過去のお知らせ一覧へ戻る2007年5月のFMICS
カリキュラムについて考える先月はじめ、極めてショッキングなニュースが報じられた。 ゼミの宿題を提出しなかった学生達に対して、教員が「提出しなければ留年」などとメールを送信した。「留年すると分かっています。人生もやめます」と担当教員宛にメールを返信した学生は、後に自らの命を絶った。大変残念な結果となってしまった。 カリキュラムは誰の物なのか、 大学と学生との約束(契約)事項なのではないか、各科目を担当する教員との契約ではないはずである。しかしながら、卒業に必要な必修科目となると、単位の未修得の意味するところは即ち再履修ということにならざるを得ない。 ずいぶん前になるが、平成3年3月に某大学においてある学部の卒業予定者は1124人であったのだが、そのうち留年者は257人となった。そのうち1科目だけの単位を落とした学生が148人。追試を含め3回も試験を受けて落ちたということであった。 設置基準の大綱化以前のことであり、カリキュラムに自由度がいまほど無かった事は、想像に難くないが、ここまでの厳格な評価が行われていたことは驚くべき事実でもある。 もちろん正規の手続きを経るため3月上旬、教授会で卒業判定会議が開かれ、留年者を決定した。その後、該当学生に留年通知が届いたのである。この措置に不服だった学生達は、学部長宅まで押しかけて説明を求める騒ぎとなったという。 大綱化以降、カリキュラム改革は未だに進行中であり、むしろ、学生に学びたい学問分野を選ばせるために、たくさんの授業科目を用意している傾向がここ数年強くなってきたように感じている。それは、ゆとり教育世代が大学に進学してきていることと無縁ではあるまい。 先月16日に、平成17年度の大学における教育内容等の改革状況が取りまとめられ文部科学省から公表された。 私立大では補習授業の実施について大幅に増加したが、学力別クラス分けは減少した。これを解すると、学力格差は少なくなったのではなく、むしろ学力の上位者が少なくなったと読むべきであろう。 また、ボランティアに関する講義科目開設については、学生による授業評価の結果を改革に反映するための組織的な取り組みも大幅に増加した。 厳格な成績評価の実施についての指標をGPA制度の導入状況で計っている面がある。米国ではGPA制度は一般的であり、学生に対する個別の履修指導は不可分である。しかし日本では、GPA制度導入大学の68%しか、この履修指導を実施していない。そして履修指導と言ってもいろいろな形態が在るのも事実であり、オフィスアワーの時間を明示している大学は少数派である。制度導入の旗振りを行うならば、制度枠組みを明確にした上で行うべきではないか。 (鳥居 聖) 大学史と総索引創立百年を迎えた大学の年史の多くは、通史編に加え詳細な資料編を作成するようになりました。 例えば、東京大学百年史は、「通史編」「資料編」「部局史」という構成で全10巻にも及ぶ大作です。 私学においても、総合大学が編纂した百年史は、この例によっています。 この巻・編構成は、自治体史の編纂傾向の変化が影響していると考えられます。市町村史は、昭和50年代に、「通史編」「資料編」という構成が主流を占めるようになります。「資料」の重要さが認識されたことの表れだと思います。 資料の重要さを認識していても、知りたいことを即座に簡便に引き出すことは容易なことではありません。「資料」は、事実をありのまま伝えるものですから、ただ編集方針に沿って並べてあるというのでは宝の持ち腐れです。 制作側は、通常、利用・検索の便にまず目次を、次いで索引を用意します。また、編年順の事項(出来事)一覧として、「年表」が多く編まれています。 大学史「資料編」にとって、目次は必須ですが、索引はどうでしょうか。 大学史で、「索引」が用意されているのは、まず通史編のみと言っても過言ではないでしょう。資料編の索引は、ほとんど作成されていないと思います。また、作成したとしても、大量な資料を相手にして、人名索引があればましな方ではないでしょうか。「資料の活用」を考えるならば、甚だ不十分です。 「過去に学び、良き将来を模索する」ためには、「資料」が十分に理解され活用されることが大事です。 すなわち、「総索引」が是非とも必要ということです。 構想を練り、方針を決めて項目選定するとすれば、それ相応の時間と労力を要します。 索引の項目は、既定の方針や手法が定まっているわけではありません。当該大学史単位で、智恵を絞って方針や基準を決めることになります。 魅力ある総索引の編集は、資料を引き立てきっと輝かせてくれることでしょう。「総索引」は、「年表」と組み合わせて利用することで、一層利便性が向上し、「資料編」活用に寄与すること大であること請け合いです。 これからも大学史は、周年等折に触れて編纂がなされるはずです。各大学とも活用性に富んだ大学史を編纂されることを願っています。 (拓殖大学創立百年史編纂室 武田 秀司) ご案内1 FMICS 5月例会(第540回例会)今では多くの大学が当たり前のように、オープンキャンパスを行っています。我が国では、いつ頃からこの受験生・父兄と相対で大学が情報を発信するカタチのオープンキャンパスは行われたのでしょうか。オープンキャンパスに参加した受験生は、ほぼ8割に近い割合で「この大学に進学したい」と感じると言われています。そして、「この大学に進学したくない」と感じた受験生は、その最大の理由として、学生・教職員の態度・説明の悪さを上げています。如何にして受験生は集客するか。如何にして個性溢れる大学であるかを自己表現したらよいのか。オープンキャンパスの歴史を検証し、高校生対象の調査結果も交えながら、新しい時代のオープンキャンパス戦略の構築の必要性について皆さまと一緒に考えます。発表者は、オープンキャンパスを語らせればこの人ありと言われる小島理絵さんです。皆さまには、お若い職員をお誘い合わせの上ご参加をお願いいたします。 【日程】 2007年5月19日(土) 午後4時〜午後7時 【会場】 工学院大学新宿キャンパス 4階 0477教室
【テーマ】 激動の時代の大学の自己表現のカタチを考える
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