2011年1月のFMICS |
2006年から導入された大学入試センター試験の英語リスニングテスト。経験された方はお分かりの事と思いますが、これの実施負担は非常に重いものがあります。
一般に関心を集めるのは、受験者が使用するICプレーヤー。世界に類を見ない個別音源方式の専用機器は、1回当たり60万台もの大量生産とはいえ1台当たり3000円くらいの単価になり、十数億円もの費用になります。2006年〜2009年までの機器は使い捨てでしたが、環境面への配慮から2010年より全て回収して再利用することになり、今回がその再利用機器使用の最初のケースとなります。もっとも、分解や洗浄、調整、再組み立ての人件費がかかるため、1台当たりの単価は100円ほどしか下がらず、機器のコスト面での節約にはあまりならなかったとの事です。
しかしそれ以上に、実施すること自体の負担(コスト)が、主役の受験生、実施を統括する大学入試センター、そして各実施大学の教職員に至るまで、全ての関係者にとって相当なものです。
例えば監督者に焦点を当てて見てみましょう。監督者(各実施大学の教職員等)は、大学入試センターが作成した『監督要領』、問題冊子、解答用紙、受験状況調査等の所定の様式、そして各会場大学が作成した補足書類等を携えて、試験室での監督業務にあたります。
A4判で169頁(目次等除く)と、それなりのボリュームのある『監督要領』の中で、リスニングに関する記載は、概要部分が7頁、実施時(当初テスト)の指示内容を記したシナリオが17頁、そして事故対応マニュアル・再開テストの指示内容・様式の記入例などが40頁と、合わせて64頁分がリスニングに関わるものであり、『監督要領』の約38%もの割合を占めています。
それに対して試験時間の割合を見ると、リスニングについては機器操作準備の為の30分と解答時間の30分の計60分が試験時間とされており、その他の筆記科目は純粋な解答時間で合計すると、2日間全体の総試験時間は640分であり。リスニングの60分は約9%に過ぎません。なお、不幸にも再開テストを実施した場合は、その分の試験時間が40分程(機器操作準備の時間は10分程度と見込んで)上乗せされ、リスニングに費やした試験時間の割合は約15%程になります。
やはり他の筆記科目と比較して、ICプレーヤーという特殊な機器を使用することもあり、その配布・操作方法の対応に労力が上乗せされることはもちろん、解答開始後の受験者と監督者との対応は口頭で行うのではなく、その為の特別な書類を数種類駆使して筆談で対応するなど、他の筆記科目の監督業務とはかなり異質な対応をしなければならないため、当然に『監督要領』のかなりの頁をリスニング関係の内容が占める事になります。同様に、監督者が必ず参加しなければならない事前の説明会(演習)においても、非常に多くの時間(50分の演習用ビデオの視聴を含む)が、リスニングテストの内容に充てられるのです。
(出光 直樹)
養老孟司さんは、最近の子供たちの成長をわかりやすく次の言葉で表してくれています。「最近は虫取りに子供を連れて行ってもまったく道を外れないんですよ。淡々と道を後ろからついてくる。既製のルートを外れない。教育のせいもあるのでしょう。若い人に限らず全国的に、わかっている道ばかり進んでいく傾向が強くなっています。子供を小学校から大学まである学校に通わせたがる。とかこういう条件だから結婚する、とかいうのも同じことでしょう。世間の縛りに敏感になるばかりで、ぶつかっていかないひとが増えている。日本に限った事ではないが、日本はその傾向が強くなっているのではないか」といいます。
既製の道を寄り道もせずに歩き、行き着いた結果が、このところ顕在化してきたように感じています。
今年度の大学生の就職難について、テレビや新聞では「大変だ、大変だ」と騒いでいます。
この「大変」に脅かされ、家庭の中で何が起きているか昨年12月20日の朝日新聞に取り上げられていました。
題名は「『おや?』娘に代わりセミナーへ、提出書類も書きました。」と書かれていました。記事を読むと「うちの息子や娘は、内定を取れるのだろうか。厳しい就職状況が心配で、じっとしていられなくなった親が、大学へ相談に行ったり、セミナーに参加したりするなど“就活”している。都内の大学が開いた就職セミナー。学生に交じり、保護者が座っていたため職員は驚いたという。事情を聴くと、アルバイトでこられなかった娘に代わって出席したという。手にはICレコーダー。『帰って聞かせます』」という過保護もいいところの親の存在が載っていました。どうやらこのような行動を子どもの頭の上を旋回し、必要とあらば急降下してくる“ヘリコプターペアレンツ”と呼び、教育現場は悩まされているというものでした。
先日、ある高校の保護者の方が11名学校見学に来てくれました。最後に保護者の方にお願いしたのは、「そろそろ自立させるために、お子さんに手をかけるのをやめていただきたい。自分たちで「何か」を考えて行動できるような指導をしてください」と伝えました。
説明終了後、一人の保護者の方が私のところに来て、先ほどの言葉は胸に響きました。子供たちのためを思って、ご飯もついであげて、後片付けもしてなんでもしてあげるクセがついていました。子供の自立を考えるといけないとはわかりつつ、やっていた自分に気づきましたという報告でした。まさに既製の道を舗装して、親が前を歩いているという姿だと思いました。
他人事ではないので、戒めながら年末を迎えます。来年は今まで以上に考えて行動することにします。
(秋草 誠)
●FMICSの新年1月は恒例の合宿例会です。今年、平成23年4月から、「学校教育法施行規則等の一部を改正する省令」により、大学が持つ教育・研究力が「見える化」されます。更には、国の大学経営支援の制度設計が大幅に見直されます。いよいよ、大学の生き残り競争は、限られた局地戦から、規模、地域に関わることなく、学生教職員を束ねた全面的総力戦勝負となります。大学の主役で資産である学生さんを元気元気元気にするためにも、これまで職員に求められてきた「教育支援力」を質量ともにパワーアップしなければなりません。
●桜美林大学四谷キャンパスでのオリエンテーションでは、「職員道」を語る高等教育界は天下のご意見番・石川洋美先生に、新しい時代を翔る大学人にエールを贈って頂きます。
●葉山では参加者全員に「私の2011アクションプラン」を発表していただきます。いよいよ創会30年目をこの3月14日に迎える高等教育問題研究会FMICSのミッション・パッション・アクションを束ねる「新100BOOK」の発刊のタイムスケジュールの確認をいたします。
●恒例の打ち上げ&反省会は、海辺の素敵な喫茶店の美味しいコーヒーとケーキを頂きながら行います。
●FMICSのFMICSらしさを十二分に体感できる新春合宿例会は、通称「こたつ合宿例会」とも言われています。お仲間をお誘いの上ご参加下さい。昼夜の部分参加も大歓迎いたします
【日時】 | 2011年1月8日(土)〜9日(日)
<昼の部>オリエンテーション 午後1時〜3時 <夜の部>合宿FMICS 午後6時〜翌午前9時 |
【会場】 | <昼の部>
桜美林大学 四ツ谷キャンパス 301教室 (四ツ谷駅から徒歩3分)
<夜の部> 中央大学葉山寮 神奈川県三浦郡葉山町堀内86 《交通》
JR・逗子駅 → 京急・新逗子駅 → [逗12]海岸回り葉山行バス(約12分) → |
【テーマ】 | 元気元気元気な私の2011年アクションプラン
私たちは学生さんを元気元気元気にします |
【プログラム】 | 1月8日(土)
15:00 合宿FMICS葉山会場へ移動 18:00 夕食&懇親会 21:00 点検 FMICS 2011 アクションプラン 22:00 全員参加で「学生さんを元気元気元気にするためのアクションプラン」を考えます 1月9日(日)
8:00 朝食 9:00 総括 10:00 打ち上げ&反省会 パティスリー ラ・マーレ・ド・チャヤ 葉山本店 |
【参加費】 | オリエンテーション: 会員1,000円 / 学生(会員・非会員問わず)500円 / 非会員1,500円
懇親会&宿泊: 12,000円 / 懇親会のみ日帰り6,000円 |
【申込先】 | フルタイムの合宿FMICS参加者には、@大学を元気元気元気にするためのアクションプランをA4版一枚程度にまとめて、15部ご持参ください。A自己申告時間10分間以内でアッピールしていただきますので用意をしておいて下さい。B800字程度で「MY FMICS」(会報2月号に掲載する感想文)を書いて頂きます。C点検「FMICS 2011 アクションプラン」では、今年一年間の活動企画・ワクワクドキドキプログラムを考えてください。 |
【申込先】 | 坂田 範夫(中央大学) kintoki〔アットマーク〕tamajs.chuo-u.ac.jp
※お願い:合宿参加希望者は申込をお急ぎ下さい。 |
■FMICS Staff Development 略して 「SD」は、月例会とは別に、平日の夜に開催されているゼミナール型の勉強会です。
■あなたのアンテナが何かを感じた新聞・雑誌等の教育&経済トピックスを、切り抜いて持ちよりディスカッションします。トピックスは厳選して1件、A4縦判にコピー(10枚程度)して、氏名と簡単なメモを付記してご持参ください。各自5分間程度のコメントをしていただきます。
■第二部として高等教育問題研究会・FMICSの30周年に向けて、FMICS人の中のFMICS人には「FMICS温故創新」の「温故」を、若きFMICS人には「創新」を30分間程度で語って頂きます。
【日時】 | 2011年1月19日(水) 午後6時30分〜8時30分 + 懇親会 |
【会場】 |
桜美林大学 四ツ谷キャンパス 3階 301教室 (JR・東京メトロ 四ツ谷駅 徒歩3分) |
【参加費】 | 会員500円 非会員1000円 学生(会員・非会員問わず)300円 |
【申込先】 | 米田 敬子 yoneda(アットマーク)fmics.org *お名前、ご所属等をお知らせ下さい。参加費は当日会場でお支払い下さい。 *当日の飛び入りも歓迎ですが、なるべく事前の連絡をお願いします。 |
●ゼミナール型勉強会「SD」の首都圏西部地域での集いです。
●国連大学で開催された前回12月10日(金)の参加者数は、懇親会からの方も含めて19名。日本学生支援機構奨学金の返還期限猶予と放送大学、○○女・○○ガールの造語法の分析、国公私立の設置形態を超えた大学職員の勉強・交流会「WILL」の活動、日本で就活をする留学生の増加、経済産業省の「社会人基礎力育成グランプリ」、大学の就職内定率と“ステルス就職難民”、2001年に出版された『大予測 10年後の大学 − 日本の大学はここまで変わる』の予測と現実、世界の名門大学の Open Course Ware の衝撃と可能性、中国人留学生が横浜を紹介するネット番組「横浜夢回廊」、キャリアコンサルティング技能検定の実技(面接)試験、新卒一括採用・新卒至上主義の是非、学生の自己理解を深める為のインタビュー&文章化の企画、NECの「i-Collabo.LMS ASPサービス」、国際基督教大学(ICU)が1984年に改訂した履修規則の説明文が持つ不思議なICUらしさ、といったトピックスが寄せられました。
●この勉強会の原理は極めてシンプルです。参加者が何か1品、ネタを持ち寄り、みんなで議論します。
●ネタは、気になった新聞・雑誌記事、業務関連の資料、進めている仕事のアイデア、就活エントリーシートの原稿などなど、何でも構いません。ちょっとした事でも、他人の目に触れることにより思いがけない発見があるものです。初めて参加される方は、単に自己紹介だけでもOKです。
●資料(コピー)は12部程度お持ちください。
【日時】 | 2011年1月21日(金) 午後7時〜8時50分+懇親会 |
【会場】 |
横浜市山内地区センター 1階 会議室1 (東急田園都市線・横浜市営地下鉄 あざみ野駅 徒歩3分) |
【参加費】 | 100円(会員・非会員問わず)+懇親会実費(3000円くらい) |
【申込先】 | 出光 直樹 (横浜市立大学) naoki(アットマーク)idemitsu.info http://n-idemitsu.269g.net/category/212623-1.html *お名前、ご所属、懇親会への参加の有無をお知らせ下さい。参加費は当日会場でお支払い下さい。 *当日の飛び入りも歓迎ですが、なるべく事前の連絡をお願いします。 |
●FMICSの運営は、会員のボランティア作業によって支えられています。毎月の会報の発送作業も、その大切な活動の1つです。早い人はお昼過ぎから作業を開始し、夕方になると職場から一人また一人とメンバーが駆けつけます。
●ワイワイガヤガヤと近況報告を兼ねての楽しい時間は、美味しい中華料理屋での食事会へと引きつがれ、例会などのアイデアの多くが、この瞬間に生まれます。例会とは一味違ったFMICSの活動に、皆さまのご参加をお待ちしております。
【日時】 | 2011年2月2日(水) 午後6時〜9時+食事会 |
【会場】 | 日能研 恵比寿ビル |
●初めて参加される方は、 mail2011(アットマーク)fmics.org (高橋真義)までご一報ください。当日の連絡先等詳細をお知らせいたします。
●超就職氷河期。異常とも思えるほどに大学職員の人気が高騰しています。巷間では、安定していて、休みが多く、高給で、やり甲斐もほどほどにあるとも言われています。果たして、大学職員は楽園の住人なのでしょうか。新人職員の意識調査から、生き残り競争に勝ったための新しい職員とは、教育支援力とは何かを皆さまと考えます。
【日時】 | 2011年2月19日(土) 午後4時〜7時 |
【会場】 | 桜美林大学 四ツ谷キャンパス (四ツ谷駅から徒歩3分) |
【調査報告 ・問題提起】 | 米田 敬子 (日本私学活性化協会 研究員)
司会 高橋 真義 (桜美林大学 教授) |