-6600
《 交通案内 》
JR京都駅にて湖西線<普通>に乗車、雄琴駅下車 徒歩10分。または、
雄琴駅から仰木の里循環バス内廻りに乗車「大谷大学グラウンド前」下車すぐ
湖西線は京都発13:59発、14:16発に乗車すると便利です。
14:00 | 受付開始 |
15:00 | 第1部開会 司会 寺田 剛文(京都精華大学会計課) |
15:30 | Presentation 1 アドミニ私論 辻 浩史(立命館大学調査企画課) |
16:15 | Presentation 2 私説・大谷大学事務局再編 滝川 義弘(大谷大学教育研究支援課) |
17:15 | Discussion 1 |
18:15 | 第1部閉会 |
19:00 | 懇親会 |
21:00 | 第2部 All Night FMICS 【全員発表】人と組織を考える Presentation 3 岩本 悠(東京学芸大学学生) Presentation 4 高橋 真義(桜美林大学学長補佐) |
24:00 | Discussion 2 |
26:00 | All Night FMICS終了 (参考 例年は28時ぐらい) |
31:00 | 起床&朝食 |
32:30 | 振り返り&総括 |
34:00 | FMICS FORUM in KYOTO終了 解散 |
【参加費】 FORUM 2,000円 PARTY 5,000円 オールナイト 4,000円
【お願い】 オールナイトFMICSで20分間のプレゼンテーションのほか、恒例の全員発表(10分間程度)を行います。テーマは自由。レジュメ(A4用紙1枚)を用意して参加してください。
【申し込み・お問い合わせ】 大谷大学教育研究支援課 滝川 義弘 tacky@sec.otani.ac.jp
今月のYFNは、南山大学の新里さんにジョブローテーションとキャリア開発の視点から発表をしていただきます。資金運用など財務の専門家が異動により、公開講座担当となり、エクステンション開設の準備からかかわり、開設して1年の奮闘努力振りを語って頂きます。ご期待下さい。
【日時】 平成15年3月28日(金) 午後6時半〜8時半
【会場】 愛知大学車道キャンパス 3号館2階会議室
【発表者】 南山大学エクステンションカレッジ事務長 新里 敏夫
【申込&問い合わせ先】 岐阜聖徳学園大学総合企画課 林 憲和 nhayashi@ha.shotoku.ac.jp
●FMICS Staff Development 略して 「SD」は、月例会とは別に、原則として第3週の水曜の夜に開催されているゼミナール型の勉強会です。超競争時代をしたたかに活き抜くためにも、大学人一人ひとりの努力を束ねる場です。
(1)メディアチェック
あなたのアンテナが何かを感じた新聞・雑誌等の教育&経済トピックスを、切り抜いて持ちよりディスカッションします。トピックスは厳選して1件、A4縦判にコピー(15枚程度)して、氏名と簡単なMEMOを付してご持参ください。各自5分間程度のコメントをしていただきます。
(2)テーマを定めた継続的な勉強会
1997年度:国立教育研究所編『日本近代教育百年史』/1998年度:工学院大学と拓殖大学沿革史/1999年度前半:『戦後の大学論』/1999年度後半:中教審、臨教審、大学審等の「答申」/2001年8月から:『英国高等教育制度検討委員会(デアリング委員会)報告』(通称デアリングレポート)/2001年12月からは新企画がスタートしました。前日本私立大学連盟事務局長日塔喜一さんをアドバイザーとしてお迎えしてご自身の著書『機会均等へ向けて』を読み込み、経常費補助金制度の誕生(昭和45年)以降の私学経営の軌跡をチェックしました。
なお、しばらくの間メディアチェックに専念し、2003年度開始予定の政策提言プロジェクト(仮称)への準備にあてます。
【日時】 平成15年3月12日(水) 午後6時30分〜8時30分
【会場】 工学院大学新宿キャンパス 高層棟27階 2710ゼミ室
*教室変更もありますのでご注意ください。
【申込先】 桜美林大学 出光 直樹 idemitsu@obirin.ac.jp
平成15年4月、いよいよ、大学経営専門職としてアドミニストレーターの誕生です。桜美林大学大学院アドミニストレーション専攻修士修了者のFMICS人による、研究報告とこれからの激動時代にあるアドミニストレーターとしていかにあるべきかを語って頂きます。
【日時】 平成15年4月26日(土) 午後1時30分〜6時
【会場】 工学院大学新宿キャンパス
主催 桜美林大学大学教育研究所
18歳人口の減少、国立大学の法人化、株式会社の大学参入等、大学を取り巻く環境はドラスティックなまでに変わりはじめています。大学は果たしてどこに向かうのでしょうか。大競争時代の大学を支えなければならない職員は、今何をしなければならないのでしょうか。講演、問題点の確認、そしてグループごとの「自己表現トレーニング」により問題点を更に掘り下げ、職員として何をすべきかを皆さまとともに考えたいと思います。
研修会終了の後は、皆さまに幅広いヒューマンネットワークを創っていただきたく懇親会を企画しました。奮ってご参加ください。
【日時】 平成15年3月29日(土) 午後1時20分(受付開始1時)〜8時
【会場】 中央大学市ヶ谷キャンパス
*詳細はこちら(桜美林大学のサイト)をご覧になり、お申し込み下さい。
平成15年度の真義ゼミは、春学期は教学支援特論(2単位/授業料が必要です)、秋学期は自主ゼミとなります。昨年1年間の自主ゼミを更にパワーアップし、職員力向上のための授業(宿題あります)を皆さんと一緒に創っていきます。
新聞記事のモニタリング、アメリカ修学旅行、研修会、出版などの企画、自己表現トレーニング、「一日先生カリキュラム」等も必ず体感していただきます。木曜日の午後6時20分〜9時30分まで、2コマ連続のかなりボリュームのあるゼミになるかとj思います。FMICSの皆さまで、受講を希望されるかたは、高橋真義までお問い合わせ(E-mail shingi@obirin.ac.jp)ください。
■筑波大学東京キャンパスでは、経営システム科学専攻を始めいくつかの大学院プログラムがありますが、その中で、大学アドミニストレーションに関係ある授業科目について、来るべき大学経営人材専攻(専門職大学院)の設立を睨んだ試行作業の一環として科目等履修生を若干名募集します。
■費用は、入学金28,200円、授業料は1単位について14,400円です。以下の科目はいずれも各 1単位です。うち、1学期(4月〜6月)に開設する科目については、3月12日(水)〜14日(金)に、東京キャンパスの教務課にて受付があります。関心ある方は、学校教育事務部教務課教務第二係 03-3942-6817にお問い合わせください。
■私の授業科目(高等教育システム)は、少なくとも15人は受け入れる予定ですので、皆さんの周りで関心のある方にも、この情報をお伝えいただければ幸いです。
■T、U、Vは学期を、F、Gは時間帯のことです。Fは午後6時15分から7時30分まで、Gは午後7時45分から9時までです。
山本 | 高等教育システム | T 金 G |
小林 | 知識生産と科学技術 | T 土 C |
佐野 | 生涯学習システム論 | T 木 F |
加藤 | 非営利組織の経済学 | T 木 G |
渡邉 | 教育政策とデータ分析 | V 金 F |
計量経済学 | U 金 F | |
加藤 | 社会調査法 | V 木 F |