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2010年12月のFMICS



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同じ看護師なのに…<後編>

 同じように看護師養成教育を受けながら、大学への編入学が認められないルートには、高等学校の専攻科もあります。

 高校における看護師養成は、(1)従前からの:中学卒業→看護科3年(高卒と准看護師資格取得)→専攻科2年(看護師資格取得)、および(2)2002年から始まった:中学卒業→看護科+専攻科の5年一貫課程(高卒と看護師資格のみ取得)があり、これらのルートは、最も早く20歳で看護師資格が取得出来ます。2009年度の入学定員は、(1)の専攻科と(2)をあわせて4,170人。全学校種の総入学定員約5万9千人に比べれば少数であるものの、短期大学の2,670人に比べれば多く、地方を中心に看護師養成の一翼を担っているルートです。

 しかしこれらのルートで看護師資格を得た者も、各種学校等の看護学校出身者と同様に、大学に編入学することは法的に認められません。

 なお、より上の段階である大学院への入学資格に関しては、個別の資格審査により大学の判断で認めることが出来るため、4年制大学出身でない看護師の場合は学校種の区別なく、看護師としての実務経験等をプラスして大学院へ入学することは可能です。一部の大学院での助産師の養成は2004年から始まっており、保健師の養成も2011年から始まります。この点を見れば、ステップアップのための学びの道がまったく閉ざされている訳ではありませんが、大学への編入学と比べると、大学院への入学準備や修学に関わる経済的負担などのハードルは、かなり高いものです。

 もちろん、大学の1年次に入学する事は可能ではありますが、当然に4年間の修学が必要になり、また既修得単位の認定も認められません。保健師の資格取得を目的として看護学科に入学しても、4年間の学習の半分以上は既に修めた看護師養成に関わる内容を再度履修するという無駄な負担を強いられる訳で、大学編入学資格の無い養成課程出身の看護師にとっては、学びの機会が著しく制限された状況になっています。

 2009年5月、文部科学省が高校専攻科からの大学編入学について認める方針を固めた旨の報道がありました。しかし、既に廃校になった学校も多い各種学校等の看護学校卒業者については、松本肇『短大・専門学校卒ナースが簡単に看護大学卒になれる本』エール出版社(改訂新版2009年)以外には目立った議論は見あたらず、ほとんど無視されている感があります。

 大学院(修士・博士前期課程)への入学資格が、大学の個別審査により柔軟に認めることが出来るように、大学(学士課程)への編入学に関しても、少なくとも国家資格に関わり法令に定めのある養成課程を経た者に関しては、大学の判断により学校種の区別無く受け入れられるよう、行政・立法による速やかな対応を望みます。

(出光 直樹)



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創造を可能にする人間力

 先日、来年度の入学案内用パンフレット作成のために卒業生のいる幼稚園や保育園に取材に行ってきました。ある保育園の園長先生から面白い話を聞くことができました。

 その園では「遊具を子どもの人数の6割しか用意しない」人数分を用意すると必ず独り占めしてしまう子どもが現れるのだそうです。遊具の数が足りなければ、自然と貸し借りを覚えます。「喧嘩をしても止めに入らない」途中で止めると必ずストレスが溜まり、ほかの子どもたちに影響するためです。極めつけは「ひっかき傷、噛み傷、すり傷では保護者に謝らない」入園当初からこのことは徹底するそうです。園長先生曰く、この保育園の子どもたちは、「遊びは自分たちで創造することができる」と豪語していました。いまだに缶蹴り遊びをするともいっていました。あとから本学のキャリアセンターにこの保育園の話をすると、とにかく人気の保育園だということでした。私も、子供がまだ幼児ならこういう方針の保育園に入れたいと強く感じ、人の原理原則をこの保育園から学ばせていただきました。

 最近の中等教育の現場では、大学進学実績作りのために私学のみならず公立の高校までが躍起になり、子ども達の自立する心や集団の中で暮らすことなど二の次になってしまっていたのではないかと思うほどです。

 私たちが作ってきた社会は人の原理原則を忘れ、足りていても足りない足りないと嘆き、他者のことには思いいたらず自己の得ることにのみ専心し、個人のみの消費に現(うつつ)を抜かしていたのではないでしょうか。そうして、そこに育つ子どもたちもこうしたイマドキの社会性を身につけて成長してしまった感が強い。

 結局はそのツケが回りまわって、大学に入っても「自分の居場所が見つけられない」「友達の作り方がわからない」挙句の果てに「社会に出るのが怖い」という人を創りだしてしまったと思う。

 さらにリーマンショック以来、日本の社会はいっそうギスギスしています。11月17日の日経新聞では「就職内定率の過去最低」の記事の中で、企業側から学生に対して「意欲が感じられない」、「個性がない」と言いたい放題のコメントがある一方「80社回ってようやく内定を得た友人もいる。努力が足りなかったのかな・・・」というコメントをする早稲田の文系の女子学生が登場していました。就職できなくても大変ですが、難関を乗り越え就職できても、企業の生き残りをかけたエゴイスティックな論理を押しつけられ、大変そうです。こんな時代でも楽しんで生きていくために必要なのは、保育園でのように遊びを創造する力であり、他者と貸し借りをできるようなコミュニケーションを築く力によって培われる人間力ではないでしょうか。

 まさにこれからは足るを知り、礼節を重んじる教育が重要な課題になります。

(秋草 誠)



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FMICS 12月例会
(第602回例会)

■12月例会は、産経新聞論説委員の河合雅司さんをスピーカーにお迎えします。河合さんは、少子高齢化が進んでいき、社会構造は大きく変わる日本はどうなるのか、「日本が沈みつつあることに何の危機感を覚えないのか」と警鐘を鳴らされています。豊富な識見とデータを駆使され、近未来の我が国の大学は厳しい事実を突きつけられると断言されます。その一方、今からが本当のチャンスであるとも強い口調でお話になられます。

 ディスカッションをより深化するために、今回は新しい試みとして、河合さんから課題を出して頂きますのでご参加の皆さまにはご協力ください。

■河合さんからのメッセージです。

 「15年後、あなたの大学はありますか?」という問いかけをしたいと思います。

 というのも、15年後の2025年というのは、団塊世代が75歳以上になり、高齢者の人口がピークを迎えるからです。

 いまのままなら、国や自治体は高齢化社会に対応するために予算の大半を使うことになり、他分野に回すお金がほとんどなくなると予想されます。もちろん教育予算も例外ではないでしょう。大学への交付金や補助金も規模の縮小をはじめ、配分方法も見直さざるを得なくなると思います。

 一方で、若者世代は減り続け、よほど劇的な変化でもないかぎり内需は冷え込み、国民の所得も減っていくでしょう。人々の働き方も変化を余儀なくされ、子供を大学などに行かせる余裕のない家庭が増えることも予想されます。

 いずれにしても、いままでのような護送船団ですべての大学が生き残ることは難しいでしょう。

 逆に言えば、特色のある大学、社会から必要とされる大学だけが生き残りの切符を手にすることができるということです。生き残りのために何をすべきか。他人から教えてもらったり、成功例をまねるようなものではありません。

 各大学とも置かれた状況は違うので、それぞれに具体的な知恵を絞り出すしかないのです。

 そのためには、まず現状認識が必要です。そこで当日は、以上のような日本の近未来社会図を私から簡単に説明いたします。その上で、残る時間は、参加者自身に自分の頭でこれから何をすべきか考えてもらおうと思います。

 そこで、参加者には次の質問に対する答えを準備事前していただきたいと思います。

  1. あなたの大学は15年後にどうなっていると思いますか?
  2. あなたの大学は、少子高齢化時代を生き残るために、どんな取り組みをしていますか?
  3. あなた自身は、どんなアクションを起こしていますか?

 以上の3点です。具体的にまとめておいていただくほど、濃密なディスカッションができると思います。

 なお、この質問は大学に勤めている方々を想定したものです。その他の業種の方や、学生諸氏は@からBの質問を自分の立場に置き換えて、答えられる形で準備していただければ結構です。

 勉強会というのは参加していれば安心してしまうものでもあります。ただ講師の有り難い話を聞いて、わかった気になり、会を後にすると途端に忘れてしまう。全くの時間の無駄です。そうした悪習を断ち切るためにも、是非、ご協力をお願いいたします。

 私としては「本物の参加者」は、むしろ少ないほうがよいと思います。そのほうが中身の濃い議論ができますし、私自身も勉強させていただくことができます。もちろん、「傍聴人」のほうは、たくさん来ていただいたほうが話し甲斐はありますが。

■課題の提出について

 課題は、A4用紙1枚程度にまとめていただき、12月10日(金)までに(必着)お送りください。 mail2010(アットマーク)fmics.org

 月例会は毎回土曜日としていましたが、11月例会に次いで今月も、平日月曜日の午後7時から9時30分までの開催となります。お間違えのないようにご注意ください。

【日時】 2010年12月13日(月)

月例会 午後7時〜9時30分
懇親会 午後9時30分〜11時

【会場】 桜美林大学 四ツ谷キャンパス 3階 308教室 (JR・東京メトロ 四ツ谷駅 徒歩3分)
【テーマ】 いかにして ピンチをチャンスに変えるか
15年後 あなたの大学はありますか
【問題提起】 河合 雅司 (産経新聞社 論説委員)

司会 高橋 真義 (桜美林大学 教授)

【参加費】 会員1,000円  非会員1,500円  学生(会員・非会員問わず)500円
【申込先】 米田 敬子 mail2010(アットマーク)fmics.org
*お名前、ご所属等をお知らせ下さい。参加費は当日会場でお支払い下さい。
*当日の飛び入りも歓迎ですが、なるべく事前の連絡と課題の提出をお願いします。


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FMICS Staff Development 230

■FMICS Staff Development 略して 「SD」は、月例会とは別に、平日の夜に開催されているゼミナール型の勉強会です。■あなたのアンテナが何かを感じた新聞・雑誌等の教育&経済トピックスを、切り抜いて持ちよりディスカッションします。トピックスは厳選して1件、A4縦判にコピー(10枚程度)して、氏名と簡単なメモを付記してご持参ください。各自5分間程度のコメントをしていただきます。■第二部として高等教育問題研究会・FMICSの30周年に向けて、FMICS人の中のFMICS人には「FMICS温故創新」の「温故」を、若きFMICS人には「創新」を30分間程度で語って頂きます。

【日時】 2010年12月15日(水) 午後6時30分〜8時30分 + 懇親会
【会場】 桜美林大学 四ツ谷キャンパス 3階 301教室
(JR・東京メトロ 四ツ谷駅 徒歩3分)
【参加費】 会員500円  非会員1000円  学生(会員・非会員問わず)300円
【申込先】 米田 敬子 yoneda(アットマーク)fmics.org
*お名前、ご所属等をお知らせ下さい。参加費は当日会場でお支払い下さい。
*当日の飛び入りも歓迎ですが、なるべく事前の連絡をお願いします。


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FMICS あざみ野 SD 20

●ゼミナール型勉強会「SD」の首都圏西部地域での集いです。●前回11月2日(火)の参加者数は懇親会からの方も含めて12名。浪人生の大学受験指導に特化した鳥取県立高校“専攻科”の廃止問題、長時間労働や不安定な働き方を強いられる専門職の雇用問題、大手商社による採用活動見直しの動きと内向き志向の若者への危機感、「社会人教授」の適格性要件、大学の授業での携帯電話の活用、英国の高等教育ファンディング、アメリカの高等教育分野の専門職団体や資格、『大学マネジメント』誌の「事務系職員の人材育成・人事制度に関する調査」、産能大学で開催されたビーチバレーコンテスト、大学生がキャリアセンターを利用しない要因に関する研究計画書、大学職員中途採用試験への志望理由書、といったトピックスが寄せられました。●この勉強会の原理は極めてシンプルです。参加者が何か1品、ネタを持ち寄り、みんなで議論します。●ネタは、気になった新聞・雑誌記事、業務関連の資料、進めている仕事のアイデア、就活エントリーシートの原稿などなど、何でも構いません。ちょっとした事でも、他人の目に触れることにより思いがけない発見があるものです。初めて参加される方は、単に自己紹介だけでもOKです。●資料(コピー)は12部程度お持ちください。

★今月は国連大学本部が会場となりますので、ご注意ください。

【日時】 2010年12月10日(金) 午後7時〜9時+懇親会
【会場】 国連大学本部
(表参道駅徒歩5分・渋谷駅徒歩8分)
*自由に出入り出来ませんので、7時に1階正面入口前に集合してください。
*以降、8時に途中入場の機会を設け、その後は懇親会からの合流になります。
【参加費】 100円(会員・非会員問わず)+懇親会実費(3000円くらい)
【申込先】 出光 直樹 (横浜市立大学) naoki(アットマーク)idemitsu.info
http://n-idemitsu.269g.net/category/212623.html
*お名前、ご所属、懇親会への参加の有無をお知らせ下さい。参加費は当日会場でお支払い下さい。
*当日の飛び入りも歓迎ですが、なるべく事前の連絡をお願いします。


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会報 『BIG EGG』 新年1月号 発送作業

●FMICSの運営は、会員のボランティア作業によって支えられています。毎月の会報の発送作業も、その大切な活動の1つです。早い人はお昼過ぎから作業を開始し、夕方になると職場から一人また一人とメンバーが駆けつけます。

●ワイワイガヤガヤと近況報告を兼ねての楽しい時間は、美味しい中華料理屋での食事会へと引きつがれ、例会などのアイデアの多くが、この瞬間に生まれます。例会とは一味違ったFMICSの活動に、皆さまのご参加をお待ちしております。

【日時】 2010年12月28日(火) 午後6時〜9時+食事会
【会場】 日能研 恵比寿ビル

●初めて参加される方は、 mail2010(アットマーク)fmics.org (高橋真義)までご一報ください。当日の連絡先等詳細をお知らせいたします。



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速報 1月の FMICS

●FMICSの新年1月は恒例の合宿例会です。桜美林大学四谷キャンパスでのオリエンテーションは、「職員道」を語る高等教育界は天下のご意見番石川洋美先生に、時代を創る大学人にエールを贈って頂きます。葉山では、参加者全員で高等教育問題研究会FMICS30周年、2011年のアクションプランを時間をかけて考えます。
★合宿申込はお急ぎください。
 申込先:坂田範夫 kintoki(アット)tamajs.chuo-u.ac.jp

【日時】 2011年1月8日(土)〜9日(日)

<昼の部>オリエンテーション 午後1時〜3時

<夜の部>合宿 FMICS  午後6時〜翌午前10時

【会場】 <昼の部> 桜美林大学 四ツ谷キャンパス (四ツ谷駅から徒歩3分)

<夜の部> 中央大学葉山寮  神奈川県三浦郡葉山町堀内86

【テーマ】 元気元気元気な私の2011年アクションプラン
私たちは学生さんを元気元気元気にします
【問題提起】 石川 洋美 (芝浦工業大学 名誉理事長)

司会 高橋 真義 (桜美林大学 教授)