BIG EGG(紙版)7月号の発送作業は、
7月9日(水)6時〜(先行隊は午後2時〜) 恵比寿・日能研ビル (東京都渋谷区恵比寿西2-3-14) にて行います。 皆様のご参加をお待ちしています!!! |
2003年6月のFMICS
再建の秘けつ「奥田碩日本経団連会長は2日午前、都内で開いた世界ガス会議東京大会で講演し、・・・『原因のひとつは皆が共有できる明確な将来ビジョンがない点にある』と指摘。『そのため、改革が対症療法的になりがちで、既得権益を守ろうとする官僚や一部の政治家によって、改革が先送りされたり、骨抜きにされたりしていることがあるのではないか』との見方を示した」(日本経済新聞2003年6月2日) 絶好調のトヨタ自動車株式会社を率い、財界を代表する経営者は、民の立場から政・官の改革への抵抗を批判した。その原因は、「明確な将来ビジョンの欠如」である。 一方、「日産自動車のカルロス・ゴーン社長は7日、神奈川県箱根町で開かれた品質管理シンポジウムで講演、『グループ全員が力を結集できるビジョンを掲げ、一人ひとりが実行できる計画を立案。成果を測定して公正に評価する方法でやる気を引き出した』と再建の秘けつを語った」(同紙2003年6月8日) 空前の黒字によって、巨額の負債を前倒しで返済し、日本経営史上に金字塔をうち立てた外国人経営者は、再建の出発点は、「力を結集できるビジョン」であるとした。 奥田会長は「個々の国民や企業が目標を掲げ、努力し続けることが『日本が活力を取り戻すエネルギーの源だ』と訴えた。日本経済については、『日本全体が出口の見えない暗闇に入り込んでしまったような状況が続いている』と、危機感を表明した」(前出)という。 では、ライバル企業のゴーン社長が説く暗闇から抜け出す方法とは何か。 「日産が苦境に陥ったのは円高やグローバルな販売競争など外部要因ではなく『問題は社内にあり、経営者がやるべきことをやらなかった」 「『経営者は問題を過小評価する傾向がある・・解決するには問題を特定することが一番大切』と先送りの危険性に言及」 「『過小評価したり隠したりすれば、問題は大きく、複雑になる。病気と同じだ』と日本の現状に警鐘を鳴らした」 「『リーダーを育成するには候補者に難題を与えなければならない。難題を克服した人間が貴重な人材』と強調」 日本株式会社は、問題を過小評価して先送りし、病状は悪化の一途をたどっている。守旧派はビジョンの欠如をよいことに、既得権益の維持をしたたかに続けている。この閉塞感を打ち破るのは、社員の力を結集できる経営者の明確なビジョンである。 奇しくも、日本を代表する自動車メーカーの経営者の指摘は同じであった。ビジョン形成を怠った大学は日本経済と同じ運命を辿る。 (山本 明正) 私立大学と国立大学法人化「今大学が問われているのは、社会と歴史に対して、どのような貢献ができるかということです。どのような大学改革ができるか、政策として提起しないといけません。生き残りと言う言葉は、社会的貢献なり歴史的役割を果たそうという積極的息吹が感じられないので嫌いです」(日経新聞2003年5月25日) 立命館の川本八郎理事長の発言である。川本理事長は昨今、大学改革の最前線を歩む立命館大のトップであり、事務職員出身の理事長としても著名である。「大学の生き残り」との言葉に対し、嫌悪感を語っているが、これはまさにFMICSで使われる「生きのぼり」の言葉につながるのだろう。川本理事長は同紙面で現在国会審議中の国立大学の法人化について次のように語っている。 「独立法人化では限界がある。圧倒的多数の国立大学は民営化すべきである。国立大学はわずかにして、切磋琢磨したらいい。私立大学の良さは、高い授業料で教育研究を営んでいるから、常に学生や父母のことを意識しながら教育研究の営みをしていることです。税金に頼っている国立大学はそんなこと考えていますか?国民と共に歩んできた大学は私学です。国立大学ではありません」 この発言からは私学、そして立命館大の果たしてきた役割に対する強烈な自負が感じられる。 一方、法政大の清成忠男総長・理事長は近著の「大淘汰時代の大学自立・活性化戦略」(東洋経済新報社)で法人化について以下の通り語る。「設置者は依然として国であり、"親方日の丸"的状況を脱することは容易ではない。自由度が若干広がるにしても、自己責任の度合いは私立大学を設置する学校法人とは大きくかけ離れている」 現在、国立と私立の間の大きな問題点は国費投入額の格差である。2001年度ベースで比較すれば、短大を含む私立大学の学生一人当り国費投入額は約15万円であるが、国立大学では約250万円に及ぶ。国立大学には私立大学の16.7倍の国費が投入されている。さらに私立大学は国立大学と比べ、学生納付金では1.7倍、学生数では3.6倍の高負担を負っている(前掲書資料)。清成理事長は「大学全体を活性化するためには、設置形態にかかわらず競争条件のイコール・フッティングの実現が重要ではあるまいか」とも述べている。また前掲書で大阪大の本間正明教授の発言を以下のように引用している。 「国立の大学人は国立大学が何のために存在し、私立大とはどこが違うかを積極的に説明する義務を負っている」 一橋大の石弘光学長は「私はこの法人化を契機に大学改革を本格的にすすめ、様々な問題を抱えている日本の大学を再活性化させるべきと考えている」と述べている(日経新聞2003年6月7日)。私も石学長の意見に同感である。ただしこの記事には、国立大学の存在意義および学生数の7割以上を占める私立大の役割への言及がなかったのは残念だった。 (法政大学 金田 淳一) 国立大学の独法化についての雑感私が編集に関っているBetweenの7・8月合併号で、「独法化とその周辺」というタイトルで特集を組む予定となっている。その取材の一貫で、先日、文部科学省の高等教育局大学改革官室のA氏にインタビューした。A氏は、国立大学の独法化の最大の狙いは組織の活性化にあるという。そして注目する組織の活性化のポイントとして、
A氏は現在、国立大学の独法化に向けての取り組みの充実度は総じて西高東低だという。そして充実度が高い大学として、広島大学、九州大学、名古屋大学、山口大学をあげた。確かにこれらの大学のホームページを見てみると、独法化に向けてしっかり準備をすすめていることがわかる。一方でぬるま湯のなかで何の危機意識も持たず、のほほんとしている国立大学も少なくないようだ。 某地方国立大学を取材したが、あまりの対応のそっけなさに取材を始めて15分で帰ろうかとすら思ったくらいであった。「そのことはまだ決まっていない」「そこまでのことは私の口からはいえない」「ホームページに載っているので見て欲しい」のオンパレードで、結局、肝心の取り組みの具体的中身についてはほとんど聞き出せずじまいであった。ただ、私もせっかく飛行機に乗って半日かけて訪問した以上、何も情報が得られないのではむなしいので、場が馴染んできた頃合を見計らって、個人的意見でいいからと食い下がってみた。すると、独法化準備で雑用が増えて大変だといったような不満は山のように吐露された。 この大学で私の取材に対応されたのは年配の総務課長補佐であったが、このときほど言われたままの業務をこなすだけの立場に甘んじてきた、これまでの国立大学の事務職員の意識改革こそが独法化最大のKFSであることを痛感したことはない。前述の文部科学省のA氏は「これまでは国立大学の理事長は文部科学省そのものだった。しかし独法化後はそれぞれの国立大学法人の学長が理事長となり、学長を支える役員組織が理事会になる」と言う。しかし、そのためには独法化法案にもあるような、学外からの人材を登用した運営制度も必要だが、それ以上に大学職員の1人1人が自分たちの大学をどう変えるべきなのかを必死に考えて取り組んでいくようなボトムアップ型の改革が何よりも重要になる。今回取材した某国立大学のように、中間管理職の職員が「業務が上から降ってきたので仕方なくやらされている」と言っているような状況では何も変わらないだろう。 そのためにも有能な事務職員は若いときから抜擢されるような人事評価制度や、さまざまな場面で能力が発揮できるようなマトリックス型組織の構築が不可欠となる。そして、何よりも重要なことは誰のために大学改革をするのかということを常に考えて行動することである。ともすれば学生不在の独法化論議がはびこっている現状があるような気がして憂えているのは私だけなのであろうか。 (Between 足立 寛) ご案内1 FMICS 6月例会 (第460回例会)FDが大学を変える。今や大学の授業は、教員と学生がともに改善していくものとなりつつある。特に、初年次教育での共同作業は学生のやる気を明らかに喚起する。最新情報を沢山紹介します。 【日時】 平成15年6月21日(土) 午後1時30分〜6時 【会場】 工学院大学新宿キャンパス 4階 0477教室
【テーマ】 大学を活き活き活かす・これからのFDを考える
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