過去のお知らせ一覧へ戻る2007年9月のFMICS
平成19年度学校基本調査速報から考える8月上旬に平成19年学校基本調査速報が公表された。詳しく見てみよう。平成19年3月の高等学校卒業者数は114万7千人(前年より2万4千人減少)となっているが、大学(学部)・短期大学(本科)への入学志願者の比率(入学志願率)は58.7%(前年度比+1.3ポイント増)である。 大学・短期大学進学者(過年度高卒者を含む)は53.7%(前年度比+1.4ポイント増)で5年連続して増加し過去最高となった。大学進学者(過年度高卒者を含む)だけでも47.2%(前年度比+1.7ポイント増)で4年連続して増加し過去最高となった。 また、専門学校への進学者数を合計すると76.3%(前年度比+0.4ポイント増)となっている。 なお、大学(学部)・短期大学(本科)の入学者数は69万8千人(前年度より4千人増加)となっている。このうち女子は33万3千人(前年度より4千人増加)となっており、大学(学部)の入学者数は8千人増加(前年度比+3.3ポイント増)している。 したがって、今年度も大学進学者数を押し上げているのは女子であることが分かったが、その動向は、全体像だけ見ていると見落としても全く気がつかない。 更に、平成19年3月の高等学校卒業者のうち都道府県別の大学等(大学学部、短期大学本科、通信教育部、別科、高等学校等専攻科)の進学率は、30%台−6(前年より2減)、40%台−16(前年より4減)、50%台−23(前年より5増)、60%台−2(前年より1増) となっており、最大で25.5(前年より△2.2)%の開きがある。さらに専修学校(専門課程)進学率を加えると、50%台−9、60%台−23、70%台−15 となっており、その差は21.4%に縮まる。因みに、高等学校卒業者の進学率だけで後者の率を上回っている都道府県は7(前年より1増)ある。 これだけ、都道府県により大学等への進学率に格差があるのに関係者以外に殆ど知られていない状況が放置されている。 文部科学省は、国の責任により義務教育の結果の検証を行う観点から、全国的な子ども達の学力状況を把握する「全国学力・学習状況調査」を平成19年度から実施した。しかし、高等学校は義務教育ではないので実施されない。 先日行われた全国都道府県・指定市教委の担当者会議で「9月中をめどに全国学力調査の結果の公表の準備を進めている」と初等中等教育局長は述べたと報じられている。 また、テストの結果が過度の競争や学校の序列化に繋がらないように、国は公表する成績は都道府県単位にとどめ、都道府県教委には個々の市町村名・学校名を公表しないよう求めている。 一方で、情報公開請求を受けた場合の対応について各教委は苦慮しているという。 しかしながら、この問題の本質は「学力低下」問題なのである。現行の学習指導要領の本質的欠点と言わざるを得ないのは、削減内容を上の学校で履修させることとしているが、高校では必ずしもその内容・科目が必修となってないことである。国民として身に付けるべき教養とは何か、この答えが出ない限り解決は難しいと考えている。 (鳥居 聖) 高校から大学への接続大阪から発覚した私立高校の大学合格者水増し問題は、私学が生き残りのために「進学校に変身する」裏技として浮かびあがってきた。その背景には、高校側は「合格実績を上げたい」、大学側は「受験生を集めたい」、保護者は「少しでもいい大学を望む」と自分勝手な理論が集積されたいびつな構造が出来上がっていたということだ。こうした空間で育ってきた生徒たちは、いつの間にか東大を頂点としたブランド大学に入学することが目的だと思い込んでしまった。これを裏付けるようなデータが日本私立大学連盟(東京)の「私立大学学生生活白書」から発表された。結果は、大学生の2人に1人は「大学に進むのは学歴のため」と答えている。 この件を俯瞰した面白い話が東大名誉教授の養老孟司氏の「旅する脳」に書かれていた。「高校で成績バツグンの生徒がいると、周りの大人たちは、これなら東大医学部に入れるから受験しろという。これが困る。大学での教育の中身と、「東大卒」のブランドを分けて考えてもらいたい。」という。まさに「教育・研究」の中身より、ブランド力を信頼するという現実の問題を指摘する話だった。 今回の一連の問題から、日頃感じていることを高校に勤務し FMICS に参加している両生類のような特殊な立場から述べさせていただく。 大学の入試選抜はそれぞれの学部によって求められる基礎学力や能力は違う、各大学の校風も求める学生像も違うはずだ。合格者水増し問題は、一方的に高校側が抱えるものではなく「いったい大学入試は何のために行われるのだろうか」という、社会から大学に投げかけられた試金石だと捉えていただきたい。大学にもっと個性を発揮し、ほしい学生を選抜できる入試を考えてもらいたいという意味である。 高校生に対して、大学に在籍している空間から「何」が得られるのか。そのために用意されている様々な仕掛けを大学がわかりやすく発信してくれると、生徒たちは明確な目標が立てられる。 一般的に「社会に通用する能力」を育成して欲しいと大学に求めているが、これをもう少しわかりやすく言うと社会に出て「タフに生きる力」を発見させることだと思う。 学生が自分の価値観を持ち、コアを創ってしっかりとコミュニケーションが取れ交渉ができるような能力を身につける。失敗を恐れ穏便に口を閉じて、問題が沈静化するのを待っているのではなく、怯まず、決していこじにならず、問題について「私の考え」を言えるようにする。専門領域でなくても、疑問を感じて調べるクセを身につけておく。そのために大学には、どこで何を調べれば判断材料が手に入るか、というインデックスを作るために様々な体感ができる仕組みを創っていただきたい。そうして、仮説を立てて未知を推測し、洞察する能力を養うことのできる人財を輩出できる大学が理想である。 (秋草 誠) FMICS 9月例会 (第547回例会)●9月例会は、読売新聞教育面「教師力・大学編」を担当されている記者の松本美奈さんをゲストにお迎えします。●その昔、1988年6月例会のゲストは朝日新聞記者(教育担当)の山岸俊介さんでした。テーマは「記者り眼から見た大学 体験的大学広報論−あなたの大学はパプリシィテイしていますか−」でした。今でも、アリアリと目に浮かぶ光景があります。もっと広報を広報らしくした方がいいと、某大手大学の名前を挙げられましたが、何とその大学の広報担当者がいらっしゃいました。その時、山岸さんは、「何かある時だけ、マスコミに来てくださいって言っても、記者は忙しいから、よっぽどのことがないと行かない。日頃からの信頼関係をつくっておくことが大切」と言われたのでした。●ほぼ、20年前と比べて、今日の大学はマスコミ対応が上手くなっているのでしょうか。パブリシィティを上手に活用するためのノウハウを蓄積しているのでしょうか。マスコミと友好・信頼関係を作るための努力を積み重ねているのでしょうか。その問題意識はほとんど変わっていないのではないでしょうか。相変わらず、マスコミ嫌いの大学は決して少なくはないはずです。●あらためて、マスコミは大学をどのように観ているのか、信頼関係を作るためにはどうしたらいいのかなどについて、忌憚のない意見交換をしていただきます。 ●参加される方は、松本美奈さんとのディスカッションをワクワクドキドキ盛り上げたく; 【日時】 2007年9月29日(土) 午後4時〜午後6時30分 【会場】 工学院大学新宿キャンパス 4階 0477教室
【テーマ】 大学競争時代を活きるための原理原則を学ぶ
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石渡さんはAERAで大学・教育・就職活動などの記事を担当されています。
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【日時】 2007年10月 20 27日(土) 午後4時〜7時
【会場】 工学院大学新宿キャンパス
【ゲスト】 AERA編集部・ライター 石渡 嶺司
平成19年秋の文化祭 第1弾
FMICS名古屋の副会長坂井田教授と事務局林の送る、柳津を核に岐阜市を巻き込み秋の生涯学習祭りを実施。安藤氏による原三渓顕彰展付茶席などなど盛りだくさんで、YFNスタッフが大活躍のエクステンションセンター生涯学習祭りに、近隣YFNスタッフも参加及び出演します。
【日時】 2007年10月13日(土) 10時〜17時
【会場】 カラフルタウン岐阜 レインボーモール館1F 太陽の広場
【共催校】 附属幼稚園・附属小学校・附属中高等学校・清翔高等学校・聖徳自動車学園