2008年8月のFMICS
見出しへ 復習の大切さ毎月通読している雑誌「BERD」No.13に、池谷裕二氏へのインタビュー記事があった。 なお、この記事で触れられている話の原典は、SCIENCE 15 FEB Vol.319 P966-968 にあるので、以下では補筆してその一部を紹介したい。 学習の方法についても、脳科学の知見からいくつかのヒントを提示することが出来ます。強調したいのは、復習の大切さです。普通のことに思えるでしょうが、やり方を誤ると効果が半減します。 そもそも、脳に情報を与えるだけで記憶が完了すると考えるのは大きな間違いです。脳にも入力と出力があって、情報を入れる過程と、その情報を使ってみる過程の両方を考慮しなければなりません。そして、知識を蓄えるのにどちらが重要かというと、実は出力なのです。学習に即して考えるなら、出力は復習に相当します。ただし、大事なのは復習とは参考書の再読ではなく、問題集を解くことです。 復習の大切さが脳科学で証明されたのは、ごく最近のことです。学生に彼らがまったく知らないヒスワリ語の単語を覚えてもらうという実験から分かりました。英単語とそれに対応するヒスワリ語が40組書かれた紙を配り、学生に丸暗記してもらいます。その後のテストで、全問正解するまで繰り返すのですが、下記のように異なる条件の四つのグループに分けて行われました。 A) 40単語を記憶する→テスト→単語リストを一通り覚え直す→40単語を再テスト B) 40単語を記憶する→テスト→間違えた単語だけを覚え直す→40単語を再テスト C) 40単語を記憶する→テスト→単語リストを一通り覚え直す→テストで間違えた単語だけを再テスト D) 40単語を記憶する→テスト→間違えた単語だけを覚え直す→テストで間違えた単語だけを再テスト どのグループの学生も、記憶とテストのサイクルを4、5回繰り返すと満点が取れたそうです。 ここで、差がつかないことも興味深いのですが、一週間後にもう一度集まってもらって同じテストをしたら、まさに劇的な結果となりました。40単語すべてを再テストしたグループ(AとB)は80点ぐらいだったのに対して、残りの二つのグループ(CとD)は30点台しかとれなかったのです。つまり、全単語の再テストやったほうが記憶の定着が高かった。特に、間違えた単語だけ覚え直してもテストを全問やれば効果が高かったのは特筆すべきです。情報を詰め込んだら試しに使ってみるのがどれほど重要かを、この実験結果はまざまざと示しています。以上。 さて、非常に単純な実験ではあるが、短期記憶においてはどの方法もほとんど差がない。短期記憶から長期記憶に移行する際には、記憶に差が出たことを意味している。つまり、覚えたものを引き出すという作業の中味の差(間違えた単語だけではなくすべての単語を引き出す)が長期記憶の差となっている。反復学習を繰り返して行うことは、短期記憶の欠落を防ぐという観点から大変重要な意味を持ち合わせている。 (鳥居 聖) 見出しへ 先達から学ぶ「え〜それなんだっけ」と茶の間で家族が答えられるクイズ番組の人気が高いという。その中の一つのネプリーグは、フジテレビで放送しているクイズ番組的要素を加えたバラエティ番組で、ネプチューンの冠番組です。先日、この番組に出演したことのある「お笑い芸人」(以下、芸人)の一人が面白い話をしていました。最近のクイズ番組では、芸人の十八番を奪うボケぶりを披露する「オバカタレント」の台頭が著しく、その存在に危機感を感じた芸人たちは真剣に勉強し始めているといいます。芸人は一所懸命に勉強しなければ存在価値がなくなってしまう、という危機感を持っているといっていました。 この話を聞いたとき、芸人の中には瞬時に場を読み「オバカタレント」から笑いを引き出し、番組をマネジメントする能力がある人がいます。その上に自らの存在価値を高める努力を払う、芸人の向上心にプロ意識を感じました。 現状の多くの大学は、少子化問題の上に個性化を求められる、という危機感に悪戦苦闘して大局観が失われているように感じます。この混沌とした状況下、最近、職員に期待するメディア等の数々のコメントや、IDEの論文のなかにある職員に期待を寄せる論文を読むたびに感じることがあります。それは今まで長い間、様々な場所で大学改革を叫び続けてきたが、いまだ出口を見いだせない状況に危機感を感じ、苦肉の策で登場させたのが職員のマネジメント力を期待した「大学職員論」なのではないかということです。 大学のマネジメントを職員が担うというのは、今では当らずとも遠からず理解できますが、やはり大学は学生と教員の存在を無視してはうまく回りません。 しかし、実際の「大学職員論」は高所大所の視点から論じられることが多く、学生の存在を無視した理想と机上の空論が膨らんだ状態で、学生の存在を重視した理論はいまだ五里霧中の中だといえます。 今こそ職員には、芸人のように場を読み学生の能力を引き出しマネジメント力を発揮して、学生と教員の間に入り込んで新しい個性を引き出せる「大学職員論」が必要だということです。 しかし、机上の空論をいくら論じても意味がありません。結局、職員は「やってなんぼ」動いて初めて理論がついてくる。改めてもう一度「FMICS100人BOOK」を読み返すと、なんと18年前にFMICS流の「学生を活かす」しっかりとした職員論が眠っていました。編集後記に鈴木匠さんの気づきの言葉がありました。「この1冊に、あったかさに裏付けられた数多くの発見が詰まっています。感謝。(匠)」そのとおりでした。 この本から“まずは、はじめよう”という気概が見えない現状に、憂いの叫びが聞こえる気がしました。 (秋草 誠) 見出しへ 第22回 YFN シンポジウム (第565回例会)やっとかめやなも FMICS 名古屋(YFN)の《学びのカタチ》を束ねる恒例の第22回YFNシンポジウムをご案内します シンポジウムの会場は、聖徳学園岐阜教育大学羽島キャンパスです。懇親会は長良川での鵜飼い観賞とともに乾杯。そして、岐阜の名刹浄土院の本堂での特別プログラムは、岐阜市再生の仕掛け人にお話しいただきます。夜プロは、勿論朝まで続きます。翌日の岐阜観光は朝のお茶からはじまり、歴史にふれて、温泉ありのナマズと鯉の川魚料理に舌鼓を打つというワクワクハッピーツアーとなります。 皆さまにはお誘い合わせの上ご参加ください。 【日時】 2008年8月30日(土)13:00 〜 31日(日)16:00
【テーマ】 今再び、高大連携・一貫連携教育を考える【プログラム】 ●第1部(昼の部) 13:30〜16:30 講演 「今再び、高大連携・一貫連携教育を考える: 早稲田大学の場合」 「立命館学園における一貫連携教育について」 「日本福祉大学における高大連携について」 司会進行 時事通信 岐阜支局長 升谷 昇 ●第2部(夕方の部) 17:30〜20:00 懇親会 鵜飼1304年記念 長良川鵜飼鑑賞 ●第3部(夜の部) 21:00〜22:30 「岐阜市再生の仕掛け人 夜に生き、夜に吼える」 「県庁の星 実は 霞ヶ関の星 世界に生き、世界に吼える」 ●第4部(夜の部2) 22:30〜23:00 「岐阜の誇るクリエーター集団 デザイン・まちおこし・踊り・炭焼き…」 ●第5部(オールナイトの部) 24:00〜朝まで オールナイトFMICS 参加者全員発表 ●第6部(リラックス&リゾートの部) 朝の茶 浄土院 井中庵にて 亭主 安藤昌空上人 観光 美濃和紙の家、リチャード染色工房、 昼食 鮎料理やな (温泉あり) ●解散 JR岐阜駅 16:00 【参加費】 昼の部のみ千円 夜の部まで1万円 両日1万5千円 【申込&問い合わせ先】 高等教育問題研究会名古屋支部事務局 見出しへ FMICS Staff Development 203■FMICS Staff Development 略して 「SD」は、月例会とは別に、平日の夜に開催されているゼミナール型の勉強会です。■あなたのアンテナが何かを感じた新聞・雑誌等の教育&経済トピックスを、切り抜いて持ちよりディスカッションします。トピックスは厳選して1件、A4縦判にコピー(10枚程度)して、氏名と簡単なMEMOを付してご持参ください。各自5分間程度のコメントをしていただきます。■なお初めての方は、自己紹介のみで構いません。■今月は木曜日の開催なります。お間違えないようお願いいたします。 【日時】 2008年8月28日(木) 午後6時30分〜8時30分 【会場】 工学院大学新宿キャンパス 高層棟27階 2710ゼミ室 【参加費】 会員500円 非会員1000円 学生(会員・非会員問わず)300円 【申込先】 米田 敬子(桜美林大学) mail2008(アットマーク)fmics.org 見出しへ 会報 『BIG EGG』 9月号 発送作業●FMICSの運営は、会員のボランティア作業によって支えられています。毎月の会報の発送作業も、その大切な活動の1つです。早い人はお昼過ぎから作業を開始し、夕方になると職場から一人また一人とメンバーが駆けつけます。 ●ワイワイガヤガヤと近況報告を兼ねての楽しい時間は、美味しい中華料理屋での食事会へと引きつがれ、例会などのアイデアの多くが、この瞬間に生まれます。例会とは一味違ったFMICSの活動に、皆さまのご参加をお待ちしております。 【日時】 2008年9月10日(水) 午後6時〜9時+食事会 【会場】 日能研 恵比寿ビル 初めて参加される方は、 mail2008(アットマーク)fmics.org (高橋真義)までご一報ください。当日の連絡先等詳細をお知らせいたします。 見出しへ 速報 9月のFMICS■9月の月例会のゲストは、「留学生30万人計画」の総理の施政方針演説から計画策定までを担当してこられた文部科学省留学生交流室の織田雄一さんです。また、中教審の留学生特別委員会のロジ(会議のセッティングなどの裏方のお仕事)を一貫してやってこられた菊地勇次さんもご参加いただきます。ワイワイガヤガヤ意見交換をして「留学生30万人計画」を皆さまと考えます。 ■織田さんからメモをいただきました。 本年1月の施政方針演説で福田総理は「留学生30万人計画」を提唱しました。これまでの留学生交流といえば、主に「途上国の学生を日本の大学に受け入れてお世話をして本国に返す」というものでしたが、この30万人計画が目指すものは、日本を世界に開かれた国とし、アジア、世界との間のヒト、モノ、カネ、情報の流れを拡大する我が国の「グローバル戦略」の展開にあります。そういった意味でこの30万人計画は日本の大学のために行われるとも言えるでしょう。 【日時】 2008年9月27日(土) 午後4時〜6時30分 【会場】 工学院大学新宿キャンパス 【テーマ】 我が国の大学のグローバル化のカタチ
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