2005年8〜9月のFMICS
大学倒産はもはやニュースにならない(鳥居 聖)
志のある経営者(金田 淳一)
YFNシンポジウム 9月10日(土)〜11日(日) 岐阜
FMICS SD 8月24日(水) 工学院大学:新宿
FMICS淵野辺SD 8月26日(金) 国連大学本部:表参道
速報9月のFMICS 9月17日(土) 工学院大学:新宿(予定)
大学倒産はもはやニュースにならない
大学倒産(民事再生法適用)のニュースが報じられているが、いつまでこの事態をマスコミの関心を引きつけることが出来るのであろうか。どんなに考えても、片手の数の出来事が発現してしまうとニュース価値としての意義は薄れてしまうであろう。
営利の民間会社であれば、損益分岐点を大幅に超えている事業は、廃止もしくは縮小というのが常である。もし、その決定の遅れが会社に損害が及ぼした場合には、究極的には株主からその責任を追及されるのが一般的である。
現にある学校法人の理事長も本業の民間企業が倒産したため、その責を問われている。
米国でも過去に、18歳人口の減少に伴い、学生確保が困難となり倒産(廃止)された大学は多い。これらの場合の多くは、経営を預かるアドミニストレーター達は、適切にその終焉をはかるべく、統合、合併などの手段を駆使してその責任を全うしたのである。米国の場合、作為よりも不作為の方が責任が重いのである。つまり、結果責任よりも経過責任に重きが置かれているのである。
米国では M & A(Mergers and Acquisitions)により、大学の再建という筋道も整備されている。
日本でのこの手法としては、株式売買、合併、営業譲渡、株式交換・移転、会社分割、第三者割当増資などがあるといわれている。
こと学校法人で考えうる手法は、合併・経営譲渡のみである。同じ学校という名前でも、種はまったく違っており、DNA分析するまでもなく、属さえも異なっている。
しかし、この事実が分かっていながら、それを無視しあるいは認識しないで、新種の誕生を推進、援助出来ると錯覚している考え方がある。それは、古代エジプトに起源を持つ錬金術によく似ていると考えている。中世の錬金術師達は、科学実験により金・銀が作れると固く信じていた。結果はご存じの通りであり、それが化学技術では作れないことを示したのが近代化学である。
その化学実験の結果、合金などの新たな物質は誕生し、いまや現代社会にはなくてはならない物質があるのも事実である。
私は、ごく最近まで確信していたことがあった。進化は退化と裏腹にあり、進化出来なければ退化し初期原型に止まれることは可能であると。
それは幻想に過ぎなかった。
数年前に短大を廃止した高校法人が、今度は高校廃止という手段を取ったのである。
老舗の社長が経営していた学校法人であったが、地元ではこの事実をあまり知らない。本業ではないので、世間に周知してこなかった。
この校地・校舎を取得するのは、新たな学校を設置希望する教育関連企業である。
18歳人口の復活が見込めない状況に於いて、新たな間口開発は必須である
(鳥居 聖)
志のある経営者
居食屋「和民」といえば多分知らない人はいないだろう。駅前周辺に現在約350店舗を構える。店員の気持ちいい対応は特に有名である。
「和民」から始まり、食事の要素を充実させた「和み亭」、より低価格で楽しめる炭火焼だいにんぐ「わたみん家」、静かに語り合う空間を意識した語らい処「坐・和民」の開店など、お客が何を求めているか、問い続けている。
この居食屋の経営者が「ワタミ」(株)社長の渡邉美樹氏、45歳である。最近、渡邉氏に関する著書、高杉良『青年社長』(角川文庫)、渡邉美樹『新たなる「挑戦」夢をカタチにする時』(ソフトバンクパブリッシング)を読み、この経営者に対し、親近感を持つと同時に、その志の高さ、将来を見通す眼の確かさに唸った。高杉氏の著作では、大学を卒業したばかりの渡邉氏が佐川急便のセールスドライバーをして資金を蓄えながら、やがて「和民」を開業し、持ち前の明るさと行動力で店舗拡大・企業発展させていく姿を生き生きと描いている。
「外食産業の会社」から「外食産業もやっている企業グループ」への変革。上記著作ではワタミが創業21年目を迎え、農業、環境、教育、医療介護など、新事業領域へ本格的に参入し、チャレンジする日々が綴られている。チャレンジの背景にはどのような哲学・戦略があるのか、渡邉氏は次のように語る(「Works」70号リクルート ワークス研究所)。「従来、売上や利益を上げることがよい経営の基準とされてきました。しかし21世紀は、その企業が社会にどれだけよい影響を与えるかが評価基準になります。ワタミグループの経営は、すべてこの価値観から導き出されており、今回の新規事業参入もそこにダイレクトにつながっています」と語る。「費用対効果」に対する「存在対効果」の概念、すなわち投下したコストに対する効果を最大にする経営ではなく、自分たちが関わることによって周囲から得られる感謝の念、「ありがとう」という言葉を最大にする経営を目指すということである。売上げと利益はあくまで「存在対効果」を最大化するために必要なもので、この優先順位を逆転させてはならないと力説する。また、「私が事業の原点としていつも振り返るのは、そもそも人間は何のために生まれてきたのか、自らの人間性を高めるためではないのか、もちろん私自身もそのために働きたいですし、同時に事業を通じて従業員が人間性を高めていく手伝いをするのが経営者の役割、醍醐味と考えています」とも述懐している。
渡邉氏は自著で現在、郁文館中・高理事長として教育経営に携わる立場から、教育に対する補助金システムの改革、「バウチャー制度」の必要性を提案している。学費を負担する父母の立場にたった施策であり、なるほどと頷ける内容である。ぜひとも皆さんにご一読を薦めたい。
(金田 淳一)
ご案内 第19回 YFN やっとかめやなも
FMICS名古屋 シンポジウム(第507回例会)
やっとかめやなもFMICS名古屋(YFN)の《学びのカタチ》を束ねる恒例の第19回YFNシンポジウムをご案内します。
まずは、聖徳学園岐阜教育大学でのシンポジウムです。懇親会は長良川での歌舞音曲ありの鵜飼い観賞とともに乾杯。夜プロは会場を浄土宗本堂に移しますで踊る企画です。翌日の岐阜観光は温泉にも入ります。今年も岐阜は盛りだくさん。お仲間をお誘い下さい。心からお待ちしています。
【日時】 2005年9月10日(土)13:00 〜 11日(日)16:30
【会場】
シンポジウム: 岐阜聖徳学園大学 羽島キャンパス本館 8階会議室
オールナイトYFN: 浄土院 岐阜市東駒爪町16 電話:058-264-0389
【テーマ】 可能性たくさん宣言 YFN 2005
私たちは明日を創る“WITHびと”になる
【プログラム】
9/10(土)
●第1部 講演 13:00〜16:30
「苦節40年 大学開放の伝道者 大学開放の可能性を探る」
(財)全日本大学開放推進機構理事長・上智大学教授 香川 正弘
「変貌を遂げた岐阜 野武士軍団 岐阜県の改革を語る」
岐阜県理事・農林経済局長 長屋 栄
コーディネーター FMICS代表・桜美林大学大学院教授 高橋 真義
●第2部(夕方の部) 17:30〜20:30
懇親会 鵜飼1303年記念 長良川鵜飼鑑賞 歌舞音曲あり
●第3部(夜の部) 22:00〜23:00
「スローライフ岐阜 長良川から発信」
NPO長良川環境レンジャー理事長 柴田 甫彦
「鈴木正三顕彰と復元能への夢」
愛知淑徳大学総務課・鈴木正三研究会 清水 正澄
●第4部(オールナイトの部) 24:00〜朝まで
参加者全員発表&朝まで村上元気塾(予定)
前早稲田大学副総長・常任理事 村上 義紀
9/11(日)
●第5部
朝茶と中世文化の華 今様 発祥の地探訪
朝の茶 浄土院井中庵 亭主・安藤昌空上人
観光 梁塵秘抄 今様の地 大垣市青墓探訪
昼食 池田温泉入浴
●解散 J R新幹線 岐阜羽島駅 16:30
【会費】 昼の部のみ千円 夜の部まで1万5千円 両日2万円
【申込&問い合わせ先】 高等教育問題研究会名古屋支部事務局
林 憲和 (岐阜聖徳学園大学 総合企画課 058-279-6710)
nhayashi@ha.shotoku.ac.jp
FMICS SD 167
●FMICS Staff Development 略して 「SD」は、月例会とは別に、原則として第3週の水曜の夜に開催されているゼミナール型の勉強会です。超競争時代をしたたかに活き抜くためにも、大学人一人ひとりの努力をキリキリと束ねなければなりません。そんなことを具現化する場です
(1)メディアチェック
あなたのアンテナが何かを感じた新聞・雑誌等の教育&経済トピックスを、切り抜いて持ちよりディスカッションします。トピックスは厳選して1件、A4縦判にコピー(10枚程度)して、氏名と簡単なMEMOを付してご持参ください。各自5分間程度のコメントをしていただきます。
(2)テーマを定めた継続的な勉強会
私たちの予想を遙かに超える状況変化にいかに対処すべきか。大学の危機回避について、ミクロな視点ではなく、大所高所からの意見交換をする場、それがSDです。
SDは難しいという声があります。ちょっとだけプロッポイかもしれませんが、決してそんなことはありません。皆さまには、お気軽にご参加下さいますようご案内いたします。
【日時】 2005年8月24日(水) 午後6時30分〜8時30分
【会場】
工学院大学新宿キャンパス 高層棟27階 2710ゼミ室
【テーマ】 激変する時代を強かに活きる
大学の危機回避を考える −20−
【参加費】 会員:500円 学生:300円 非会員:1000円
【申込先】 出光 直樹(桜美林大学) naoki@idemitsu.info
淵野辺SD 5
●FMICS の新しい企画が始まりました。ゼミナール型勉強会「SD」を、首都圏西部地区でも開催します。今月は、表参道駅徒歩5分の国連大学本部が会場となりますので、ご注意ください。
(1)メディアチェック
あなたのアンテナが何かを感じた新聞・雑誌・資料等のトピックスを、切り抜いて持ちよりディスカッションします。10枚程度コピー(原則A4版)してご持参ください。
(2)『Between』誌の講読
会員の足立さんが編集長を務める高等教育情報誌『Between』(進研アド発行)をメインテキストにして、高等教育をめぐる問題を勉強します。
8〜9月は、8月1日発行のNo.215号の中から、気になった記事をディスカッションします。
【日時】 2005年8月26日(金) 午後6時20分〜8時20分
18:20に国連大学本部1階ロビーに集合してください。
【会場】 国連大学本部 表参道駅徒歩5分・渋谷駅徒歩8分
【申込先】 出光 直樹(桜美林大学) naoki@idemitsu.info
速報 9月のFMICS
国公私立大学がバトルロイヤル的競争の明日はどこに向かうのか。歴史は明日を語る。明治・大正・昭和の近代日本の知識人は、大学をどこに向かわせようとしたのか。近代日本の私学経営における「学是」について検証します。
【日時】 2005年9月17日(土) 午後4時〜6時30分
【会場】
工学院大学新宿キャンパス (予定)
【テーマ】 大学競争時代の原理原則を考えるために
近代日本知識人と大学経営
【発表者】 前拓殖大学日本文化研究所教授 池田 憲彦
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