2004年7月のFMICS
現代的教育ニーズと自己点検・評価と危機管理
そして求められるもの
「大学の優れた教育改革の取り組みを選び、補助金を重点配分する文部科学省の新規事業現代的教育ニーズ取組支援プログラムの公募要領が29日、まとまった。テーマは(1)地域活性化への貢献(2)他大学との統合・連携による教育機能の強化(3)知的財産関連教育の推進(4)仕事で英語が使える日本人の育成(5)人材交流による産学連携教育(6)IT(情報技術)を活用した実践的遠隔教育―の6つ。 」(共同通信社2004年6月29日)
昨今、あらゆるものの動きは早く慌しい。この「現代的教育ニーズ」も例外ではなく、公募要領がまとまり内容が通知・公表されたのが6月30日、そして応募期間は7月20日〜23日の3日間、その間は1ヶ月もない。常日頃から、教育改革に取り組み、自己点検・評価し、自学および高等教育の現状、つまり内外の状況を適度な感度をもって把握していなければ、応募するのは難しい。6月30日の公募要領を見て「はい、始めましょう」とゼロから準備していては、現実的には、まず応募は不可能に近いのである。応募する機会は均等であるが、大学間にある、情報探索・収集・分析能力、推進力の差は、規模の大小、組織体制、立地などの差異により当然均等ではない。ただ、自覚することにより、さらに伸ばせる部分、補っていくことができる部分もまたある。
「知らなかった」で済んだのは昔のこと。危機管理に関連して、製造業では、自分たちが製造する製品の品質もさることながら、調達する原材料に至るまで、使用禁止物が含まれてないか、不正な労働によって調達されていないかなど、詳細な調査票提出させ、また自らも厳重なチェックを入れるようになってきているという。古きは、某乳製品製造メーカー、最近では某自動車メーカー、どんなに偉大でも、一度揺らいだ信用を取り戻すのは容易ではない。大学もまた然り。何も起きない方がよいのだが、何かあっても「知らなかった」では、まず通せない。自己点検・評価の実施、第三者認証評価を受けること、自ら情報公開することなどは、「言われたから」ではなく、自覚し、次に繋げていくため、活き残るために必須だからと捉えたい。
活き残るために、常に自己点検・評価を行ない的確に状況を把握していれば、「特色ある大学教育等支援プログラム」や「現代的教育ニーズ」などの応募、第三者認証評価の実施でも、そんなに慌しく騒がなくても対応し得る。そうしていけば、「そんなことは、知らなかった」「いつ、そんな風になったんだ」というような、いつのまにか“始まっていて”、いつのまにか“終わっていた”ということは起こりにくくなるのではなかろうか。現場に余裕がなくなってきているのは強く実感する。しかし、笑顔で活き残るためには、常にアンテナを磨き、そして、アリとキリギリスなら、アリであるよう心がけたい。
(金成 泰宏)
「常勤の研究者」以外でも科研費の申請が可能に
昨年の秋に、H16年度申請から研究機関としては「企業の研究所」等についても指定を受けられることに、また、数十万円規模の1年間の研究(「奨励研究」)について、企業の職員なども応募できるようになっていた。
4月25日の毎日新聞に「文部科学省は科学研究費補助金(科研費)の応募資格を見直し、大正時代から続いてきた「常勤の研究者」という要件を約80年ぶりに撤廃することを決めた。・・新しい資格は、文科省が指定する研究機関(大学、高専、研究所など約1600カ所)で研究をしていると機関が認めることが要件。肩書や勤務形態、有給・無給の別は問わない。これにより、非常勤講師や客員教授、名誉教授、無給の博士研究員、技官などの職員にも門戸が開かれる。」との記事が掲載されていた。
まさしく「田中耕一」効果といっても過言ではなく、更に一歩進んで申請対象者が拡大したことになった。
しかし、心配がないではない。基礎科学分野や社会科学分野の研究がいわゆる「冷や飯」を食うことになるのではないかという恐れである。
新規採択課題数は平成6年度に2万件を超えたが、それ以降採択数はほとんど増えなく、採択率もここ4年間は23%台(平成6年度は28.6%)という現状である。一方予算は平成6年度に824億円、平成15年度は1765億円へと急増しているのであるが。
わが国の総合的・基本的な科学技術政策は総合科学技術会議(平成13年1月、内閣府に設置)が企画立案、総合調整を行うことになっている。既に周知のことであるが、政府予算の骨格がここで決まっているといっても言い過ぎではない。
昨年11月に、ニュートリノの新しい研究計画が総合科学技術会議の評価でCランク(最下位)となった。小柴昌俊さんが納得できないと表明し、その結果として計画の見直しが行われ、予算は認められた。
ノーベル賞受賞者の異議申し立てがなければ、このような結果になったのであろうか。
昨今、何事も経済原理が優先される土壌が出来上がっているように感じてならない。教育は短期間には成果が出しにくい分野であり、先人たちは「教育は国家百年の大計」と位置付けていたのである。
(鳥居 聖)
FMICS SD 154
●FMICS Staff Development 略して 「SD」は、月例会とは別に、原則として第3週の水曜の夜に開催されているゼミナール型の勉強会です。超競争時代をしたたかに活き抜くためにも、大学人一人ひとりの努力を束ねる場です。
(1)メディアチェック
あなたのアンテナが何かを感じた新聞・雑誌等の教育&経済トピックスを、切り抜いて持ちよりディスカッションします。トピックスは厳選して1件、A4縦判にコピー(15枚程度)して、氏名と簡単なメモを付してご持参ください。各自5分間程度のコメントをしていただきます。
(2)テーマを定めた継続的な勉強会
いよいよ2004年4月から国立大学法人が誕生しました。予想を遙かに超える状況変化にいかに対処すべきか。ミクロな視点ではなく、大所高所からの意見交換をする場にしたいと思います。
【日時】 2004年7月27日(火) 午後6時30分〜8時30分
*今月は火曜日ですので、ご注意ください。
【会場】
工学院大学新宿キャンパス 高層棟27階 2710ゼミ室
*教室変更もあり得ますのでご注意ください。
【テーマ】 激変する時代を強かに活きる
大学の危機回避を考える −7−
【参加費】 会員:500円 学生:300円 非会員:700円
【申込先】 出光 直樹(桜美林大学) idemitsu@obirin.ac.jp
速報 8月のFMICS
●やっとかめやなもFMICS 名古屋(YFN)の《学びのカタチ》を束ねる恒例の第18回 YFN シンポジウムをご案内します(詳細はBIG EGG 8月号でご案内します)。
【日時】 2004年9月4日(土)&5日(日)
【会場】 昼の部:岐阜聖徳学園大学 羽島キャンパス本館
/ 夜の部:浄土院
【テーマ】 大学人笑顔たくさん宣言
大競争時代をいきいき活きる元気びと
【プログラム】
9/4(土)
●シンポジウム 1時〜5時
多摩大学教授・元経営情報学部長 松浦 敬紀
NHK岐阜放送局チーフアナウンサー 秋田 健
総括 桜美林大学 大学教育研究所長 高橋 真義
●懇親会 鵜飼鑑賞
●夜の部 岐阜市柳ヶ瀬近く 浄土院
オールナイトFMICS 参加者全員
9/5(日)
●観光 岐阜県武儀郡洞戸村 奥長良川
高賀渓谷・高賀神水庵見学・鮎やな漁料理
長良川古典鵜飼再生の会事務局長の解説付き
*JR新幹線 岐阜羽島駅 午後4時解散(予定)
【会費】 昼の部のみ千円 夜の部まで1万円 両日1万5千円
【申込&問い合わせ先】 高等教育問題研究会名古屋支部事務局
林 憲和 (岐阜聖徳学園大学 総合企画課)
nhayashi@ha.shotoku.ac.jp
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