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2003年4月のFMICS



組織のトップの一般理論 -A-

 「ケンブリッジ卒業後、文官試験二位の成績でケインズが入ったインド省の勤務時間は午前十一時から午後五時。初仕事はボンベイ(ムンバイ)向け雄牛の船積み手配だった。優雅な毎日にご満悦だったのもつかの間、保身にのみ努める特権官僚の堕落ぶりに嫌気し、一年半で役所を去っている。

 この経験が後の経済学構築の糧になったともいうが、前途有為の青年を腐らせた職場には違いない。日本の企業は大丈夫だろうか。不況下でも若者の離職率は高いという。無理がきかず数ばかり多い中高年の陰で、少数の若者に力仕事が覆いかぶさる。経費圧縮で後輩は来ない。研修もはしょり使い捨て気味との声も。これでは嫌気がさす」(日本経済新聞2003年4月6日朝刊「春秋」)

 4月初旬の東京は桜とともに、新入生、新入社員の季節である。しかし、今年はバブル崩壊という経済敗戦以降の不毛の10年による経済停滞、近年のデフレ不況に加えて、国際政治システムに後遺症を残したイラク戦争、アジア発の感染症となった新型肺炎という世界的な負の重荷を抱えながら新年度のスタートとなった。

 こうした日本の閉塞感について、最後の病気以外の病原体は、リーダーの危機意識の欠如による不作為の作為にあると思えてならない。二極化時代にあって、考えてみればリーダーこそが勝ち組中の勝ち組であり、激烈な社内競争・学内選挙を自らの才覚と、周囲の引き立て、ある種の巡り合わせに恵まれた人生の勝者である。このような人種があえて火中の栗を拾い、痛みをともなう変革という困難に立ち向かうことは希である。もしそのような人物がいるとすれば、歴史に対する責任を負おうとする希有の「人財」といっても過言ではない。

 冒頭引用した「無理がきかず数ばかり多い中高年」とは、一般的に考えて、護送船団の船員、右肩上がり慣れた社員、定年まで指折り数えられる管理職を端的に表現している。

 彼らは、「無理がきかない」存在同士で一致団結のうえ、未来に責任を負わないリーダーと一蓮托生感をもって、リーダーに必要な情報を伝えず、現状維持の甘い期待にリーダーを丸め込み、時にはリーダーの預かり知らぬところで変革の動きを封じる術(すべ)を心得ている。

 さらに、若手にはいまそこにある危機を伝えず(ご当人たちも感じていないだろうが)、自分たちと同じことをすることが与えられた職務であると錯覚させて、「無理のきかない中高年」を拡大再生産する。

 不況風の中で、このような花見の宴に酔った組織の末路は、桜花のようにはかなくもろい。ケインズでもなければ、組織から自立して生きていくことはできないにもかかわらず。

(山本 明正)



組織のトップの一般理論 -B-

 4月紙面の恒例は、入社式でのトップの訓辞です。新入社員の頃を想い出し、その会社に入社したことを想像してぜひ読んでください。(いずれも日本経済新聞2003年4月2日朝刊。下線筆者)

<後藤 花王社長>
「心しなければならないのは、消費・購買行動、流通・小売業界、グローバル化の進展という『三つの変化』だ。過去の成功体験にこだわらず、このままではいけないとの健全な危機意識を持つことが、積極的で前向きな企業姿勢を生み出す。若さと柔軟な発想で新風を吹き込んでほしい」

<吉野 ホンダ社長>
「一人一人が『いきいき』することが企業全体の『いきいき』につながる。さらに急速な環境変化や激化する競争の中で規模が小さいながらも競争に勝ち、企業としての存在感を高めていくことにつながっていく。夢や目標を持ち、志高くチャレンジし続けてほしい」

<和田 NTT社長>
「我々の業界は本格的ブロードバンド(高速大容量)とユビキタス(偏在)による大きな変革の時代を迎えている。新入社員のみなさんもどんどん変っていってほしい。変ることには勇気がいるが既成概念にとらわれない『時代のクリエーター』になってほしい」

<野村 清水建設社長>
「人も企業も時代を選ぶことはできない。私はどんな時代の変化にも対応できる筋肉質のたくましい会社にしたいと考えている。入社した皆さんも、変化を楽しみながら競争に生き残ることのできる『本当のプロ』を目指してほしい」

 さて、大学の役員、人事部長、総務部長で同感かつ、実践しようとする人は何人いるでしょうか。きっと出来ない理由を並べる人が圧倒的多数と思います。

 という人材像はFMICSビトが常日頃から目標に掲げている行動様式とまったく同じです。

 我々の目標が日経紙が取り上げるだけの人材像であることを確認しつつ、いよいよ18歳人口がさらに2割減っていくこの5年間を、夢を持ちつつ危機意識を起爆剤に、高等教育の新たな価値を創造すべく、変化を楽しみながら臨みましょう。

 学生へのキャリア教育も、FMICSビトを増やしていく布教活動と思えば、あれこれ迷うことはないかもしれません。教職員へのキャリア教育こそが遠くて近いキャリア教育を成功に導く一里塚とも思います。

(坂田 範夫)



ご案内 FMICS 4月例会 (第457回例会)


 平成15年3月、大学経営専門職としてアドミニストレーターが我が国にも誕生しました。FMICS人で桜美林大学大学院アドミニストレーション専攻修了者には研究報告をして頂き、その後、これからの激動時代に大学マネジメントの中枢を担うべきアドミニストレーターはいかにあるべきかを皆さんとともに考えたいと思います。人財ヒューマンネットワークはFMICS御用達の割烹「京都」での懇親会で、更に強いモノにしてください。ご多忙の時期ですが、お仲間をお誘い合わせの上ご参加下さい。

【日時】  平成15年4月26日(土) 午後1時30分〜6時

【会場】  工学院大学新宿キャンパス 4階 0477教室

【テーマ】 桜美林大学大学院・大学アドミニストレーション専攻修了者大いに語る
        専門職としてのアドミニストレーター誕生

【研究課題と発表者】
@新入生家計負担調査からみた私立大学入学者の収入格差
−東京地区私立文系新入生の家計収入の経年的分析−

立教大学 塩野 博雄

A地方単科大学の可能性
−地域の活性化と大学運営−

東京理科大学 柴田 彩子

B 一私立教養大学における教養教育の展開
−大学設置基準大綱化以前のカリキュラム改革−

東京女子大学 深野 政之

C 臨時的定員政策の制定過程の経緯について

桜美林大学 鳥居 聖

コメンテター 「Between」編集長 足立 寛

司会 桜美林大学大学教育研究所 高橋 真義


【参加費】 会員:1,000円 学生:500円 非会員:1,500円

【申込先】 桜美林大学 出光 直樹 idemitsu@obirin.ac.jp



ご案内2 YFN4月例会 (第456回例会)

 今月のYFNは、全国組織の相互勉強会として活動中のNPO法人「知的生産の技術研究会」と「高等教育問題研究会」の共催による合同月例会を開催することといたしました。

 「知的生産の技術研究会」は、1969年に書かれてブームを呼んだ梅棹忠夫の『知的生産の技術』(岩波新書)に触発されて、翌年梅棹氏を顧問にして誕生しました。設立の動機は、制度学校では教えない個別的な自分の生き方に役立つ学びの方法を教える「もうひとつの学校」をつくることであり、これを「知的生産の技術大学」(ちけんだいがく)と称しています。

 講師の大内勲さんは、1943年樺太生まれ。大学では、精密工学を学び、呉羽化学(株)に勤務されています。「自己啓発のための知的勉強法」など著書論文・講演は多数。趣味はスキー・登山・写真などアウトドアー派。人間力たっぷりの方のマルチ発想人の語りにご期待下さい。

【日時】 平成15年4月20日(日) 午後1時半〜4時

【会場】  岐阜市生涯学習拠点施設 ハートフルスクエアーG 2F中研修室

【テーマ】 アンテナピカピカ・マルチ発想人が語る
       知的生産とライフプラン

【発表者】 「知的生産の技術研究会」理事・いわき支部長 大内 勲

【参加費】 社会人:1,000円 学生:500円

【申込&問い合わせ先】 岐阜聖徳学園大学総合企画課 林 憲和 nhayashi@ha.shotoku.ac.jp



FMICS SD 140

●FMICS Staff Development 略して 「SD」は、月例会とは別に、原則として第3週の水曜の夜に開催されているゼミナール型の勉強会です。超競争時代をしたたかに活き抜くためにも、大学人一人ひとりの努力を束ねる場です。

(1)メディアチェック 
 あなたのアンテナが何かを感じた新聞・雑誌等の教育&経済トピックスを、切り抜いて持ちよりディスカッションします。トピックスは厳選して1件、A4縦判にコピー(15枚程度)して、氏名と簡単なMEMOを付してご持参ください。各自5分間程度のコメントをしていただきます。

(2)テーマを定めた継続的な勉強会
 1997年度:国立教育研究所編『日本近代教育百年史』/1998年度:工学院大学と拓殖大学沿革史/1999年度前半:『戦後の大学論』/1999年度後半:中教審、臨教審、大学審等の「答申」/2001年8月から:『英国高等教育制度検討委員会(デアリング委員会)報告』(通称デアリングレポート)/2001年12月からは新企画がスタートしました。前日本私立大学連盟事務局長 日塔 喜一 さんをアドバイザーとしてお迎えしてご自身の著書『機会均等へ向けて』を読み込み、経常費補助金制度の誕生(昭和45年)以降の私学経営の軌跡をチェックしました。
 なお、しばらくの間メディアチェックに専念し、2003年度開始予定の政策提言プロジェクト(仮称)への準備にあてます。

【日時】 平成15年4月16日(水) 午後6時30分〜8時30分

【会場】  工学院大学新宿キャンパス 高層棟27階 2710ゼミ室

*教室変更もありますのでご注意ください。

【テーマ】  ポリシーマインドを磨こう
       高等教育・経営政策ゼミナール −8−

【申込先】 桜美林大学 出光 直樹 idemitsu@obirin.ac.jp



速報 5月のFMICS

 国立大学法人の誕生。国公私立大学の三つ巴の競争はますます激化します。大学を活き活き活かすために、ITは果たしてして有効なのか否か。

 システム企画・開発元の(株)ジンコーポレーション 代表取締役 田淵 義朗 さんと、ともクリエーションズ 代表取締役 渡邊 桃伯子 さんに企業人としての視点から大学への提言して頂きます。

【日時】 平成15年5月31日(土) 午後1時30分〜6時

【会場】  工学院大学新宿キャンパス

【テーマ】 大学を活き活き活かす 検証 競争の時代にITは有効か

【ゲストからの一言】

 田淵義朗さんからいただきましたテーマは「学生獲得CRMシステムの開発秘話と大学業界へのアプローチについて」です。

 昨年度から、専門学校大原学園で稼動している学生獲得支援システム(CRM)は、導入後から受講生が大幅にアップした。それは何故なのか。また、このシステムはどのような背景の中から生まれたのか。専門学校業界の熾烈な学生獲得競争のなかにあって、現場の担当者の熱き思いは、システム設計・開発を担当した我々の心を大きく揺さぶった。一つの大きなヒント・・・それは「入学前ガイダンス教育プログラム」の思想である。設計スタッフは、資料請求者(第一次接触者)を逃さない、見込み客を顧客に、そしてロイヤル顧客にしていく手法をITで実現することを考えた。われわれの業界でいうところのCRM(カスタマ・リレーション・マネジメント)システムである。  大学業界と専門学校業界と事情は違うかもしれないが、冬の時代を迎えた大学にも、きっと役に立つITのお話。そしておまけで、クライアントには教えたくないIT業界の裏話も話します。  今年度より地方の私立大学で、実験導入を行います。大学システムははじめての経験なので、皆様よりご意見、ご感想をいただければと思います。



真義ゼミ(教学支援特論)のご案内

 平成15年度春学期の真義ゼミ・教学支援特論(2単位)は、この4月17日から毎週木曜日・午後6時20分〜9時30分まで、2コマ連続の授業(宿題はしっかりと出します)となります。FMICSの皆さまには是非参加下さい。詳細は、高橋真義(E-mail shingi@obirin.ac.jp)までご照会ください。



FMICS SYMPOSIUM 2003
日程は8月2日&3日に決定!!

●FMICS SYMPOSIUM 2003 の日程が決まりました。今年も一人でも多くの皆さまにご参加いただきたく、8月のはじめといたしました。●大競争時代の時代にあって、大学が活き活きとするためにも“まなびっと”のミッション・パッション・ アクションをキリキリと束ねたいものです。

元気元気元気宣言 FMICS 2003

がスローガンとなります。●現在、SYMPOSIUM 企画委員会では、新しいプログラムを企画中です。詳細は5月号FMICS BIG EGGにてアッピールさせていただきます。●8月2&3日は、フルオープンでご参加ください。スケジュールボードには、早速赤丸をお付け下さい。